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剣と魔法の異世界に現代兵器を持ちこんでみた話 ~イマジナリ・ガンスミス~  作者: 矢野 キリナガ
第12章:エルジア大陸編
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吉報凶報は異世界で急に届く話①


 カリストロスや女騎兵たちがオルツ村より戻って来て数日後。ツァートルテにある宿屋いつもの一室にて。


「ただいま、戻りました。――あら?」


 昼飯時にはまだ早い午前中の時間帯、買い物を終えて外から戻って来た女呪術師は、部屋に入るとすぐに机で何やら作業に没頭している女騎兵の姿が目に入った。


 そんな彼女は見たところ、いつもならカリストロスが行っている細工箱の開錠作業に一人で取り組んでいるようだった。因みに他の男性二人もそれぞれ外出しており、どちらもまだ戻ってきていないようである。


「あ、お帰りなさい。頼んでいた物は売っていたかしら?」


「ええ、それは買ってきましたけど……」


 女呪術師の帰宅に気づいた女騎兵が顔を上げ、目が合った彼女は買ってきた品の入った袋を置くと、少し意外そうにしながら女騎兵の手元へ視線を向けた。


 女騎兵の目の前には、箱を開ける上でのヒントの文章やら、図や数字などが書き込まれた紙が並べられており、暫くの間、細工箱へ本気で立ち向かっていたのだという状況が見て取れる。


「ああ、これ? 今日は珍しくカリストが長めに外へ出て来るってんで、用事の無い私がこの箱の見張り役を頼まれたの。だからまあ、待ってる間に私もチャレンジしてみてるって感じ」


「はあ……。でも、後から文句を言われたりとかしないのですか? 彼、自分の私物を触られると相当嫌がりそうですけど……」


「それについては大丈夫よ。一応、確認して了承は取ってるから。むしろ彼、やれるもんならやってみろ、だけどくれぐれも壊すような真似だけはするなよって言ってたし」


 女騎兵は両手で持った細工箱のスイッチをカチカチと弄りつつ、苦笑しながら答えた。


「なるほど、それならまあ……」


「にしても、これ……軽い気持ちで取り組んでみたけど、本当にどうも出来ないわね……。もうかれこれ、一、二時間ぐらい続けてるんだけど、やっぱ私じゃ太刀打ちできそうにないかなぁ」


「もうそんなに……。でしたら、少し休憩したらどうですか? ちょうど、こんな物も買ってきましたし」


 そう言うと、女呪術師は手荷物の中から、上品なクッキーのような焼き菓子が入った箱を取り出して見せた。


「あら、美味しそう! ……でもいいの?」


「ええ、二人だけでこっそり食べちゃいましょう。コーヒーも入れますよ」


「ありがとう。じゃあ、お言葉に甘えて、疲れた頭に栄養補給させてもらおうかしら」


 それから数十分後、女子二人で談笑と共に小休憩コーヒーブレイクを終えると、女騎兵は再び細工箱の開錠作業へと取り掛かり出した。


 しかし、またしばらく経っても箱が開くことはなく、女騎兵は手を動かしつつも、目を眇めながら思わず溜息をつく。


「うーん、一向に開かない……。にしてもコレ、中に一体何が入ってるのかしら。あくまでこのサイズだから、武器とかって訳じゃないんでしょうけど……」


「いえ、一概にそうとも限りませんよ。先日のクリスタルみたいに、超古代では物品を小さくして収納する、もしくは封入する技術がありましたから、場合によっては箱より大きな何かが入っていたとしても、おかしくはありません」


「へえ、そうなんだ……。大きさや重さを度外視して持ち運びが出来るだなんて、旧文明人って途方もない魔法技術を持ってたのよねえ。……まあ、私もあの盾を実際に使ってるから、その凄さはよく分かってるんだけど」


 言いながら、女騎兵は自分が装備している超古代の武具、自在なる小盾ヒーターの性能を思い出す。


 あの盾は小型で軽量ながら、中には何百リットルと大量の液化された金属が内蔵されているが、それを現代の魔法テクノロジーで再現しようとするのはまず不可能だ。それだけでも旧文明の技術的な凄まじさというものを身を持って実感することが出来るものである。


「……実は私、眼杖ゲイザーロッドとは別にもう一つ、超古代のアイテムを持っているんです。昔からの持ち物になるんですが」


 すると、机を挟んだ女騎兵の向かい側で作業を見守りつつ、話相手になっていた女呪術師が、打ち明けるようにそんなことを呟きだした。


「えっ、そうなの?」


 その発言に女騎兵が目をしばたたかせると、女呪術師は懐からペンダントらしきものを取り出してみせた。その先端には宝石などの装飾ではなく、何やら金属製のカプセル状をした品がぶら下がっていた。


