表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/24

番外編:シリルが見た光景

1章完結記念の番外編です!

※主人公はシリルです。

ある日の夜のこと。


静寂が城全体を深く包み込む時間帯。


「ん~やっぱり寝れないなぁ.....そうだ! お母様まだお仕事してると思うから、執務室で本を読んでもらおうっと!」


ベッドの中で目を冴えさせていた五歳のシリルは、パッと布団を跳ね上げると、お気に入りの絵本を胸に抱えて元気よく自室を飛び出した。



静まり返った長い廊下を、小さな足音を忍ばせながらパタパタと進んでいく。


母のいる執務室の前に差し掛かると、ドアの隙間から溢れ出る温かな光が目に入った。


「おっ! やっぱりまだ明かりついてる。よかった」


シリルは嬉しそうに小さな顔をほころばせ、そのまま勢いよく扉を開けようとした。

――しかし、その小さな手がドアノブに触れる直前、部屋の中からかすかな音が漏れ聞こえてきた。


「ぐっす、ひっく.....」


それは、普段は気高く優しく、いつだって笑顔で自分を包み込んでくれる大好きな母の泣く声だった。


「え?? お母......」


息を呑み、そっと扉の隙間から中を覗き込んだシリルが目にした光景――それは、信じがたい姿だった。


部屋の中で灯された明かりの下、オフィーリアが一人、机に突っ伏して肩を激しく震わせ、ボロボロと涙を溢れさせて泣いていたのだ。


「あぁ、どうしてっ......アルとエマはっ!」


オフィーリアはただ一人執務室で泣いていた。


誰もいない部屋で、押し殺していた感情が耐え切れずに溢れ出したかのように、顔を覆って慟哭している。


「嫌よ、! 嫌だ......私のお腹を痛めて産んだ子供なのに、どうしてっ私よりも長く生きられないの?! あぁぁぁ~!!!!」


オフィーリアは顔がぐしゃぐしゃになっていた。


女王としての威厳もなくただの母親として、まだ一歳半になったばかりの幼い双子の我が子に突きつけられた残酷すぎる短命の運命に打ちひしがれていた。


「私の命だってあげる! だから、だから! アルとエマを助けて! お願いよ! ......なぜっ! どうして? アルとエマなのかしらっ? あの子たちは何も知らないのに、まだたくさん遊んで笑って楽しく暮らすはずだったのに!!!」


母の叫びにも似た胸を刺すような絶望の言葉を聞いて、扉の外に立つシリルはすべてを悟り、ハッと気づいた。


(そうか。お母様もアルとエマを失うのが怖いんだ。苦しいんだ。でもね、お母様! それは僕も同じだし、よくわかるよ。僕だって嫌だよ......怖いよ?)


母の深い深い愛と悲しみを知ったシリルは、そっと扉から手を離すと、静かに執務室の扉に背中を合わせて座り込んだ。


冷たい床の感触を感じながら、抱え込んできた絵本を小さな両手でぎゅっと胸の前に抱きしめる。


(お母様......僕がちゃんと可愛い弟妹をまもるから大丈夫だよ! 僕はなんたって、兄なんだからね!)


母の悲痛な涙を二度と流させないために。


そして、まだよちよち歩きの一歳半の愛おしい弟妹が、たくさんの笑顔と喜びに満ちた未来を歩めるように。


シリルは胸の中で固く固く誓いを立てた。


シリルはぎゅっと本を握りしめた。


(約束だよ! あっでも僕自身にかな? ふふっ!)


少し照れるように、一人で可笑しそうに小さく笑った。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

今回はシリル視点の番外編でした。

少しでも楽しんでいただけたり、シリルやオフィーリアの思いが伝わっていたら嬉しいです。

番外編を読み「面白い!」「泣ける!」「好き!」と感じていただけましたらぜひ【ブックマーク】や【評価★★★★★】で応援してくださると幸いです。(執筆の励みになります!)

今後とも本作をよろしくお願いいたします!

次は2章です。明日の20:10に更新です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