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大魔王ターニャんの致命的な誤算  作者: 籠崎 莉々
第一部

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3/32

第3話 勇者に狙われる大魔王

魔王や聖女がいるなら勇者もいますよね。

―聖協会本部― 


「……以上が、現在の報告です」


 騎士の声が静かに響く。


「魔王ターニャん出現。 ファリスの村では“奇跡”と称される現象が発生。 

さらに、水の都シリエルにて塔の崩壊……

聖女さまにも立ち会っていただきましたが…領主は拘束済みです」


 聖堂に沈黙が落ちた。

 やがて。


「……奇跡、ですか」


 聖女リリーが呟く。


「はい。村人たちは“女神の加護”と――」


「違います」


 はっきりと言い切った。


「それは魔王です」


 空気が張り詰める。


「どれほど善き結果を生もうとも」


 リリーは静かに目を伏せる。


「魔王は、災厄です」


と、そのとき騎士服の青年が「失礼します!」と会議室に入ってきた。


「貴様!礼儀がなっておらんぞ!」


それなりに立場が上の騎士が注意をする―が、リリーはそれを制した。


「かまいません。何か急用があってのことなのでしょう?」


「あ、はい。大変失礼いたしました…実は今代の勇者が…」


「魔王復活の報を得て、討伐に向かった…と」


「はい。そのように聞き及んでおります」


リリーは顎に手を当て熟考する。


「さて、どうしたものでしょうかねぇ…」



―郊外―


ファリスの村への道行きを一人の少年が歩いていた。

光の聖剣を背負ったその者、名をアレクという。

今代の勇者である。


「あっ! 勇者様だ!」


 村の門をくぐると子どもたちが駆け寄ってきた。

 気づいた大人たちも勇者に近寄っていく。


「あのね、あのねっ!女神さまがやってきてね、私たちを助けてくれたの!」


嬉しそうに話す少女。


「……女神様?」


「はい! 空から現れて、雨を降らせてくださって!」


「すごく偉そうな感じで!」


「ちょっと偉そうでしたね!」


勇者は少女や村人たちに話を聞いて回った。


(おかしい……この村を救った女神とやら、どう考えても伝承の大魔王と姿が一致している)


「女神様のおかげで私たちは救われました……!」


嬉しそうに話す村人たち。


(まさかこれは―――――!)


「洗脳か…?」


勇者は一つの結論に達していた。

(まず村を救う)

(信仰を得る)

(次に絶望を与える)

(……恐ろしい)

(なんという邪悪な計画だ……)


「魔王め!人の心をもてあそぶとは…なんと卑劣な…!」


この勇者、わりとポンコツである。


―その頃―


「うーむ」


 ターニャんは腕を組んでいた。


「なんかのぉ……」


「どうされました?」


 ゾフィーが隣に立つ。


「人間ども、あまり苦しんでおらん気がするのじゃ」


(むしろ感謝されてましたね)


「恐怖が足りんのではないか?」


「そうですね」


「もっとこう……絶望的なやつをやるべきじゃ!」


「例えば?」


「うむ……」


 ターニャんは考える。


「寒くする」


「寒く?」


「くくく、人間どもは食料がないと生きていけないという」


「私たちもですけどね」


「奴らの食料保管庫を凍らせてやるのじゃ!」


(長期保存が可能になるのでは……?)


「光を遮る」


「ふむ?」


「闇で包み、何も見えなくしてやるのじゃ!」


「ターニャん様、早起きできるのですか?」


「なにを言っておる。ターニャんは魔王だから起きたい時間に起きるのじゃ!」


(これ、陽が沈んでから起きて安眠させるだけになるのでは?)


「うむ、完璧じゃな!」


(全部優しいんですよね)


 その時。


「見つけたぞ」


 凛とした声。

 振り返る。

 そこにいたのは――


「魔王ターニャん」


聖剣を抜き、構える勇者。


「おお?」


 ターニャんの目が輝く。


「なんじゃなんじゃ! 我に挑む愚か者か!」


「ターニャん様、嬉しそうですね」


「くくく、挑んできたものを叩き潰して絶望に染め上げるのが楽しいのではないか」


「はぁ」


「して、お前はどこの誰じゃ?」


「俺は勇者アレク。悪を絶つ者だ!」


「ふははははは!良いぞ良いぞ!勇者よ、よくぞ参った!この魔王ターニャん自らが相手してやろう!」


こうして勇者と魔王の戦いの火ぶたが切って落とされた―――――!

勇者って名前の最初が「ア」から始まる方が多い気がします。

ここでの勇者くんも「ア」から始まる名前にしてみました。

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