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大魔王ターニャんの致命的な誤算  作者: 籠崎 莉々
第一部

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18/34

第18話 大魔王ターニャんの致命的な誤算

第1部、これにて完結です。

数日後。


「……なんだ、これは」


勇者アレクは、言葉を失っていた。


あの荒れた土地。


絶望しかなかった場所。


そこが――


変わっていた。


「水路が……通ってる?」


乾いていた大地に、水が流れている。


「畑も……」


土は柔らかくなり、芽が出ている。


そして――


「魔物が、いない……」


気配すら、ない。


「兄ちゃん!」


子どもが駆け寄ってきた。


「すごいんだよ!急に全部よくなってさ!」


「急に?」


「うん!なんかすごい人が来てさ!」


「すごい人……?」


嫌な予感がした。


「黒いマントでね!」


確定だった。


「『我が支配してやる!』って!」


「……」


アレクは、空を仰いだ。


「……あいつかよ」



同じ頃。


ターニャんは満足げだった。


「くくく……!」


「完璧な支配であったな!」


「そうですね」


ゾフィーは穏やかに頷く。


「皆さん、とても“従順”でした」


「であろう!」


ターニャんは腕を組む。


「恐怖とは素晴らしいものじゃな!」


そのとき。

報告が届く。


「ターニャ様!」


「なんじゃ?」


「各地の状況ですが――」


紙を受け取り、目を通す。


「……ほう?」


・犯罪率低下

・生活水準向上

・幸福度上昇


「……む?」


もう一枚。


・他地域からの移住増加

・感謝の声多数


「……?」


さらに。


・信仰対象としての人気上昇


「……???」


ターニャんの動きが止まった。


「……ゾフィー」


「はい?」


「これは……なんじゃ?」


ゾフィーは、にこりと笑った。


「報告通りでございます」


「余は今、何をした?」


「世界をより良くなさいました」


「違う」


真顔だった。


「支配したのじゃ」


「はい」


「恐怖で」


「はい」


「……」


ターニャんは、ゆっくりと顔を上げる。


遠くの村。

笑い声が聞こえる。


「……おかしいのう」


本気で言っていた。


「なぜ誰も泣いておらんのじゃ?」


ゾフィーは少しだけ考え、

そして、優しく答えた。


「さあ?」









夕暮れ。

世界は、穏やかだった。


人は笑い、

子どもは走り、

命は続いていく。


その中心で――


「くくく……!」


魔王は笑う。


「世界は絶望しておるのう!」


その認識だけが、

致命的にズレていた。


「ターニャん様」


「なんじゃ?」


ゾフィーは、静かに告げる。


「人類、過去最大に幸福です」


少しの間。


「……ぽよぇ?」


間の抜けた声が、風に溶けた。


魔王は今日も、

世界を“支配”していた。


——誰よりも、優しい形で。




――第1部 完――

第2部は1000年前のお話になります。

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