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剣と魔法の異世界に現代兵器を持ちこんでみた話 ~イマジナリ・ガンスミス~  作者: 矢野 キリナガ
第12章:エルジア大陸編
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再起に向け異世界で見据える話④


 カリストロスや女騎兵たちが街の西側へ向かうと、そこでは連絡のあった通りに、何匹ものランボスの群れが目を血走らせながら、人や建物を徹底的に襲っている光景があった。


「本当にランボスが暴れてる……だけどあの感じ、まるでニロコ村の時と似ているわ!」


「あー、そういや前にも村を襲いに来たことあったなあ、あの白いの。えーと確か、スカ何とか病に罹ってたんだっけか」


 空気の読めない呑気な口調で言ったカリストロスに、男魔剣士が溜息をつく。


「それを言うなら、スカーシス病だろ。……確かにあの狂い方はまさしく、それっぽいな。何にせよ、ああなっている以上は全滅させるしかないだろう」


「……ッ! 勘付くのが早いわね。早速、こっちに突っ込んできたわよ!」


 言って、女騎兵は武器を構える。彼女の告げた通り、ランボスの群れの数匹はカリストロスたち四人の存在を直ちに認識すると、地響きを立てながら一気に突撃を掛けてきた。


「流石は狂っても聖獣。俺の呪いと魔剣の気配を感じ取ったのかもしれんな。――まあ、自分から来てくれる分には手間が省けるが!」


 続いて男魔剣士も鎖剣(チェインソード)を構え、二人同時にして、襲い来るランボスの群れへと突っ走っていった。ベヒモスの時と同様、男魔剣士は大剣で相手を叩き斬り、女騎兵は槍で敵の急所を貫き穿つ。


 そうしていると、今度は全く別方向から何かが接近してくる振動を女呪術師は感じ取った。彼女がそちらを向くと、なんとベヒモスの群れが後方にいる二人のところへ向けて突進してきている。


「――ッ! カリストさん、あっちの方からベヒモスが来――」


 ところが、女呪術師が言い終わる前に、カリストロスはガンドルフィンを連射すると、向かってきていたベヒモス全ての眉間を正確に撃ち抜き、あっという間に完全沈黙させてしまった。


「さ、流石です……」


「いいから、お前は索敵に専念しろ。コイツらの親玉がいつぞやの湖にいたのと同じヤツなら、仕留められんのは俺だけなんだろうからな」


 そう言ったカリストロスの言葉がつい耳に届いた男魔剣士は、目の前のランボスを屠りながらも、苛立だし気に舌を打った。


「あの男、肝心の有効打だった機弓(クロスボウ)を失っておきながら、何を言ってやが――」


(いや、そういえば今、アイツは魔人としての力を取り戻しているんだったか。カリストがどうやってあの黒いバケモノを打ち倒したのか、具体的な手段を俺は見ていない。もしかしたら、ロードランボス相手にもその能力を使うつもりなのかもしれんな……)


「どりゃあッ!」


 男魔剣士がそんな事を考えていると、女騎兵がその場にいた最後のランボスを仕留め終える。


「……やっぱり、おかしい。ベヒモスとランボス、互いを視界に入れておきながら、けしてぶつかり合うことなく、どちらも人間の方を狙って襲いかかっている……これは明らかに通常じゃ有り得ない異状よ。何かある筈だわ」


「別に何だっていいだろ。黒かろうが白かろうが、暴れてんのは全部ぶっ倒しちまえば」


 相変わらずのいい加減な調子で言ったカリストロスに、男魔剣士は思わずガシガシと髪を掻いた。


「本当に浅慮だな、アンタは。ただモンスターの群れが暴走しているのと、誰かによって意図的に仕向けられているのとでは、話が変わって来て――」


 その時、突然何かが建物の影よりものすごい速度で一直線に飛んできては、家屋の壁へと激突した。爆ぜるように石壁が砕けて土埃が舞い、反射的にその場の全員が物音のした方を向く。


 すると、そこには三人ほどの人間の死体があった。武装した街の衛兵らしき男たちが崩れた瓦礫の中に埋もれており、一目で死んでいると判る有様となっていた。つまり彼らは、その身ごと何か凄まじい力によって弾き飛ばされ、行き先にあった家屋にぶつけられたこととなる。


