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村の魔女が皇帝へ成り上がる〜千年の魔工帝国史  作者: かずや
ノルン

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4/12

忍び寄る危機


「あそこ!」

 カイが指す先にローブに身を包んだ人が横たわる!

「大丈夫ですか!?」

「う……」

 息はある、道的に南のブランカ領から来たのだろうか?

「ノルン、水を!」

 ハルトから魔鉱石を受け取る。

 水の魔力で染み出した水を飲ませて様子を見る。

「……うぅ、ここは」

 意識がはっきりしてきたようだ、そこに村人達も集まりとりあえず村長宅に運んでいく。


「ふむ、お主名は?」

「……俺はスタンだ、ここはブランカ領か?」

「ここはコスモス地域、何にも属して無い静かな村じゃよ」

「そうか……すまない助けてくれた礼を言う」

「ほっほ、助けたのはそこのカイとノルンじゃ」

「お二人か、ありがとう」


「ねぇノルンお姉ちゃん、あの人戦士だよ」

「戦士……珍しいね」

 ローブに隠されてわからなかったが軽鎧を着けており傷が見える。

 だが戦士の腕とも言える武器は無いようだ。


「……スタンや、お主なんでまたあんな所で倒れてたんじゃ?」

「……信じてもらえないかもしれないが、俺は領土落ちした兵だ」

 領土落ち、つまり所属する領主を見限り領を逃げ出た者。ブランカ領では罪人とされる。

「むぅ……」

 村長の顔が険しくなる。

「村長?」

「ノルン、カイ、お前達は外に出てなさい」

「え?」

「話の内容がお前達には酷となるやもしれん……ちゃんと後で話す、だから今は外に」

 真剣な目でスタンを見据えながら村長は退出を促した。

 仕方なくノルンとカイは村長宅を出て広場に向かう。

「そう言えばハルトさんは?」

「ん?そう言えば居ないわね?」

 小さな身体だがその辺りを飛び回る妖精なので目立つのだが、今は静かだ。

「カイーノルンさんー!」

「あ、お母さん!」

「ミナさん」

「良かった居た居た、ハルトさんに頼まれてノルンさんに街道入り口に来て欲しいって」

「ハルトが?」

「ええ、出来たらカイもって」

「僕も?」

 二人で顔を見合わせる。

「……わかりました、ありがとうございます」

「それじゃあ行ってくるよ」

「カイ、迷惑かけちゃダメよ〜」


 二人で先程スタンを助けた場所まで来たが、ハルトは見当たらない。

「ノルンお姉ちゃん、あれって……」

 カイが遠くに何かの影を捉えている。

「行ってみよう」

 近くなる程に影は大きく視認できるようになり……

「……!見ちゃダメ!!」

 ノルンは急ぎカイの目を塞ぐ。


 眼前に広がっているのは襲撃されたと思わしき商人の馬、荷物……そして商人。

 とても子供に見せれる状態では無かった。


「ノルン!カイ!こっちだ!」

 木々が並ぶ山手からハルトの声がする。

「ハルト!?」

「ここだ!」

 木の間からハルトが姿を見せる、カイを連れて山に入って行った。

「どういう事よ……商人さんが……」

「お前達がアイツを助けて村に帰ってる間、気になり辺りを見ていた時だ……突然商人の荷台が傾いて声も出せずにやられた……」

「そんな……野党……?」

「いや、野党にしては不可思議すぎる。奴ら複数人でいきなり現れたようだったし、人間の挙動じゃないアレは……」


 ガサガサッ!!


 物音に三人は驚き身構える!


「フゴフゴ」

 そこには痩せたイノシシが顔を出してこちらを見ていた。

「ふぅ〜なんだよ驚かせやがって」

 ハルトはシッシッと手で追い払う


「みぃ〜つけた〜」


 突然低い声でイノシシが喋った!


「きゃっ!?」

「うわぁ!!」

「なんだ!?」


 間髪入れずに喋ったイノシシはノルンに飛びついてきた!

「きゃあ!」

 咄嗟に手を出して魔力が出た、何も形成してないがイノシシは一瞬の光に目が眩む。

「グオッ」

 狙いが逸れて地面に飛びついたイノシシは恨みがましくまた喋る。

「まじょか……グオォ!」

 再度飛びつきの体勢を取ってる時、ハルトが手を取る。その手には小さな魔鉱石。

「合わせろノルン!火だ!」

「……ハッ!分かった!」

 重ねられた小さな手と石に火の魔力を込める。

 魔力が魔鉱石に伝わりハルトに流れていく。


「ファイアストーム!!」


 灼熱を帯びた暴風が巻き上がりイノシシを包む!