「はい。そしてこれは元々、私の故郷の隠れ里にて代々守られていたものでした。厳密には、封印されていたんですけど」


 そう言っては、中に何かを収めている容器のようにも見えるその部分を摘まみ上げると、彼女は女騎兵へよく見せるように近づける。


「しかし、私の住んでいた村は以前話したように賊の襲撃で滅ぼされて、私自身も奴隷売買の為に捕らえられました。――幸い、これに関しては地下の祭壇に隠してあったので、存在さえ知られずに済んだのですが……男剣士かれに助けられた後、しばらくして故郷の跡地へ戻った私は、唯一生き残った守り手の責務として、このアイテムを回収してきたのです」


「そんなことが……。今更だけど貴方たち二人って随分、壮絶な経験をしてきているわよね……」


「まあ、確かに色々とありました。……とはいえ、辛いことや嫌なことばかりじゃない分、私たちはまだ恵まれていると思います。何より、人との出会いとかにはですね」


「そう、そんな風に思えてるのなら良かったけど」


 優しく微笑んだ女呪術師に、女騎兵もまた同じような笑みで返した。


「……それで、そのアイテムってどんな代物なの? 旧文明人の末裔たちによる村で守ってたってくらいだから、余程な物だとは思うのだけど」


「そうですね。ちょっと詳しくは放せないのですが、簡単に言うと……極めて強力な“魔導兵器”です。ただし、一度使うと使った本人は“必ず”死にます」


「ええッ!!!?」


 突然、思いも寄らぬ物騒な内容が口に出されたことに、女騎兵は驚きから声を上げてしまった。


「ですけど、あまりに強力過ぎるので、捨てたりだとか何処かへ流す訳にもいきません。ですので、私が守り手として責任を持って所持をしているのです」


「そ、そうなんだ……。ちょっと、というかだいぶビックリしちゃった……まさか、この箱にもそんな恐ろしい何かが入ってたりとかしないわよね?」


 少し困惑しながらも、息をついて自分を落ち着かせたところで、女騎兵は今持っている目の前の箱をじっと見つめる。


「うーん、それについては何とも言い様がないですけれど……でももし、本当に開けて危険すぎる物が入っていたとしたら、事前に私の呪眼が何かしら反応すると思います。なので、少なくとも開いた途端にドカン! みたいなことにはならない筈ですけどね」


「それもそうよね……。まあ第一、開けられもしてないのに、そんなこと心配したってしょうがないんだけど。更に言えば、カリストだっていい加減、この箱を開ける作業は終わらせたいだろうし――」


 などと、肩を竦めて言いながら女騎兵は再度、手に持っている細工箱のスイッチを弄り出す。だがその直後、唐突にカキンと、何やら留め金でも外れたような甲高い音と衝撃が響いた。


「――――え? 今、カキンって……」


「ま、まさか……」


 思わず二人が顔を見合わせた後、女騎兵は手にした箱の蓋をおそるおそる持ち上げてみる。すると、今まで固く閉じていた筈の蓋部分がすんなりと開き、なんと細工箱の中身が完全に露わとなってしまった。


「ああああ、開いちゃったわ! どどど、どうしよう!?」


「お、落ち着いて下さい! ひとまず、中にどんな物が入っているのか確認すべきかと……!」


「そ、そうよね! もし危険な物とかだったら困るから、カリストが帰ってくるまでにもそれくらいはね……!」


 そう慌てて言い合うと、女騎兵は慎重に細工箱の中に入っていたものを取り出した。それは、箱の中に1ミリくらいの隙間を開けて詰め込まれていた、全体が等しく真っ黒な立方体であった。その立方体は持ってみた手応えとしてはやや重く、まるで固いゴムの塊のような手触りをしている。


「……何、この黒いキューブ? これが何なのか、全く見当もつかないんだけど……」


「ええと、多分ですけどこれ、黒いのはあくまで中身を保護する緩衝材的なものじゃないかと思います。おそらく、魔力を通しさえすれば――」


 言いながら、女呪術師は取り出された黒い物体に人差し指で触れ、その先からほんのちょっとの軽い魔力を流した。


 途端、女騎兵の手の中にあった立方体は飴細工のように一瞬で溶けたかと思うと、これまた一瞬で蒸発するように跡形も無く消え去ってしまった。そして、中身として収められていた物だけが残ったのであるが――


「「これは……ッ!!?」」


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