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道具使いの学園戦記~勘違いから始まる物語~  作者: 泡漢
第三章 勘違いヒーロー
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次の戦いへ

 勝者は優遇され、敗者は冷遇される。

 たとえ敗者が高位の序列所持者ランカーだとしても、負ければ容赦なく落とされる。

 その逆も然り。どれだけ低位の序列所持者でも、勝てば上に行ける。

 それがこの覇道学園のルール。覇道学園で生き残るためには、勝つしかない。


 その生存競争に敗れた者の影が一つ。夕日を背に虚ろな目をする少女。

 決して弱くはなかった。相手が悪かっただけだった。そう思っていた。

 しかし現実は非情だった。格下相手に敗北。もう相手が悪かったなどという言い訳は通じない。

 この敗北は重かった。今まで積み上げてきたものがすべて崩れ去ってしまった。これから先の道が見えなくなっていた。生きる意味すら無くなっていた。


 少女の眼下に、朱雀の街並みが広がる。

 陽が傾き、街灯がポツポツと照っていく。

 だというのに、自分の足元は真っ暗。奥底まで何も見えない奈落。まるでこれからの自分の人生のよう。


 もう光なんて見えない。闇の中で人生に終止符ピリオドうつしかない。少女は異世界で無双する来世に思いを馳せながら、闇の中にその身を投じた。


 ◆



 序列入れ替え戦三日目の朝。

 いつもの如く来人とクリスは肩を並べて歩いていた。


「あーめんどくせー。なんでまたやんなきゃいけねーんだよー」


 ぐでーっとしただらしない表情で愚痴る来人。

 今日ここに来た理由は、次の対戦カードが発表されるためだ。


「一週間もあるんだから当然でしょ。一回で終わるなら一週間もいらないし、こんな詰め込んだ日程にもしないわよ」


 クリスから昨日告げられたこと。勝者はあと最低一回は戦わねばならないということ。

 評価されない生徒が出るということをなくすため、なるべく戦う回数を増やして、実力の正確な尺度を測る。という方針だ。

 逆に敗者はもう終わり。敗者は負けた時点で評価に値しないという覇道学園の考えが顕著に現れていた。


「っつてもな~なんかめんどくさ~い」

「グダグダ言わないの!次の勝負も本気で挑むこと!分かった!?」

「へいへい。ほどほどに頑張りま――――あれ?」


 校門に見知らぬ人だかりを見つける。

 アレが一体何かとクリスに聞こうとした時、クリスが露骨に嫌そうな顔をしていることに気付いた。


「クリス、あれ知り合いか?」

「ううん。ただのマスコミよ。……ごめん来人。私はちょっと遠回りするから!」


 校門を前にして、クリスは来人とは別の道を駆けていった。

 そこで思い出す。一応クリスが一国の王女であることを。


(なーるほどねぇ。マスコミに捕まったら大変ってやつか)


 王女というのも大変なんだなぁと他人事のように思いながら、ある疑問を抱いた。

 そもそもこのマスコミ、誰を待ち構えているんだろう?という疑問。

 そりゃクリスの可能性もあり得るが、実は他の人なんじゃないか?

 今話題の人物と言えば、どん底のF組から頂点のA組まで華麗に駆け上ってきた新城来人とか。

 あの序列ランク四位《雷帝ザ・ライトニング》見事に勝利した新城来人とか。

 あの序列三位《炎皇イフリート》に激戦の末勝利した新城来人とか。

 と、脳内で実は自分を待っているんじゃないか?という冗談を飛ばしながら、校門の方へどんどん近づいていく。 


「! 来た!!」

(あれ!?マジで俺だった!?)


 脳内で冗談で考えていたことが現実になった。マスコミが来人の方に向かって群れ成して近づいていく。

 このままでは有名人だ。有名人になればファンもついて、滅茶苦茶モテるんじゃないか?顔は悪くないし!と、自分の中で有名になる=モテるという根拠のないの等式を作り上げていた。