「な、何だ……? 一体、何が――」


 近くにいた冒険者の一人が、恐れの表情を浮かべながらそう呟く。その声に誰もが自然と、三人の人間が飛んできた方向へと目を向けた。


 直後、この付近で最も大きな建物である教会の影から、何かがのそりと巨大な姿を見せる。それはランボスの王、ロードランボス――のように見えたが、違った。


 その巨獣は、全身を金属のような白銀に輝かせていた。そんな見覚えの有り過ぎる特徴に女騎兵たちは息を呑む。それは紛れもなく、ロードランボスに酷似した形状をした銀色の怪物――即ち、新種のメタビーストであった。


「あ、あれは……!」


 新たな敵の出現、それもこれ程まで大きな銀色の怪物は見た事がないと、女騎兵は槍を構えつつも、強い戦慄に思わず震える。そしてそれは、男魔剣士や女呪術師も同様だった。


「おいおい、何がロードランボスだ。あれじゃあ完全に、メカロードランボスだろ」


 そのような中、カリストロスだけが至って平静さを保っていた。おそらく、元の力を取り戻している為に精神的な余裕が大きいのだろう。


 ――改めて、視界に先に現れた怪物を確認する。そのモンスターは、本物のロードランボスと同じように、頭には剣のような角が一本、背中には翼を想わせる突起が二本一対で伸びていた。ただし、眼はこれまでのメタビーストと同様に単眼(モノアイ)のレンズ状で、無機質且つ冷酷な光を輝かせている。


「……ッ。まさか、ここに来てとんでもないのが出てきたわね……! ――私が正面よりアレを引き付けるから、貴方は別方向から攻撃を加えて」


 腹を括った女騎兵が、横目で男魔剣士を見ながら指示を告げる。


「承知した。気をつけろよ!」


 男魔剣士は了承すると、彼女から一旦離れ、それに合わせて女騎兵は小盾(ヒーター)のスリットを開閉させると、中から液体金属を放出した。


「武器形成(アルムトランス)、複数展開(マルチディプロイ)――斉射(サルヴォー)ッ!!」


 続いて、液体金属を数本の槍へ瞬時に変形。それから空中に固定させた後、一斉に矢の如く、メタビーストへ向けて射出した。


 当然、メタビーストは迎撃行動として、頭角のブレードを素早く振り回しては、投槍の全てを弾き飛ばす。


「再射(リピート)ッ!」


 しかし、女騎兵もそれは織り込み済みであり、跳ね返された槍は空中で方向を反転させると再度、メタビーストへ向けて飛んでいった。それをメタビーストはまた角で弾ききるが、


「うりゃああッ!」


 それに併せて、女騎兵自身もまた、真正面よりメタビーストへと飛び掛かる。槍の切っ先が狙うは頭部。だが、メタビーストは投槍を凌いだ後、即座に女騎兵の方へも攻撃を行ってきた。


「あぐッ……!」


 女騎兵は咄嗟に攻撃からガードへと体勢を切り替え、吹っ飛ばされはしたものの、直撃を貰うことはなく済んだ。なんというスピード、と驚かされこそしたが、


「はああああッ!!」


 その時、側面から男魔剣士が建物の屋根より飛び掛かるようにして、メタビーストの首の付け根を狙い、大剣を振り下ろしてきた。敵の注意を女騎兵が引きつけた上での、コンビネーション攻撃。彼の鎖剣(チェインソード)の刃であれば、たとえオリハルコンの装甲であろうと、有効なダメージを与えられる筈である。


 ――ところが、彼がメタビーストへと急接近を掛けた途端、メタビーストの背から伸びた翼型の突起が、唐突に変形する。折り畳まれていたそれは突如、まるでカマキリの前肢のように伸びると、その先の鋭利なブレードで男魔剣士の斬撃を弾いた。


「がッ――!?」


 思いも寄らぬ反撃を食らった男魔剣士は、強烈な勢いで吹っ飛ばされては、後ろにあった建物の壁へと激突する。


「ちょっ、嘘!? 何よ、あれ!」


「へえ、あのメカランボスの背中の突起(アレ)、可変式のサブアームになってるのか。ますます、メカじゃねえかよ」


 作戦の失敗と敵の奇妙な反撃に女騎兵が困惑する中、カリストロスはこれまた呑気に感心したような様子で言った。


「くそッ、何だ今のは――」


 一方、男魔剣士は悪態をつきながらも、急いでその場より立ち上がろうとする。だが、メタビーストの背より伸びたアームの切っ先は、未だ男魔剣士の方にピタリと向いていた。


 そして、その切っ先が突然輝いた途端、そこから光弾が放たれては、男魔剣士へと直撃した。


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