サイド愛莉その3
愛莉と氷華は富士樹海の大蛇がいるとされているエリアへ向かっている
その途中、愛莉が戦うことはなかった
出てきた魔物は、全て氷華が斬り伏せている
氷華は軽装で腰に差した一振の剣で戦っている
その剣は細めの片手剣であり、愛莉は詳しくはわからないが、何らかの魔物の素材を元に作られているのだろう
「クリスタルプリズン」
その言葉とともに現れた氷の鎖が土竜魔猪の群れを絡めとり、凍らせ、粉々に砕いた
「2級の群れを瞬殺するなんてすごいのね、氷華さん」
「あれぐらいならそこまで。それに生徒会目指すならあれぐらいは出来ないとダメだよ」
「上等よ!とはいえ今戦う訳にはいかないけれどもね」
「うん、護衛も私の試験内容のひとつだから戦われると、少し困る」
そう話しながら、余裕そうに彼女たちは森を進んでいく
事実、氷華はまだまだ余裕だ。何せ皇流の剣術すら、まだ使ってないのだから
「氷華さん、少し質問いい?」
氷華は「何?」と言い続きを促す
「私は強くなりたい、そのために出来るだけ早く、心核魔法を身に付けたいと、思ってるのだけれど、氷華さんはどれぐらいで使えるようになった?」
「どうだろう?私の家は皇流の本家だから皇流の技を覚える為に心と向き合うことが多かったから、かなり早かったけれど、普通は1年の後半までに1つ覚えられたら上出来じゃない?」
心核魔法、それは己の心に宿るものを具現化する魔法
この世界では才能の7割近くは心核魔法の強さによるとまで言われることもある
1人につき3つまで発現するとされている
しかし、習得難易度は高く心核魔法を発現させることもなく一生を終える人物も珍しくはないほどだ
そしてその難易度や制限故に強力なものが多い。必中の効果をもつ魔法であったり、既存の普通の魔法に効果を付与したり、珍しいものだと、時間や空間等の特殊な属性の魔法を発現することもある
基本的には、いわゆる燃費がいいと表現出来るような魔法が多い
心核魔法は心に由来するものに対し、皇流等の流派の技は体に宿るものとされている
また覚えられる数に制限はないとされている
皇流は戦国時代、あるいはそれよりも前の時代に生まれたとされている武術だ。弱いものが強いものから、身を守るための護身剣術が元と言われてる武術だ
心技体を兼ね備えている流派なため氷華が心核魔法を身に付けるのも早かっただろう
ちなみに、皇流は現代においてはかなりメジャーな剣術で月謝を払えば、誰でも学ぶことは出来る
閑話休題
「それに焦らなくて良い。同じ時期の私と同じか、もしかしたらそれ以上に愛莉は強い。それに心核魔法は焦って身に付くようなものでもないし」
「そう。ありがとう、氷華さん」
愛莉がふと疑問に思ったことを口にする
「そうだ、氷華さんは私が試験受けてる間はどうするの?」
「その間は、近くのエリアの監視といざというときの救援をすることになってる」
「3年生の試験って明日じゃなかったかしら?」
「うん、でもこれは生徒会の試験みたいなもの、愛莉も生徒会に入るなら来年からやるかもよ」
そうこう話してると、目的地に着いた
「着いたよ。愛莉の目的の大蛇はこのエリアにいる」
「ありがとう、氷華さん。それじゃ行ってくるわね」
「うん、頑張ってね、武運を」
愛莉は氷華と別れる
大蛇はその言葉通り大きい蛇だ、そのためすぐに見つけることが出来た
丸まっている為、正確にはわからないが、体長はおそらく30mは超えている大きさだ
大蛇の攻撃手段はその巨体の尻尾を叩きつける等の質量攻撃だけ、それと丸呑みに気を付ければそこまで怖くない相手だ
もっとも、まともに食らえばひとたまりもない威力だろうが
大蛇を木の上から確認した愛莉は勢い良く喋る
「あれね。よし勝負!」
愛莉は大蛇に向かっていく。大蛇も愛莉に気付いたのか、愛莉に向かってくる
青みがかったその巨体を愛莉に叩きつけてくる
鞭のようにしなった鋭い一撃だ。しかし愛莉は軽々躱す
そしてすぐさま得意の炎魔法を放った
「大火球!」
直径5mはあろうかという大火球が大蛇を襲う
しかし、大蛇が放った水のブレスによりかき消されてしまった
「なっ…!」
愛莉は動揺した
なにせ、水のブレスを放つということは、それは大蛇ではなく、水大蛇。大蛇の上位種だからだ。
危険度は3級から4級の間
(私が間違えた?いや、このエリアの蛇系の魔物は大蛇しか残ってないはず、他のエリアから来たとしても水大蛇を軍の人とかが見逃すとは考えづらい。つまり短期間で進化したってことね。
今ならまだ逃げられる。今逃げても試験対象の魔物が進化していたなら成績に影響はないはず。けれど…!)
愛莉は思考をまとめ
「ここで逃げるのは!私じゃない!」
そう啖呵を切った
水大蛇と愛莉の死闘が幕を上げた
この死闘が試験会場である富士樹海に大きな影響を与えることになるとは、この時はまだ誰も知らない




