8.家庭裁判所への道 過去編
半年ぐらいをかけて、過去の資料を集め、二度の結婚と二度の離婚の戸籍謄本、除籍謄本を集め、長い長い物語を書いて、追加の資料も提出し、面談もして、最後の審判で、「棄却」された。
まさに、ぼろのチョン。
その時に、「姓の変更」というのは、戸籍制度の根幹に関わるものであり、滅多に変更されることはない、と言われた。
今の時点で唯一認められた一件は、75歳になる踊りの家元で、子供も親戚もない天涯孤独な身、長い年月芸名を使い続けた結果、姓の変更が認められたそうだ。
まさか、自分がここまで「姓の変更」を思い詰めていたとは、自分でも知らなかったほど、衝撃を受け、思わず号泣してしまった。
「それでは、『牧野』か『槙野』という人と結婚するしかないということですね」と悔し紛れに言えば、その通りらしかった。
ありゃりゃりゃりゃ~。
この時の衝撃は、予想以上に大きく、「己のみの都合」とか、「ただの感情論」と手厳しかった。
これが数えてみれば、30年前のできごと。
離婚に際して、自分が「襷原」という名前を選択したのは、子供たちのためだったが、そんなことは、何の考慮もしてもらえなかった。
それから、もう30年も過ぎたのか、と感慨は深い。
知り合いの(と言っても、年賀状だけの付き合いだが)弁護士さんに、メールで相談してみれば、弁護士三名の前で、事情を説明し、一人ずつに1万5千円払う、という話になり、ただ単に、家裁まで行くのが億劫なだけだった私(丸投げしてしまうつもりだった……)、「この件は、忘れてください」と平謝りに謝った。
(弁護料が、どれだけ高いかを知ってはいなかったし。ま、向こうも、タダだと思われたら困ると思ったのだろうし……)
弁護士さん達は、私のファン様であっただけで、そんな一人にそっと相談するならともかく、弁護士事務所で三人の前で、私の秘密を話すなんて、家庭裁判所に出かけた方が、マシだと思えた。
「名前を変えなければならない、特別な事情」を聞かれたが、そんなものはない。
ただ、以前家裁で言われた、「感情的にイヤ」なだけだし、あれやこれやと面倒臭い時代になっているのが、大変なだけだった。
突破口を開いたのは、またも、スマホのAIさんだった。
今の時代、裁判所まで申請に出向かなくても、申請書をダウンロードして、役所で必要な書類は取り寄せられる、収入印紙や必要な切手は郵便局で買えばいい。
そうなの~~?
本籍地まで行かなくていいの~~?
裁判所まで行かなくていいの~~?
めちゃ、楽じゃないの~。




