設定資料集㉒
《精霊神信仰》
まず作中の異世界では、あらゆる物質を構成する元素としてマナというものが存在するが、そのマナが一箇所に単一の属性且つ純度の高い状態で沢山集まった場合、精霊が発生する。
その精霊がより多くのマナを得ると能力が強まるだけでなく、自我を形成するようになるが、それが行き着くところまで行き着いた究極体が精霊神である。
精霊神は精霊であると共に神霊でもあり、彼らの意思は世界のマナそのものの意思であると同義である。そして彼ら側から直接、人類はおろか世界へと干渉してくることは殆どない。というより、おいそれとは出来ない。
彼らが限定的にでも力を振るうのは、人類側から儀式召喚された場合、もしくは何らかの条件を満たして特殊契約を結んだ者から呼びかけられた場合に絞られる。当然、誰にでも出来ることではなく気軽に行えるものでもない。因みに勇者エメルドは魔王討伐の旅の最中に、四属性の精霊神と契約して力の一部を授かった。
精霊神の本体は全て惑星の内側に留まっており、惑星そのものの存亡に関わるような事態でも起きない限り、外へ出て来ることはできない為、地上への干渉時には自身の人格と能力をコピーした複製体たる分神を作成し、それを送り込むことで活動させる。因みに活動終了後は分神が消え去った後に活動時の記憶を記録として本体側へと持ち帰る。
精霊神の存在自体は有史以来から早い段階で認知され、崇められていた。というより、ネアロペ大陸が歩んできた歴史は精霊神の存在と共にあるといっても過言ではない。逆に超古代では存在こそしていたものの、神としては扱われていなかった。リムンドゥス教が一神教なので当然といえば当然だが、せいぜい精霊のボス的な扱いに留まっていた。
因みに地上の裏側たる魔界にも精霊神は一応いるのだが、マナの流れが衰退して枯渇状態にある魔界ではかなり弱り切っているとされる。相違点として分神体の性別が地上のものと逆であったり、光の精霊神だけ消失している疑惑があったり、代わりに無の精霊神の存在が異質化した状態で確認されていたりする。
《クロスティオ教》
作中の舞台であるネアロペ大陸全域において、有史以来の数千年の渡り精霊神信仰が行われているが、その中でもダントツで普及しているのが光の精霊神クロスティオを崇めるクロスティオ教である。
そもそも精霊神信仰の教徒数自体がネアロペ大陸の全人口の半数以上であるのだが、その中でも9割以上がこのクロスティオ教にあたる。とはいえ、クロスティオ教も宗派が幾つかあり、クロスティオのみを崇めるもの、クロスティオを精霊神のリーダーとして精霊神全体を崇めるもの等がある。後者の方が一般的で前者はやや過激派扱い。
因みに他の精霊神を単独で崇めるもの、精霊神全てを等価に扱い崇めるものと他にも様々な派閥がある。ただ、精霊神以外のものを信仰しようとするのは邪教認定されることも少なくない。
余談だが何故、クロスティオだけが特別視されているかというと、光属性魔法に回復、治癒、浄化といった効果のものが多い為、それらが神聖魔法として区分されている事が由来として大きい。
ただし、信奉者が他の追随を許さぬ多さにも関わらず、精霊神の中でクロスティオは最も召喚に応じにくい精霊神とされる。第一、信者の数が精霊神の能力の増加に繋がることはない(本物の神であるメレシュタリカと違って、あくまで神霊級の精霊に過ぎない為)。
《八柱の精霊神》
精霊神は通常の精霊と同様、マナの各属性ごとに存在する。故に全員で八柱とされるが、その中で無属性を司るゼロノスのみが直接観測された記録が無く、あくまで存在するだろうと仮定された精霊神である。
彼らは儀式召喚や瞬間契約などによって人類に呼び出された際、人との意思疎通を円滑にする為に人に近い姿で顕現する。ただし、超古代以前にいたメレシュタリカの七分神のように、真の姿たる神体のようなものは持たない。
