10 離陸
スカイブリッジを渡りきると、派手なビルボードのホログラフィック看板が見え始めた。
リヤド島自体が人工島であるため、大陸側の街とは違う、洗練された近未来的な建物が道の左右に続いている。
「あそこだ」
前方に、平面的に連結された大きな建物が見えた。あれがリヤド・スペースポートだ。
彼らはトラックをパーキングエリアに停め、急ぎ足で建物内に入った。
するとウェンが急に暗い顔で立ち止まった。「あのさ、俺今シャトル便に乗る金もないんだけど……」
「お金のことはご心配無く」ジスが静かに言うと、ウェンの顔が一瞬で明るくなった。
「おお、マジか?」「エクレシアですもの。どこだってフリーパスよ」エイカが嫌味たらしく言った。
ニールは周囲を注意深く確認しながら言った。
「ここも問題ないな。グズグズせずに行くぞ」
人の多い一般セキュリティゲートを避け、ジスが先導する形でスタッフ専用通路へ向かった。警備員がジスのUNIに表示されたコードをスキャンすると、無言でドアを開けて手招きした。
「すげーな……」ウェンが感心したように呟く。
ドアが閉まり、ロック音が響いた。
少し離れた壁際に立ち、その様子をじっと見つめている男がいた。彼はN.S.F.の制服を着てUNIに向かって小さく話していた。「ええ、少年を確認しました。今、確保しますか?……了解。では私もシャトルに乗船します。では、後ほど」男はUNIをポケットにしまい、早足で去っていった。
シャトルバスは地表から垂直に上昇を始め、2時間ほどで成層圏を抜けた。慣性制動システムと人工重力発生装置のおかげで、乗り心地は驚くほど快適だった。
ウェンとエイカは緊張の糸が切れたのか、シートに座った途端に深い眠りについた。ジスは静かに周囲を警戒し続けている。ニールも腕を組んで目を閉じていたが、その表情はどこか穏やかだった。
この一日で初めての平穏な時間だった。