「いやあ困っちゃうな〜!俺だって今日は試合があるかもしれねーのによ〜!出来るだけ、長くならないように頼みますぜ☆」


 完全に浮かれきった来人。ちゃっかりキメ顔でウィンクしてポーズまで取る。

 だが、無情にもそんな来人をマスコミは完全無視していく。


「あ、あれ?」


 後ろを振り向く。マスコミに囲まれた、緑髪の背の低い女の子の姿を確認した。


「俺じゃねーのかよッ!?」


 自分の方に向かってきてると思ったから自分だと思って取材に応じる気満々だったのに、この仕打ち。

 あんまりだ。吠えることをせずにはいられなかった。完全に来人の勘違いなのだが。


「くっそ!ややこしいんだよ!あーあーもうマスコミ嫌いになった!俺が活躍してもぜってーに取材に応じないからなッ!」


 完全に逆恨み。どうしようもない馬鹿である。

 こんなどうしようもない馬鹿を冷ややかに見る目が一つ、来人のすぐ目の前にあった。


「……何やってんのアンタ」

「おお火恋!丁度いいところに!なあなあ聞いてくれよ!あんにゃろーども、ややこしい真似をしやがったんだ!」

「見てたから分かるっつの。てかアンタの一方的な勘違いだろ」

「なにおう!」


 ちょっとムキになってみせたが、すぐに冷静になる。

 火恋の言う通りだ。ちょっと調子に乗りすぎた。


「つーかさ、あのちっこい女の子何者なんだ?」


 マスコミが一目散に向かっていった少女。

 顔はまだ幼さを感じさせ、身長もそれ相応。とても凄そうには見えなかった。


「知らねーのか?昨日、一位の記録を塗り替えて最年少で《|天上の者》入りを果たしたスーパールーキー。新序列7位の《人魚姫リトルマーメイド》。中等部2年の水上みなかみ時雨しぐれだ」

「ふーん……」

「なんだ?ずいぶんと興味無さそうに見えるけど」

「その通り。興味なんざねーよー」

「アンタねぇ……」


 自分から聞いてきたくせに、あまりに無関心な来人に火恋は心底呆れていた。


「だってどう凄いのか分からねーんだもん」

「アンタには一生分からねーよ。しかし元7位の人は気の毒だな」

「そりゃそうだ。せっかく7位だったのに落とされちゃたまったもんじゃねーや」


 件のスーパールーキー時雨は元々10位以内ではない。

 その時雨に負けてしまったのだ。負けてしまったからには序列が入れ替わる。《天上の者》から外されてしまったショックは計り知れないだろう。


「それだけだったらまだ良かったんだがな……」

「あん?どういうこった?」


 火恋らしくもない、暗い表情。

 火恋がこんな顔をするのは本当に似合わない。そう思いながらも耳を傾ける。


「あの人は実力はあった。けど、本当に運が無かった。前回の入替戦で当たった相手が1位と2位で2連敗。そして今回の敗北で……」

「3連敗……ってことは、序列剥奪!?」


 苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ、火恋は無言で頷いた。


「う、嘘だろ!?いくらなんでもそんなことって……曲がりなりにも元《天上の者》なんだし、何も剥奪までしなくたって……」

「アタシもそう思うさ。けど、それを許さないのがこの覇道学園のやり方。敗者は徹底的に切り捨てられる」

「……でも、まだチャンスはあるんだろ?」

「あの人が2年生ならね。でもあの人はもう3年生だ。アンタみたいに、よっぽどのことがなければ再序列入りなんて出来ないよ」


 よっぽどのこと。その言葉が胸に深く突き刺さり、何も言えなくなる。

 自分は本当に運が良すぎただけなんだと、改めて実感する。そんな運だけで今の地位を手にした自分が、次の戦いを負けてもいいやという気持ちで臨んでいいわけがない。


「これでも昔よりはまともになってるらしいけどね。なんせ理事長がなかなか過激な人らしくて、昔は1度でも負けたら終わりだったとか。今はこうして色んな人の意見も入ってきて、その一つの例として3連敗っていう条件が与えらてるわけだしさ」

「……なるほどな。俺も頑張らなきゃいけないってわけか。手ェ抜いたりしたら、本気でやってる奴らに失礼だぜ」

「なんだよ急に。気持ち悪いな。つーかアンタ、手ェ抜く気でいたわけ?」

「気持ち悪いは余計だ。まあ、正直言って乗り気じゃなかったよ。けど……おかげ目が覚めたぜ!」

「……変な奴」


 特に叱咤した訳でもないのにやる気のスイッチが入ってしまった来人をジトっとした目で見る。暑苦しいったらありゃしない。


「よっしゃー!やってやるぜ!1位だろうが2位だろうが絶対に倒す!」

「へぇ。1位を倒しちゃうんだ」

「おうよ!1位だろうとボッコボコにしてやんよ!」


 シュッシュッと口で言いながら、その場でシャドーボクシングしてみせる。


「アンタさぁ、次の対戦カード見た?」

「あん?まだ見てねーに決まってんだろ。学校に来たばっかなんだからよォ」

「じゃあさ。アタシが教えてやるよ。アンタの対戦相手。アンタの今の序列、27位だったよね?」

「確かそうだったけど……」


 一応確かめようと昨日更新したばかりの序列札ランクカードを確かめる。銀のカードにデカデカとNO.27と書かれていた。


「間違いなく27だぜ」

「へぇ。そっか。やっぱり27位だったんだ〜」

「な、なんだよ?」


 ニヤニヤと小悪魔のような笑みを浮かべる。

 そのあからさまに嫌らしい態度に、次第に嫌な予感が高まっていく。


「アンタの対戦相手、1位だから。倒すって言ったよね?頑張ってね〜」

「……え?」


 火恋は言うだけ言い残したあと、手をフリフリと振りながら軽い足取りでその場を後にした。


「えぇえええぇぇーーーッ!?」


 27位対1位。衝撃の対戦カード。

 その衝撃は声となり、天空都市《朱雀》に響き渡った

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