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大魔王ターニャんの致命的な誤算  作者: 籠崎 莉々
第二部

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第5話 観測者たち

人気のない礼拝堂。


燭台の灯りが、わずかに揺れている。


石造りの部屋は、静まり返っていた。


聖女は静かに跪き、


「報告は以上です」


リリの声が、淡々と響いた。


 対面に座るのは、聖教会の枢機卿の1人。


「……なるほど」


 男は静かに頷いた。


「英雄ターニャ……」


その名を、ゆっくりと反芻する。


「予想以上、ですね」


リリは顔を上げない。


「はい」


「危険性は?」


 わずかな沈黙。


「現時点では——判断不能です」


「判断不能、ですか」


 司祭は目を細める。


「排除対象ではないと?」


「……はい」


 リリはわずかに視線を落とす。


「ただし——」


「ただし?」


「規格外です。戦闘能力、適応力、精神強度――いずれも」


 空気が、わずかに変わる。


「どの記録にも該当しません。能力の原理も不明」


「……神の加護ではないのですか?」


「違います」


 かすかに息を挟んで、リリは答えた。


「では、何でしょうか?」


 その問いに——

 リリは答えなかった。


「……監視を継続してください」


 枢機卿は静かに言う。


「必要であれば、評価を更新します」


「了解しました」


 リリは顔を上げる。


 その視線の先にいたのは——

 中央部の聖協会を管轄する枢機卿―ゼファエルだった。

 






 石の回廊を歩きながら、リリは小さく息を吐いた。


(……排除対象じゃない)


 それが、自分の判断だった。


 だが——

 脳裏に浮かぶ。


 あの剣。


 空間を断ち切る“何か”。


(あれは……)


 思考が、そこで止まる。


 名前がつけられない。


(記録に、ない)


 その事実が、わずかに恐ろしい。


 外に出ると、夕焼けが広がっていた。


「お、遅かったね」


 ターニャが手を振る。


「ごめん、待ったぁ?」


「ううん、今来たとこ」


「あたしぃ、新しくできたジュエリーショップ行きたいんだぁ」


「そろそろ突っ込んだ方が良い?」


「うん」


会話終了。


「リリちゃん、頭悪そうなしゃべりかた上手ね」


「うん。ターニャさんの真似してみたんだ」


「じゃあターニャもリリちゃんのしゃべりかたマネするね。『このイモムシおいしいぽよ』」


「そんなしゃべりかたしませんし、イモムシ喰わねーよ」


「ちょっと聖女、口調、口調」


ターニャがおどけてみせる。


「で、教会での用事は終わったの?」


「はい」


「ふーん」


 それ以上は聞かない。

 少しだけ、沈黙が流れる。


「ねぇ、リリちゃん」


「なんですか?」


「ターニャ、そんなに危ない?」


 唐突な問いだった。

 言葉に詰まる。


「……どうして、そう思うんですか」


「なんとなく」


 ターニャは笑う。


 軽い。

 あまりにも、軽い。

 だが——


「危険かどうかは、まだわかりません」


 リリは、正直に答えた。


「じゃあ、観察中ってこと?」


「……そうなりますね」


「そっか」


 ターニャはあっさり頷いた。


「じゃあさ」


 一歩、近づく。


「ちゃんと見ててよね」


 その言葉に、妙な重みがあった。


「見逃したら——損するかもよ?」


 冗談のようで。

 どこか本気だった。


 後ろ手に組み、こちらを見て「キヒヒ」と笑う。


 リリは、少し目を細めて思考する。


(……やっぱり)


 この子は——


 “わからない”

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