↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
剣と魔法の異世界に現代兵器を持ちこんでみた話 ~イマジナリ・ガンスミス~  作者: 矢野 キリナガ
第12章:エルジア大陸編
703/737

妖の鉱山に異世界で迷い込む話④


 その後、綾美とクリストル兄妹の三人は、鉱山内の坑道そのものである地下空間をしばらく進み続けた。


 坑道内の通路はルヴィスが先に注意したように分かれ道がとにかく多く、通常のダンジョンと何ら変わらなかった。更に度々、この地下へ来てすぐに出会った魔物――オリハルコンの外皮と爪牙を有する妖精の群れに襲われ、その都度、ルヴィスとサフィアが返り討ちにしていった。


 それから、仲間の誰一人にも合流することなく、焦りと不安を募らせながらも探索を続けていったところで、


「――あれ? ここって……また一番初めに落ちてきた場所?」


 広いフロアが奥に覗く出入り口を抜けたところで、視界に映った景色に綾美は思わずそう口にした。


 三人がやってきた場所、そこには中央部に三人が墜落した機竜(ヴィーヴル)がぶつかったことで生じた跡が地面に残っており、自分達が今通って来た箇所も含めて、四方に一つずつの出入り口があった。即ち、三人が移動を続けて辿り着いたのは、最初に彼女らが探索を開始した場所――要するに、スタート地点へ戻って来てしまったのである。


 そして、それは何も今回が初めてではなかった。三人はもう何度も、探索と移動を行ってはこの場所へと戻って来るのを繰り返していた。


「……兄さん。これはおかしいですよ」


「ああ、おかしいな。どう考えても不自然過ぎる」


 綾美の発言の後、サフィアとルヴィスもまた顔を顰めては、もういい加減見飽きた地点の景色を見回す。


 そんな彼女らの手にはコンパスやマッピング用のメモ帳、それから冒険者がダンジョン探索をする上で用いる簡易的な魔道具などが握られていた。


「この坑道は単に複雑な迷路というだけではない――おそらく、何かしらのギミックがある場所のように思える。でなければ、ここまで出鱈目なマッピングの結果にはならない筈だ」


「ギミック……というと、この場所自体に魔法的な仕掛けでも仕組まれてるってこと? 例えば、幻術で惑わされてるとか……」


「その可能性は大いにあるな。ただ、今の俺たちは全員がエリジェーヌの魅了(チャーム)にすら対抗できる対魔装備を身に着けている。ダンジョンに施された幻で視覚的には欺かれても、認識阻害そのものを食らうことない。だから、幻術に嵌まって同じ場所を行ったり来たりしている訳じゃあないと思う」


 綾美に対するルヴィスの説明――それは、ある物を無いように見せかけられる錯覚は成立しても、本人は右に行っているつもりが実際は左に進んでいる、といった感覚的な誤認をしていることはまずない、というものであった。


「まあ、もし今の私たちの装備を貫通して作用する催眠効果なんてあろうものなら、手の施しようがないですけどね。――とはいえ、この場所にあるとされる仕掛けの本質を理解しないことには、これ以上闇雲に探索を続けても疲弊する一方でしょうけど……」


「うーん……思えばここって、昔やったゲームに似たようなダンジョンがあった気がするんだよね……。だいたい、迷いのナントカって名前がつけられてて、正解のルートを通らないと、それ以外は即スタート地点へ戻されちゃう的な……」


「何だって? アヤミさんのいた世界には、そんなものが……?」


 ふと大真面目に訊いてきたルヴィスに、綾美は慌てて手を振る。


「ああいや! あくまでテレビゲームの中の……その、遊びでやる架空の疑似体験的な話だよ! 実際にそういった場所があるって訳じゃないから!」


「はあ……。でも、それはそれで何とも興味深くはあるが……」


「ふむ、なるほど……しかし、それだと今、アヤミの言ったダンジョンの仕組みは幻術よりも転移が根底になるようですね。なんていうか、一定の領域内に決められたルールを守らないと、強制力が生じる一種の異界みたいな感じです」


