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名前をください  作者: まきの・えり


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5/11

5.真正ストーカー登場


 私が働いていた男女同一賃金の会社と言うのは、百貨店であった。今では無くなってしまった某デパートメントストアである。前年にオープンする予定だったところ、放火によって、死傷者が出たせいで、出店が一年延期されたらしかった。そういう話は入社してから聞いたもので、それまでは全然何の知識もなかった私である。社長になるまで働きますなら、少しはミニ知識を仕入れた方がいいように思うが、そこは、フレーズが先に来る人間である。無理を言っても仕方が無い。


 さて、ここに、本物のストーカーが登場する。私などは、雑魚である。

 社長になるまで働きます、と述べたらしい私であるが、入社した時の姓は、結婚していた時のものであった。まだ、離婚は成立していない時期である。


 ややこしい話である。離婚が成立したら、その瞬間から女性は、また姓が変更される。

 男性は何回離婚しようが、姓が変わるわけではないので、平気だろうが、女性は見ず知らずの人にまで、姓が変わったことを宣言する羽目になる。

「〇〇さん、離婚したんだってね」と噂の的にもなる。


(またまた、結婚した姓は立派なもので、言いやすいが書きにくい姓である)


 私の職場は「高級雑貨」と呼ばれる、普通の人は滅多に足を踏み入れない、人通りの少ない売り場であった。その中央部に、照明で光り輝く場所があり、そこに私はいたのである。

 光り輝いていようが、埃はたまるし、手垢もつく。それをせっせせっせと清掃するのが、仕事と言えば仕事であった。同じ売り場には、すっかり身も心も天に昇ってしまっている女性と、大阪弁丸出しの男性がいた。

 売り場の隣には画廊があり、向かいには、宝飾品売り場があった。

 真正ストーカーは、その暗い宝飾品売り場から、光り輝く磁器や陶器の売り場を眺めていたらしい。

 後で聞くところによれば、新入社員の履歴書などは、閲覧自由。プライバシー保護の概念など、男女同一賃金の会社には無かった模様である。

 私が離婚係争中であることや、子供を病気で亡くしていることまで、周知の事実であったらしい。


 ニコニコと輝く職場で働いていたが、大卒だということで、高卒の係長よりも給与が高く、係長が内心、非常に不愉快に思っていたことや、宝飾品売り場からの歪んだ視線にも気がついていない、幸せな時期の私だった。


 ストーカーの三原則

1.思い込んだら、事実となる。

2.相手は喜んでいる。

3.何をしても許される。


 アイザック・アシモフのロボットの三原則のようなもので、大抵のストーカーに適用される。



 

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