【イグニア】
火の精霊神。人間体の性別は女性。
アマゾネスを彷彿とさせる筋骨隆々で男勝りな女戦士といった風貌と性格。とにかく苛烈だが、割と面倒見の良い姉御肌。
人類に対しては中立に接するスタイルで社会的秩序などに興味はなく、あくまで個人を気に入ったかどうかで力を貸す。
自分に認められたければ、兎にも角にも覚悟と実力を示せといった方針で、試練は厳しくはあるが単純明快。乗り越えられこそすれば非常に頼もしい。
【アクアエリス】
水の精霊神。人間体の性別は女性。
何処かの王妃を想わせる、凛々しくも淑やかな気品ある佇まいの人物。精霊神の中ではこちらが誠実な態度でいる分には話が穏便に済みやすい。
人類には比較的にはあるが友好的。余程の不興を買うような対応の仕方をしない限りは、ある程度までは会話に応じてくれる。
ただし、試練となるとけして甘くはない。一見、危険でなさそうなものに油断をしない慎重さが求められる。
【エルメレス】
風の精霊神。人間体の性別は男性。
理知的だが常に顔を顰めている、インテリっぽい長身痩躯の男。非常に気難しい性分で小言や皮肉も多く、和やかに会話を進めることは難しい。
そもそもが人類に対して少々否定的であり、呼び出した相手へ何とも鬱陶しそうに接する。仮に気に入られたとしても、素直じゃないのでコミュニケーションを取るのがかなり面倒。
試練を与える場合は、実に意地悪で頭脳を求められる問題を課す。まず力推しでの突破は叶わない。
【ロックガイナ】
土の精霊神。人間体の性別は男性。
全身マッチョで口髭が特徴的な偉丈夫。某ア〇ムストロングのような見た目。豪快で喧しいが、意外と話の解る男。
人類にはなかなかに友好的で、露骨に敵意を向けない限りは割と相手の意を汲んでくれる。それでも真っ向勝負だとか威勢の良い戦士が好みではあるが。
試練はイグニア同様、分かりやすく胆力を示させるスタイル。しかし彼の場合は、忍耐強さや不屈の精神なども重視している。
【ヴァリエル】
雷の精霊神。人間体の性別は女性。
長い金髪を棚引かせる、一見すると高飛車そうな娼婦らしい姿。勝気且つ傲慢で常に上から目線。
人類には最も否定的で、少しでも気に障ると何をしでかされるか判らない。もし認められたとしても、けして油断は出来ない。因みに勇者は接触こそ成し遂げたものの、契約を得るには至らなかった。
試練はあまりに理不尽で、そもそも合格させる気が無い。そういったものを乗り越えてこそ、自分の力を授かるに相応しいと考えている。
【クロスティオ】
光の精霊神。人間体の性別は中性。
白く艶やかな長髪を伸ばした、男にも女にも子供にも大人にも見える人物。温和にもクールにも見えるし、微笑んでるようにも無表情にも思える、正直よく分からない人物。
人類に対しては中立的……というよりは無関心に近い。性格的にもあまりに機械的であり、誰が話しかけても対応に困るとされる。それでもネアロペ大陸で最も人気な精霊神である。
試練は肉体の力でも頭脳の良さでもなく、何より精神的な強さが必要とされる。勇者エメルドの呼びかけには残念ながら応えてくれなかった。
【ダースアイ】
闇の精霊神。人間体の性別は男性。
紫の髪を足元まで伸ばした、病弱に思える白い肌にクマのある淀んだ目つきの暗い青年。クロスティオが一番人気の精霊神なら、ダースアイは最も不人気な精霊神である。
しかし意外と人類には否定的でなく、あくまで中立のスタンス。無口であまり多くは語らないが、よく聞いて対応すれば話せないことはない。むしろ、我の強い他の精霊神より話しやすいまである。
試練は人によっては簡単だったり難しかったりする。心の闇や恐怖に向き合う内容。因みに勇者エメルドは彼に出会える場所へ行けていない。
【ゼロノス】
無の精霊神。人間体の性別は不明。
