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道具使いの学園戦記~勘違いから始まる物語~  作者: 泡漢
第三章 勘違いヒーロー
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闘争心

 火恋に告げられた、学園最強の序列1位が対戦相手だと。

 自分の目で見るまでは信じられない。そう思って確かめに行ったら本当だった。27位VS1位。それだけならまだしも、その前に4位VS2位――――つまりクリスと神奈の勝負。これまたどデカい一戦が控えていた。おかげで今日の観客席は大賑わいだった。


「はぁ……」


 ため息を漏らすのはクリス。肩を落とし、弱弱しい表情を曝け出していた。


「まーたため息かよ。もっとシャキっとしろよシャキっと」


 そんなクリスに説教を垂れるのは来人。いつもと逆の構図が出来上がっていた。


「……どうして来人はそんなにそんなに落ち着いていられるのよ?」


 言われてみて初めて気付く。来人は自分でも驚くほど落ち着いていることに。

 最初、対戦カードが判明した時は声を出して驚いていた。だが、時間が経つにつれてどんどん冷静になっていく。

 最強の一位と戦うというのに、緊張も恐怖も感じなかった。


「へっ。この俺サマを誰だと思ってやがる。1位にビビるようなタマじゃないっての。むしろ1位なんざ軽くひねりつぶしてやるぜ!だっはっはっは!」


 かつて隣でため息をつく少女に本気でビビっていた男のものとは思えない台詞。

 得意げに言ってみたが、もちろん冗談のつもりだ。


「強いのね。来人は。私なんか……」

「おいおい!そこは”調子に乗らない!”って突っ込むとこだろ?ったく、ホント今日は調子狂うなー」


 困り果てる。対戦カードが発表されてからずっとこうだ。


「らしくねーな。臆病な自分てめえとはオサラバしたんじゃなかったのかよ?立派なもん持ってんだから、もっと胸を張れ胸を――あ痛ーッ!?」


 思い切り足を踏まれ、悲鳴を上げる。


「何しやがんだテメェ!」

「それはこっちのセリフ!セクハラよ!」

「はぁ!?俺はただお前を焚き付けようとしただけだぞ!?それなのにセクハラ扱いとは心外だぜ!?」

「嘘つきなさい!明らかにセクハラ発言してるじゃない!り、立派なモノって!」


 顔を真っ赤にするクリスと、八重歯を鋭く光らせて怒鳴り散らす来人。


「あぁん?俺それ、”立派な能力”的な意味で言ったんすけどー!?すんませーん!お巡りさーん!痴女です!痴女が居まーす!!」

「きゃあああ!?や、やめなさいよ馬鹿ぁ!?」


 ヒートアップし、立ち上がって喚く来人を止めるクリス。

 しかし、以外にも来人はあっさり静まり、その場にすとんと座りなおした。


「く、来人?」

「ちったぁ緊張解れましたかよ?」

「!!」

 

 それまで感じていた重圧がスッと無くなっていた。

 いつもと同じ自分を取り戻していた。


「ようやくいつもの調子に戻ったな。確かにあの会長と戦うのに緊張するなってのも無理な話だけど、いくらなんでも緊張しすぎだっての」

「会長と戦うだけならよかったんだけどね……」

「?」


 視線を逸らすクリス。その視線の先がどこに向かっているのか辿ってみると、明らかに学生ではない人影がチラホラ確認出来る。


「なんだありゃ?」

「プロのスカウトだったり、各種報道機関だったり」

「ふーん。だから緊張してたと」

「まあ、そんなところね。……ここで無様な戦いをして、お父様やお兄様に失望されたくない。そう考えてたら、なんだか緊張しちゃって」


 おまけに相手は既にスカウトからのお声がかかっているという噂の神奈だ。

 ここで緊張するのも無理はなかった。


「で、今はどうなんだ?」

「大丈夫。来人のおかげでだいぶ和らいだ。まだ少し緊張してるけど、これなら全力を出し尽くすことが出来るわ!」


 すっかり調子を取り戻したクリスを見て一安心する。

 一安心したためか、ふとある疑問を抱く。話の流れをぶった切るような、突拍子も無い疑問を。


「あのさ、この前聞きそびれたけどさ。1位ってどんな超能力使うんだ?」


 4位のクリスと3位の火恋を遥かに上回ると言われるのが2位の神奈。それをさらに凌ぐ力を持つ、1位の能力。

 事前に知って対策を立てておきたいと言うよりは、純粋な好奇心からその正体を知りたかった。


「えっ?……どんな超能力か、って説明するのはなかなか難しいわね」


 言葉の表す通り、難しい顔をしてみせる。

 ますます好奇心が燻られる。


「気にな……戦う前に知っておきたいんだ。頼む!」

「うーん。うまく伝わるかは分からないけど……」


 なんとか誤魔化せた。まあ、別に好奇心からでもよかったかもしれないが。なんとなく誤魔化してみせた。


「《創造主ザ・クリエイター》。それが彼女の通名であり、能力名でもあるわ」







『選手入場、お願いしまーす!!』


 折原美月の実況のもと、両者ともに入場する。

 一方で、この戦いに参加する真島火恋は億劫になっていた。


『その炎ですべてを焼き尽くす!彼女の前に立って無事だった奴はいない!序列三位!《炎皇イフリート》、真島火恋選手!!』

(あーあー。いまいち乗らないなー)


