7 宇宙船
カーマイン・ウェン宅のリビングで、部屋の半分を占める焦げ茶色の大きなソファーに、リゲル、ジス、エイカの順で腰を下ろした。
タンクトップ姿のカーマイン・ウェンがキッチンから飲み物を載せたトレーを持って現れた。
「さあ、どうぞ。……驚いたよ。つっても、お前は相変わらずだけどな」
ウェンはエイカを見て、疲れたような笑みを浮かべた。
「こちらは私の夫のカーマイン・ウェン。ウェン、こちらはジス、そしてリゲル」
彼女は気まずい様子で彼らを紹介した。
「あれ? ふたりは結婚してるの?」とリゲルは目をキョロキョロさせた。
「なるほど、そういうことですか」とジス。
「因みに、現在は別居中ですから」
エイカはこれ以上何も訊くなと言わんばかりに、強調して言った。ウェンは苦笑いを見せながら、ソファーの向かいにある小さな椅子に座り、腕を組んだ。
「とにかく、なんかワケアリなんだな」
ジスは丁寧に、これまでの経緯を説明した。「……というわけで、この少年を無事に目的地へ移送するため、どうしても宇宙船が必要なのです」ジスが真剣な目でウェンを見つめると、エイカが続けた。
「つまり、イシュマールを返してほしいの」
ウェンの表情が一瞬で変わった。「ハッ、ここにきて『返せ』と来たか……」
短い沈黙の後、彼は頭を掻き《か》ながら言った。
「いや、無理だな」「なんですって?」エイカが立ち上がる。「いやいやいや、ちょっと落ち着けって。そういうアレじゃなくて……ここにないから渡せないだけだって。なんつーか……借金の方に取られちまったんだよな、ハハハハ」
エイカは深いため息をついた。「いいわ。で今、イシュマールはどこにあるの?」
ウェンは天井を指さす。「もしかして宇宙ステーションのことですか?」とジス。
「まぁ、ここからだと『スカイブリッジ』を渡って『リヤド島』にある『スペースポート』から定期のシャトルバスが出てるから、それで……」
ウェンが言いかけたとき、リゲルの顔が真っ青になって、呟いた「ああ、まただ……」
「リゲル? どうしました?」
「みんな、伏せて!!」
リゲルが叫ぶと、ジスはとっさに孤児院での襲撃を思い出した。
「いいから、みんな今すぐ——」その言葉が終わるより早く、室内の照明が一斉に落ちた。
次の瞬間、暗闇の中、怒号のような銃声が連続し、壁にいくつもの穴が開いていく。
リゲルは目を閉じて心の中で強く助けを呼び続けた。