精霊神の中で唯一、召喚成功の実績や観測例が全く無い。いるとされているだけの精霊神。宗派によっては、そもそもいないとしているものもいる。
魔界の方には、マナ汚染の影響で精霊から怪獣的存在へと変異してしまったゼロノスがいるとされる。
《マナロット》
ネアロペ大陸の国々では非常にポピュラーな遊戯や占い用のカード。元は各属性の元素を由来としていたが、現代ではその化身たる精霊神と結び付けられている。主にクロスティオ教が世界的に普及したことによる影響。
文化圏によって枚数や種類等に多少の差異はあるが、基本的には八柱の精霊神が描かれたカードが三枚ずつの計24枚で1セットといった具合。占い方も多種多様だが、最もオーソドックスで手軽なのはシャッフルされた山札から三枚を選び取り、その内容と順番から結果を読み取るというもの。つまりは作中で綾美が行った形式である。
因みに上記のやり方にも旧式と十字教式の二通りがある。旧式は全ての精霊神が同列だが、十字教式では明らかな序列が決められている。勿論、一番上はクロスティオ。謎の女詩人が綾美を占ったのは後者の十字教式。
《レヴォン諸島の疑似精霊》
レヴォン諸島における四つの島の各巫覡の家系はそれぞれ、各島で取れる特産の輝石から作った召喚アイテムによって疑似精霊を呼び出し、操る術を有する。
この疑似精霊は通常の四大精霊であるサラマンダー、ウンディーネ、シルフ、ノームを彼らに伝わる降霊術等を用いて独自にアレンジしたもの。因みに神器と違い、当代の巫覡以外に元巫覡だった者も扱える。
その実体はいうなれば、近距離パワー型のス〇ンドのようなもの。疑似精霊自体に自我はなく、術者からあまり遠くへ移動させることも出来ない。使い道としては作中で半獣の巫女が行ったように、召喚した精霊の魔力を“装備”する形で行使する。
得られる能力もまた様々で身体機能の強化、各属性のマナバリアによるダメージカット、特殊移動能力の付与、魔力、魔法攻撃力、魔法防御力、魔法耐性等の増強、対応属性攻撃の追加ダメージ発生と多義に渡る。
因みに実際の運用可能時間は召喚用輝石の魔力が満タンの状態でせいぜい2、3分程度。ただ存在させておくだけならば10分くらいは可能である。
更に余談だが、この疑似精霊の構築技術はアルテラス神が各島の巫覡の家系へ伝えたものにして、元々はアイリスムーンで研究されていた召喚魔法でもある。厳密には精霊を模したゴーレムもといマリオネットといったところ。
※それぞれ対応した疑似精霊の種類は以下の通り。
火の疑似精霊フィアンドラ 使用者:エルフの巫女(ノクターナル島の巫覡)
水の疑似精霊ヴォーダイン 使用者:ドワーフの覡(ブリンスタン島の巫覡)
風の疑似精霊シルヴィント 使用者:半獣の巫女(ハーメルーナ島の巫覡)
土の疑似精霊テラグノース 使用者:竜人の覡(ライトリード島の巫覡)
《レヴォン諸島の輝石》
レヴォン諸島の四つの島ではそれぞれ、各島でしか取れない固有の輝石が存在する。この輝石は上記の疑似精霊の召喚用アイテムだけでなく、島の導師らの魔道具用の素材、はたまたネアロペ大陸側の者が本来、レヴォン諸島へ渡って活動する為に必要な“証”にも用いられている。
元々は超古代において、アイリスムーンの研究施設があったサングイネア島のみでしか取れない魔石、メタモライトが研究施設消滅時のワイルドサージによる影響で変質したもの。自動的に各々対応した属性のマナを吸収し、そこから内部でその魔力を増幅させて溜めこむ性質がある。
※各島で取れる特産の輝石は以下の通り。
ハーメルーナ島:ベリライト(風属性のマナを溜める、白い縞模様のある蛍石のような輝石)
ノクターナル島:スピネライト(火属性のマナを溜める、淡い紅色の輝石)
ブリンスタン島:ゾーダライト(水属性のマナを溜める、黒ずんだ瑠璃色の輝石)
ライトリード島:レファスライト(土属性のマナを溜める、青い斑点の浮かんだ黄褐色の輝石)