 歓声に包まれているのにも関わらず、火恋の気持ちは全く高揚せずにいた。

 理由はいたって単純。クリスは2位の神奈と、来人は1位と戦うというのに自分は43位と戦うから。

 出来れば強い相手と戦いたかった。自分の後にある大勝負の踏み台になるのが心底嫌だった。

 特に次の勝負がクリスVS神奈だったから尚更だった。


(さっさと終わらせよ)


 すっかり気を落としていた火恋。だがその耳に、面白い話が転がり込んできた。


『対するは序列43位!いつになったらその能力を見せるのか!?大剣一本で戦場を切り開く女豪傑!西東優真!!』

(あん?確かコイツは……)


 火恋は目の前の少女のことを少しだが知っていた。西東優真。未だにその能力を見せない能力不詳の少女。大剣一本を軽々と振り回す、無頼ぶらい学園に行った方が良かったのではないかと言いたくなるような戦闘スタイルの持ち主。

  

「へぇ。火恋の相手って優真だったのか」

「え?知り合いなの?」

「まあな。生徒会に無理やり入れられた時に知り合った」


 まさかの知り合い同士の戦い。

 しかし、火恋の恐ろしさを身をもって知っている来人はこの勝負は優真には酷だなと思っていた。

 一応見知った顔だ。あまり大きなケガがなければいいなとぼんやり願った。


(どうせ使いどころが限られるピーキーな能力だったりするんだろ。あるいは戦闘中に使う意義の無い能力とか)


 少し面白いと思ったが、すぐに落胆。

 さっさと終わらせるという考えには変化は無かった。


「ねぇ」

「え?な、なんでしょうか?」


 一応同世代なのに遜る。火恋を前にして、優真はすっかり気圧されていた。


「アタシは手加減の仕方がいまいち苦手なんだ。ケガしても文句なしな」

「あはは……お、お手柔らかに……」


 会話を終え、互いに位置につく。

 気怠そうに構える火恋と、緊張で顔を強張らせる優真。

 対照的な態度をとる二人の勝負が、今始まろうとしていた。


「戦闘開始ッ!!」

『さあさあ始まり――――』


 戦闘開始のゴングが鳴らされた――――直後。

 火恋の体を、業火が包み込む。業火はどんどん広がっていき、おぞましい激しさとともに会場の温度を一気に上げた。


『ま、真島選手、いきなり全力ですッ!全力すぎて私のいる実況席まで滅茶苦茶熱くなっております!!』

「全力すぎだろ!?死ぬだろこれ!?何考えてんだあの不良女――――あっつ!?おいコラ!なんか俺の方目がけて火の粉が飛んできたんだけど!?ワザとだよな!?ぜってーにワザとだよな!?」


 炎は衰えるどころか勢いを増す。やがて大きな火柱となり、《火竜ノ太刀サラマンダー》を核として渦巻く。


「う……嘘ぉ!?」

「安心しな。殺しはしないから」

「いやいや!それでも大怪我は免れないけど!?」

「まあ、ちょっと火傷するかもね」

「火傷で済めばマシな方ですよね!?」


 逃げ場などない。そのことを優真は理解していた。


「あーもうごちゃごちゃうるさい!食らいたくなかったらどうにかしてみろっての!!」

「そんな殺生な~!」


 涙目で訴えるも、火恋は意に介さない。

 一撃で決める。その考えは揺るがなかった。


「劫火滅却ッ!!」


 渦巻く火柱を、《火竜ノ太刀》ごと振り落とす。

 右も左も、逃げ場などない。誰もが勝敗より優真の身を案じていた。

 だがそれは、すぐにいらぬ心配となった。


「こうなったら――――!!」


 対抗するように、大剣を振るう。

 それと同時――――まるで何かによって炎が削がれた・・・・・・ように、炎が優真の周りを避けその左右の大地のみを焦がした。


(なんだ……!?一体何をしやがった!?)


 あまりに不自然すぎる現象に、観客だけでなく火恋でさえ何が起こったのか理解できなかった。だが――――


(……なるほど。まだこんな掘り出し物・・・・・が残っていたとはね。面白れぇ。その能力とやらを意地でも引き出させてやる!)


 ニヤリ。不敵な笑みを浮かべる。火恋の中の危ないスイッチが入ってしまい、億劫さはどこかへ消え去っていた。

 代わりに芽生えたのは――――強い相手を渇望する、純粋で凶暴な闘争心だった。


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