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名前をください  作者: まきの・えり


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4/11

4.ストーカー登場


 結婚したいと思った訳でも、別れたいと思った訳でもないのに、私は物置みたいな2畳の部屋に、荷物と共に閉じ込められることになった。

 毎日ネチネチと虐められる日々の間に、私は求人募集の記事を見るようになった。

「男女同一賃金」という文字が目に飛び込んでくる。それは、凄い話だ。

 もっと凄いのは、働きたくもないし、結婚したくもなかった私が、「男女同一賃金」というフレーズに、引き寄せられたというところだ。

 とどのつまり、物置に閉じ込められているのは、私の手に職が無かったせいなのだ。

 自分で自分を養うことができなかったお陰で、ポイと結婚させられて、ポイと捨てられたという訳なのだ。

 しかも、物置にいるのも、母親に虐められているのも、私に甲斐性が無かったせいなのだ。

 わかりました、働きましょう、と私は思った。

 根が単純なので、踊らされやすいのである。というより、勝手に踊りやすいのである。

 

 という訳で、「社長になるまで働きます!」と単純な私は、本気になって面接で言った。

 社長になるまで働きます、というフレーズは、私が辞めるまで、または辞めた後までも、会社中を駆け巡ったらしかった。


 世界は、特に「男女同一賃金」をうたう会社という世界は、私の目には輝いて見えた。

 私は、中学高校と女子高出身者であり、「うわ、男の人がいる!」という大学生になってからも、女性としての自覚は少なかった。というよりも、時は、安保闘争の最中であったらしく、没政治的な人間であった私には、今まであった女子トイレのドアがある日突然無くなって、燃やされていたり、昨日まで教室にいた男子生徒が、突然片足を骨折していたり、頭や片腕に包帯を巻いていたりする時代であった。


 また、男子に免疫のない私は、突然好きになった男子学生のストーカーと化したりした。

 偶然を装って、バッタリ会うなどというテクニックとは無縁なので、ひたすら後を追いかけ続けるという、暴走特急のような状態であった。

 被害に遭った吉沢君、この場を借りてお詫びしますが、もし再び生まれ変わっても、同じことをすると思うので、転生の際には覚悟をしてからするように。(お詫びと言うよりは、脅迫に近い……)


 私は今の今まで、長い年月、自分のことをストーカー被害に遭いやすいと思って生きて来たけれど、過去を振り返れば、立派なストーカー体質であることが判明した……


 ま、ま、まさか、類友(類は友を呼ぶ)の法則ではあるまいな。

 ち、違う、絶対に違う。

 と思う。





 

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