白き閃光の異世界の冒険者の話⑩
妖精門の起動後、視界が一瞬白み、転移時独特の感覚に包まれた一同であったが、
「――ッ?!! わああああああッ!!!!」
途端、六人は唐突に床が全て抜けたような感覚に襲われた。というか実際、彼らは高所より落下していた。
竪穴のような空洞を一同は重力に任せて落ちていったのだが、そんな彼らの視界の先、向かっている地面にはなんと、長く鋭い水晶がまるで剣山の如く大量に突き出ている!
『――アンチグラビティ!』
その時、ディアンの武器である宝剣が自ら即座に魔法を発動。反重力による斥力で全員を宙に浮かせては、一同が無惨にも串刺しになってしまう事態を間一髪で防いだ。
「は……はわわ……」
一旦、空中に浮かんだ後、何もない安全な地面まで運ばれて降ろされた六人であったが、死ぬかもしれない目に突然あったことを綾美は助かってから認識し、腰を抜かしたように座り込んでしまった。
「ちょっ……ビックリしたあーッ! まさか、転移した途端、落っこちるなんて! しかも、物騒な罠まで用意してあったし!」
直後、すぐ隣にてジェドが冷や汗をかきながらも、水晶群を指差しながら叫んだ。
「た、助かりました……しかしよく、即座に全体化魔法を発動出来ましたね?」
「転移した先に何が待ってるか判らんかったのでな、念の為に構えているよう、自前に宝剣へ準備させておいたのだ。どうもこのダンジョンは、強い魔力波を発したものに何らかのリアクションを示す傾向が見られるからな」
フランジェリカから訊ねられ、ディアンだけは一同の中で冷静な佇まいでそのように答える。
「ふう、旦那さまさまだぜ。コイツぁ、間違っても足向けては寝られねえな」
そんな彼の言葉にハンターも息をつきながら、先ほど自分達が落ちてきた場所へと目を向けた。
「にしたって、よくもまあこんな即死トラップ同然なものが仕掛けられてやがる。まるで初めから妖精門使ったヤツを仕留める為みたいな代物じゃねえか」
「あながちそれ、間違ってないかもしれません。崩落に見せかけた例の転移現象といい、鉱山内に入り込んだ異物は生かして帰さないようにしたいのでしょう。――例えるなら、私たちは病原菌みたいに扱われてるってことです」
「えーっ、僕たちがばい菌!? ひっどいなー、それ」
「とはいえ、ここの妖精たちからすれば私達は外敵でしかないでしょうし……それはそうと皆さん、あちらをご覧になってくださいな」
何かに気づいたコメットへ促され、一同は彼の差した方向を向く。
するとその先には、岩や土、鉱石等を沢山積み上げて作られた、奇妙な構造物群が存在しているのが目に映った。まるでちょっとした神殿のように形作られている、その場所の中央には、更に不可思議な見た目をした物体が鎮座している。
それはフジツボがびっしりと表面に付着したような外観をした、一つの巨大な岩の塊らしきものであった。ただし、色はグラデーションがかった鮮やかなトリコロールカラーをしており、この物体が明らかに普通ではない異質なものであることを顕著に示している。
「うわっ、何じゃこりゃ!? なんか、如何にも変なもんがあるぞ。絶対、コレが異界の核だか基点ってヤツだろ!」
「まあ、どう見たって怪しいよねえ。これのある周りも随分、妙な造りになってるし……ホントに何なんだろ、コレ」
「とりあえず魔力反応は感じますけど……色々調べてみますね」
そのような謎の物体に一同が近づいたところで、フランジェリカが真っ先に魔法での解析を試みる。
「……どう? 何か判った?」
「えっと……まずコレ、生体反応があるので生きてますね。見た目は鉱物っぽいですけど、れっきとした生物です」
後ろから聞かれた綾美の声にフランジェリカが答え、その回答にハンターは目を瞠った。
「マジか! まさか、コレん中に何か入ってたりすんのか!?」
「もしかしたら、自己石化してる状態なのかもしれないね。魔物の中にはそういう生態のヤツもいるって聞いた事あるし」
「または卵や蛹、もしくは擬態の可能性だってあるな。何にせよ、気を付けた方がいい」
謎の物体の観察を続ける上でジェドやディアンも推測を述べていくが、それを聞きながら解析を継続しつつ、フランジェリカはどうにも困ったように目を顰めた。
「うーん、何だろコレ……どうにもスキャンがいまいち通り辛いなあ。何が原因なんだろ、もう少し詳しく調べてみて――ん?」
直後、一同が見つめていた謎の物体が一瞬、細かく振るえたかと思うと、それから数秒後にブルブルと激しく振動しだした。
「わわっ! なんかこの岩みたいなの、動き始めたんだけど!?」
「それだけじゃないです! この物体の放つ魔力反応が急激に増大してきました!」
「全員、一旦距離を取れ!」
ディアンの指示に、一同は急いで謎の物体から大きく離れる。
そうしてすぐ後、赤や青の目立つ色合いをした岩らしきものの表面に幾つもの罅割れが走っていき、振動に伴って周りにバラバラと欠片を撒き散らしては落としていく。
それからまるで弾けるように全体が砕けたかと思うと――その中から、何やら巨大で紺色の毛むくじゃらな生き物が姿を現した。




