第8話 侵略する大魔王
4月も後半戦に入りましたね。そろそろGWの準備をしていかないと…
―某所・勇者アレクの潜伏地―
「……税まで成功させた、だと……?」
勇者アレクは、顔を青ざめさせていた。
精霊越しに見た光景。 それは“搾取”ではなかった。
「民が……笑っていた……」
信じられない。
「魔王に……感謝していた……」
拳が震える。
「だが……それもここまでだ」
ゆっくりと立ち上がる。
「次に来るのは――」
確信を込めて、言い放つ。
「侵略だ」
その瞬間。
精霊が映し出した。
魔王城のバルコニーに立つ、小さな影を。
「……来たか」
―魔王城 バルコニー
「くくく……」
ターニャんは腕を組み、眼下を見下ろす。
整備された街。 活気ある人々。
「ゾフィーよ」
「はい」
「我の領地、だいぶ仕上がってきたのではないか?」
「はい。かなり豊かになっております」
「そうじゃろうそうじゃろう!」
胸を張る。
「つまり――」
ニヤリと笑う。
「外に出る時が来たのじゃ」
「来ましたね」
「侵略じゃ!!」
「はいはい」
(外交ですね)
―隣接する小村・ベルナス村―
「もうだめだ……」
痩せた男が呟く。
「作物は育たない……行商人も来ない……」
「冬を越せない……」
沈んだ空気。
その時だった。
影が差した。
「愚かな人間どもよ!」
空に立つ、小さな影。
「この魔王ターニャんが――」
ビシィ!!
「侵略しに来たのじゃ!!」
「「「え?」」」
村人、フリーズ。
―上空―
「ゾフィーよ!」
「はい」
「侵略とはなんじゃ!」
「えっ」
「よくわからん!」
「そこからですか」
「とりあえず奪えばよいのじゃな!」
「まあ一般的にはそうですね」
「よし!」
ターニャんは両手を掲げる。
「ではまず――」
ドン!!
巨大な倉庫が出現した。
「物資を置くのじゃ!!」
「奪うんじゃないんですか」
「運ぶのじゃ!」
「なぜ」
―ベルナス村―
「な、なんだこれ……」
「食料……?」
「道具もあるぞ……?」
目の前には山積みの物資。
「くくく……」
空から声が降る。
「我の支配下に入るがよい!!」
「支配……?」
「その代わり――」
ビシィ!!
「これらを使って働くのじゃ!!」
「「「……え?」」」
―数日後―
「すごい……畑が蘇ってる……」
「この農具、めちゃくちゃ使いやすい……!」
「作物が育つ……!」
村は一変していた。
そこに現れるターニャん。
「どうじゃ!苦しんでおるか!」
「ありがとうございます!!」
「なに?」
「こんなに助けてもらって……!」
「助けてなどおらぬ!」
ぷんすか。
「これは侵略じゃ!」
「はい!」
「我の支配下に入ったのじゃぞ!」
「はい!」
「だからその……えーと……」
「はい!」
「……なんじゃっけ」
「契約書です」
ゾフィーが差し出す。
「そうじゃ!契約じゃ!」
「ちゃんとしてる」
―契約内容―
・ベルナス村は魔王領の一部とする
・生産物の一部を納める(適正量)
・代わりに技術・流通・防衛を提供
「これ……」
「めちゃくちゃ良くないか?」
「今までより生活よくなるぞ……?」
「しかも安全保障付き……」
「え、最高では?」
即サインだった。
―遠方―
「……侵略、されたのか」
勇者アレクは震えていた。
「だが……様子がおかしい……」
村の人々は――
笑っていた。
「なぜだ……」
頭を抱える。
「なぜ侵略されたのに……豊かになっている……!?」
理解不能である。
―魔王城―
「くくく……」
ターニャんは満足げに頷く。
「また一つ、我の支配地が増えたのじゃ」
「はい」
「人間どもからしっかり搾取するのじゃぞ!」
「はい(適正な取引ですね)」
「これで恐怖はさらに広がる……!」
「いえ、信頼圏が拡大してます」
「なぜじゃ!?」
(Win-Winだからです)
その日。
魔王は、新たな地を“侵略”した。
それは略奪ではなく、
互いに利益をもたらす関係だった。
魔王は知らない。
それが“支配”ではなく――
“交易”であることを。
そしてその関係が、
やがて世界を繋いでいくことを――
まだ、理解していなかった。
お芝居2本分のチケットは確保しました。