「転移……そういえば、そもそも今この場所に来たのも、それが原因かもって話だったよね……」


「うーん、だったら……偵察(ベオーク)」


 すると、何か考えでも思い浮かんだのか、ルヴィスは探索の道中で拾った魔石の欠片を取り出すと、それに魔力を通しつつ、呪文を口にしては地面へ放った。


 直後、地面に落ちた魔石は周りの土を独りでに集め出し、粘土のように何らかの形を作り出したかと思うと、あっという間に猫くらいの大きさをしたネズミみたいな姿になった。


「あっ、可愛い。なんだか、チンチラみたい。ていうか、ルヴィスさんもこういう魔法使えるんだ」


「まあ、一応な。そのチンチラっていうのはよく判らないけど、アヤミさんの世界にはこれみたいな動物がいるのかな」


「兄さん、もしかしてですけど、その傀儡(クグツ)に先を行かせて、坑道内に転移地点があるかどうか調べるつもりですか?」


「ああ、その通り。コイツを俺たちの少し前に進ませた上で移動すれば、もし行き先に転移してしまう箇所があっても事前に発見できる筈だ。といっても、あくまであればの話だが」


 サフィアに頷くと、ルヴィスは作り出したばかりである土塊のネズミ型傀儡を自分らのいる位置から数メートル程、前方に離した上で進ませた。因みに傀儡の背には核となる魔石をあえて露出させており、離れても位置を視認しやすいように点滅した光を放っている、謂わばビーコンとなっている。


 そうして三人は探索を再開した訳であるが――然程、時間の掛からないうちに、その傀儡は早速その役割を果たすに至った。つまりは、ある出入り口を抜けようとしたところで傀儡がルヴィス達の視界より消失し、転移箇所の存在を明らかにしたのである。


 それから一行は同様の手法で探索を続けていき、幾つもの転移箇所を抜けながら、更なるマッピングを進めつつ道中を移動していたのだが、


「兄さん、一つ思いついたことがあるんですけど、いいですか?」


「ん? どうした?」


「ここのダンジョンの転移地点が今のところ、全て例外なく各フロアや通路を行き来する出入り口のみに限定されていますけど……この転移したことを感じさせない自然な移動については、まるでこの世界へ来る時に渡った妖精道(フェアリーロード)みたいじゃないですか?」


「ああ、言われてみれば……。それにここはあの妖精種も沢山生息している事を踏まえると、いわゆる妖精郷のような領域として成立しているのかもしれないな」


「妖精郷?」


 聞き慣れない単語を訊き返した綾美にサフィアが答える。


「まず妖精種というものは一箇所に密集し過ぎると、それだけでその場所に不可思議な異界法則を生じさせてしまいます。そうなってしまったエリアを妖精郷と呼ぶのですよ」


「要するに、妖精の大勢いる住処になってしまった場所は、普通じゃあり得ない現象が当たり前に起こるようになってしまう。例えば、物が勝手に浮いたりとか、水が燃えたりとか、人が突然消えていなくなったりとか……色々ね」


「なるほど……てことは、この鉱山の中は妖精の巣になってしまってるから、あちこち転移して飛ばされちゃう仕組みになってる……?」


「まあ、あくまで今持ってる判断材料での推測だけどな」


 その後、三人は転移箇所があることを把握した上で探索を進めることで、当初は行けなかったルートにまで移動先を伸ばすことが出来ていた。そして、


「む? あれは……」


 着実にマッピングと探索域を広げていったところで、ルヴィスは辿り着いたばかりであるフロア内の出入り口に気になるものを見つけては、足を止めて視線を向けた。


 というのも、出入り口の木枠やすぐ傍の壁の部分、そこには何やら、夜光塗料のようにぼうっと光る文字が書き込まれていたからであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。