白き閃光の異世界の冒険者の話⑪
「「…………ッ!?」」
「アレって……ここに出て来る妖精の大きいヤツ……?」
急に出現した存在に対し、思わず綾美はそう呟く。奇妙な色をした岩塊らしき物体から出てきたもの、それは一同が鉱山内で散々出くわしては戦ってきた、メタルイーターという妖精種、その非常に大きな個体――体長は2メートルを優に超える程――であった。
「でもただ大きいだけじゃなくて、毛の色が全然違うね。それになんか、頭の上に王冠みたいな突起も生えてるし」
「もしかしてコイツ、ここの妖精どもの親玉……いや、王様なんじゃねえのか?」
視界の先の大きな妖精を観察しながらジェドとハンターがそう言ったところで、当の妖精は寝起きのような仕草を見せた後、如何にも機嫌の良くなさそうな素振りで、自分の前に並び立つ六人を見回した。
「――ニンゲン、ナゼ、王国ニ来テイル? ニンゲン、ナゼ、寝所ニ来レテイル……?」
「えっ、喋った……?」
直後、唐突に妖精が言葉を口にしたように聴こえた綾美は、意外そうに目を瞠った。そしてそれは、他の仲間達も同様であった。
「この大型妖精、言語を発している……即ち、知性があるのか」
「でも何言ってるか判んないよ! コメットは判る!?」
しかし、目の前の妖精が何を話しているのかを全員が聞き取れている訳ではないようだった。綾美以外に翻訳の加護を得ているコメットに、ジェドが相手の話を理解できているか問いかける。
「ええ、私には聴き取れますわ。それにおそらく、私なら会話も可能でしょう。ここはせっかくですので、話を試みて――」
「ニンゲン、殺ス……ヨクモ起コシタ……ニンゲン、潰ス……ココニ要ラナイ……!」
だが、対話できないか試してみようとしたコメットの思惑とは裏腹に、大型メタルイーターは酷く激昂した様子になって、憎悪じみた明確な殺意を示してきた。
「……いや、これはもうコミュニケーションを望める状態ではないな。戦闘態勢に移れ、迎撃するぞ」
そんな相手の今にも襲いかかって来そうな形相に、ディアンは淡々と述べては剣を手に、パーティの一番前へ出る。
「えっ、いきなり戦っちゃって大丈夫なの!? てかコメット、このキングっぽいメタルイーター、何て言ってた訳?」
「ええと……コロスだのツブスだの、酷くご機嫌ナナメな感じでしたが……」
「あー、じゃあもうコレ、のっけから戦闘らないといけないヤツだなあ」
コメットからの回答にジェドは肩を竦めると、すぐ魔杖を構えては、容赦なく戦う姿勢を取った。他の仲間達もそれぞれ、得物を手に同じ状態へと移る。
「――来るぞ!」
ディアンがそう叫んだ直後、妖精の王らしき敵性モンスター――キングメタルイーターは鋭く太い、剣をそのまま生やしたかのような爪の伸びた腕を振り上げながら、最前列の彼に向かって飛び掛かってきた。
それに対し、ディアンは下手にその場から動かず、一度敵の攻撃を受け止めてからのカウンター狙いで相手の突撃を出迎える。
ところが、キングメタルイーターがディアンへ爪を振るっては、それが彼の剣に弾かれようとしたその直前――なんと、敵の姿が幻のように一瞬で掻き消えた。
「――ッ!?」
「あがあッ?!」
直後、ディアンの背後にて誰かの叫んだ声と倒れた音が聴こえてくる。
ディアンが咄嗟に振り替えると、そこでは何故か、コメットが真後ろより、敵の爪に背中を切り裂かれては地面に倒れてしまっていた。
「えっ……コメット、さん……?」
「何ッ!?」
その唐突な事態に、全員が酷く驚愕する。攻撃を受けたコメットは即死こそしていなかったが、それでも傷はけして浅くなく、倒れ伏した状態から一切動くことは叶わずに血だまりを広げていた。
そして彼のすぐ傍には、コメットをそのような危機的状態にしたキングメタルイーターが、鮮血に濡れた爪を掲げながら佇んでいる。
「コイツ、いつの間にコメットの後ろへ回り込んだ!? 見かけによらず、すげえスピードなのか!?」
「いえ、今のは転移です! このモンスター、瞬間転移能力を持っています!」
敵の発動させた能力の詳細を魔審眼で見て取ったフランジェリカが叫ぶ。実はこのモンスター、ディアンへ突撃したと見せかけて、コメットの真後ろへと転移し、彼を無防備な背後より斬りつけたのだ。
「このッ、よくもコメットを! ――射抜け、マジックアロー!」
パーティで一番の生命線たる回復役を真っ先にやられたことで、ジェドは半ば反射的に敵へ魔弾を放った。
その攻撃は相手へ効く効かないに関係なく、あくまで牽制目的に撃ったもの。未だにキングメタルイーターがコメットの間近にいる為、まずはそこから敵を離れさせなければといった意図で行った攻撃だ。
そうして、キングメタルイーターは避ける間もなく、魔弾の直撃をその身に食らうこととなるが、
「へ――ひゃあああッ!!?」
突如、また別の方向から他の仲間の叫び声と、それに続いて魔弾が爆ぜる炸裂音が聴こえてきた。それはあろうことか、綾美の叫び声であった。