「ウォォ……」


 火炎は収まり、そして跡すら残っていなかった。

「す、凄いお姉ちゃん、ハルトさん……」

「はぁはぁ……何だったの……」

「……何も残ってない」

「え?」

「死体の痕跡も無い、いくら複合魔法でも骨ぐらいは残るはず……突然現れる……喋る獣……痕跡が無くなる……」

「ハルトどうしたのよ」

「ノルン、カイ話は道中だ村に戻るぞ!」

「え?う、うん」

「はい!」

 

 ハルトの顔は焦りに満ちていた、何か大きな事が起きていると、この時のノルンはまだ想像に至ってなかった。



 三人は村に急ぎながらハルトから話を聞いた。


「アンデッドの可能性が高い!」

 アンデッド、死に絶えて尚身体を動かす不気味な存在。

 しかし、ドラゴンや妖精と同じく殆どが秘境の地で活動する者。

 名前は文献にあっても目にした者はそう居ない。

 そんな者が何故街道なんかに?

「村が危ないの!?」

「逆だ!村が安全なんだ!」

「どういう事?」

 息を切らしてコスモス村に戻り、ハルトは言う。

「アンデッドは穏やかに暮らしている健やかな空気を嫌う、ブランカ街道みたいな人気の無い道は奴らの縄張りになっているんだ」

「ハルトさん、助けた人はブランカ領から来たって……」

 カイが呟く、街道で助けたレオンは何者なのか?

 再び走り出し村長宅に急いだ!

「村長!」


 眼前に広がった光景に三人は目を見開いた。

 黒い煙を腕から上げているレオン、足下に倒れている村長と複数の村人。

「村長!しっかりして!」

「レオンさん……あなた……」

「コイツもアンデッドか!?」


「ま、まて……!」

 村長が動きだした!村人も皆生きている!


「レオンは儂等を助けてくれたんじゃ……」

「すまない、誤解させたようだ……」


 改めて場を整えてお互いの話を整理する。

「私達はレオンさんを見つけた場所から近い所で商人さんが襲われた跡を見つけました、直後に喋るイノシシに襲われて……」

「ふむ、儂等はレオン殿のブランカ領での異変を聞いていた時に足下から湧き出た人のようなものに襲われたんじゃ、レオン殿が撃退してくれたが」

「……全てブランカ領の異変に繋がっている」

 レオンは口を開いた。

「数ヶ月前からブランカ領主ブランカ公は人が変わったかのように、重税を貸し徴兵を行いだした」

「徴兵だって?」

「噂では領土を拡大する為にとだったが……俺は余りの異様さから領兵を抜けた……その逃げる道中で奴らの襲撃にあった……何が起きてるのかさっぱりわからない」

 レオンは頭を抱えて項垂れる。

 重苦しい空気を破ったのはハルトだった。

「村長、皆を村から出ないように注意させて……俺が偵察に行く」

「ハルト!?ダメよ!危ないわ!」

「ノルン、しっかり魔鉱石を持っておくんだ出来れば複数個、魔力を保持できるから溜めておけ」

「ハルト……」

「カイ、お母さんのとこに居て守れよ」

「……うん」

「妖精の俺なら見つかりにくいし空から様子を伺える、情報収集してから今後の対策を決めよう」

 ノルンは己の無力を嘆いた、ハルトに危険を押し付けて自分は待つだけなんてと。

「ハルト殿……村の為に申し訳ない、でも無茶だけはせんでください」

 村長はそう言い村人に広場へ集合を掛けた、これから現状を伝えるのだろう。

「……カイ君、お母さんのとこに」

「うん、ノルンお姉ちゃんも気を付けて」

 カイをミナの下に返し、ノルンはハルトの下へ。

「ハルト、絶対帰ってきてよ」

「三日だ、三日経って帰って来なかったら村長に村を離れる事を促すんだ」

「そんな……」

「ノルン、アンデッドの縄張りがブランカ領内で形成されていればこの辺りも呑まれる可能性が高い、最悪を想定しておくんだ……」


「ノルン殿、ハルト殿良いかな?」

 そこにレオンが現れた、何か話があるようだ。

「妖精のハルト殿……まさか妖精が存在するとは、改めて俺はレオン」

「……あんた、領兵じゃないだろ」

「え?ハルト?」

「……やはり誤魔化せないな、正確には領主に雇われた傭兵だ」

「って事は特別な任務抱えてた時に混乱が起こったんだな……」

「お察しの通りだ……ハルト殿、伝えておく事がある。おそらくブランカ公はもうこの世に居ない、だがその権力と地位を操る影が必ず居るはず!その者を特定出来れば俺が……必ず裁きを!」

 拳を振るわせ涙するレオン、余程の事情があるようだ。

 ハルトは身を翻し南に向かいながら言った。

「必ず情報を持って帰る、三日後に会おう」

 そう言って飛び立ってしまった。

「……ハルト、どうか無事で」

「ノルン殿、貴女には俺の全てをお伝えしておきます」

「はい、分かりました」

 レオンの目には決意が見える、彼は考えたく無いが死を覚悟してブランカ領に戻ろうとしているのが分かる。

 だがノルンに止める力は無い、ただひたすらにハルトの無事を祈るのみだ。


 ブランカ領兵、もといブランカ公直属の傭兵だったレオンは己とブランカ公の関係を静かに語りだした……

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