表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第四部開始】当て馬令嬢リベルタ〜転生喪女はゴーインニマイウェー〜  作者: ジュレヌク
【第三部 リベルタ十六歳 プロポーズ編】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
49/60

十六話 鉄槌

 ススロット侯爵家の事件から数週間が経った。


 全員が自宅待機となる中、リベルタとトワレも親元へと戻らざるを得なかった。


 それほどまでに家族は事件のことを心配し、大切な子供を守ろうと躍起になっていたのだ。


 子供だけの共同生活は、元々トワレの結婚なども控えていたことで、残念ながら自然消滅となってしまう。


 それでもトワレは、クルーガーを連れて毎日ベリッシモ伯爵家にある研究室に来た。


 護衛としてトワレパパが雇った屈強な冒険者がついてきたが、それはそれで楽しかった。

 

 そして今日は、今回の事件の調査結果を聞くためにリベルタ達はシャイネンに付き添われて王宮へと赴いた。



「はぁ……緊張する」


「大丈夫、私がついていますよ」



 何度も溜息をつくリベルタの背にシャイネンが大きな手を置き、赤子をあやすようにトントンと規則正しく叩いている。



「なんだか、役目を取られたようで寂しいわ」



 トワレは、つい本音を漏らした。


 出会って四年、あの立ち位置は、彼女のものだった。


 ここぞとばかりに慰めようと、



「俺が居るだろ?」



と手を握ろうとしたクルーガーだが、思い切り脇にトワレの肘鉄が入った。



「イッテ」

 

「ここ、王宮」


「前の二人は良いのかよ?」


「あれは、子供と保護者よ」



 まだ恋人と言うにはぎこちなく、見守る方がドキドキしてしまう。


 それでもススロット侯爵家へ行く前よりも、ずっと二人の距離は近く甘い空気が流れている。


 そろそろ良い知らせが聞けるのではと期待しているのだが、今はそれどころではなかった。

 

 まず、用意されていた部屋には、既にライトとクオーレが待っていた。


 ライトは、王ヴィッセンと王太后ルーチェに挟まれて座っており、驚くほど短く髪を切っている。


 その長さは騎士学校の新入生並みと言っていい。


 野営の時に風呂に入れないことも多い彼らは、前世で言う角刈りのような髪型にするのだ。


 しかし、それは王太子がやることではない。


 単なる反省を表現するだけなら、やり過ぎと言えるだろう。


 一方のクオーレは、あの小さな子リスとは思えぬ堂々とした姿勢で座っていた。


 事件の後、彼女はハート公爵家を離れ、親戚筋の侯爵家へ養子に入った。


 攻撃魔法を得意とする家系で、軍部の中枢を握る武闘派だ。


 小柄な彼女の横には、その二倍、いや三倍はあるのではないかと思われる程大柄な男が睨みを利かせて座っていた。


 彼の名は、レオン・テリブル。


 レオンの母とクオーレの祖父は、

仲の良い年の離れた姉弟だった。


 それ故に、レオンは十代の頃に幼いクオーレの母と遊んだ記憶がある。


 兄弟のいなかった従姉妹は、レオンの後追いをする程彼のことを慕い、別れ際には大泣きしたものだった。


 彼女が亡くなったと聞いた時は一番に駆け付け、そして、遺児であるクオーレの置かれた状況に愕然としたのだ。


 葬儀には既に後妻が我が物顔で居座り、妻を亡くしたばかりの男は異母妹のパロラッチャを大事そうに抱えていた。


 一人教会の隅に座らされている幼いクオーレを、どれぼど連れて帰りたいと思ったか分からない。


 しかし、勝手をすれば拉致になる。


 その場は我慢し、形を整えた上でクオーレを養女に欲しいと申し入れた。


 しかし幾度頼み込んでも拒否をされ、クオーレの状況は益々悪くなっていく。


 我慢しきれなかったレオンは王家に書状を出したが、それも何処かで握り潰されていた。


 それ故に、王家への不信感もただならぬもので、今もクオーレが止めなければこの場を去っていただろう。


 後から入ってきたリベルタは、彼の眼光の鋭さにチビりそうになった。



「シャイネン先生……怖いです」


「少しの我慢です。私の横に座りなさい」



 リベルタは、シャイネンとの距離をちょっとでも近くしようと椅子を横から押した。



 ガタゴトガタゴト



 周りの視線は痛かったが、そんなこと構っていられない。


 握り拳ほどの間隔になったのを確認して、サッと座って何事もなかったように前を向いた。



「では、さっさと話し合いとやらを終わらせましょう!」



 当事者が集まったことで、レオンは我慢するつもりはないらしい。


 先ずは自身がクオーレの義父となったことと、三男がハート公爵家の当主となったことを報告した。


 これは王家も後押ししたことで、手続などは滞りなく行われている。


『もっと早く動けよ』


と文句を言いたいところだが、クオーレの為にもレオンはその点については今は何も言わない。


 ハート公爵家当主となったレオンの息子は、元は国境警備の最前線に立ち続けた豪傑であり、見た目は熊のようだが内面はとても穏やかで優しい人だ。


 クオーレの実父と義母は彼が面倒を見てくれるようになったが、完全に実権を掌握した彼から金を引き出すことが出来ずに貧しい生活を強いられている。


 更に使用人達は全て解雇され、新たにテリブル家から古参の者が選ばれて屋敷内を回していた。


 新しい使用人達は新当主からお許しを得て、クオーレ父と義母に『それ相応の扱い』をしているらしい。


 出来ることなら皆で屋敷まで出向き、



『ざまーみろ』 



と追い打ちをかけたいところだ。


 パロラッチャに至っては、王太子の寝室を狙った上に睡眠薬まで水差しに混入させた罪で罰せられることになった。


 本当なら死刑でも生ぬるいのだが、一応クオーレの異母妹ということもあり、祖父ほど年の離れた男性の後妻に入ることになった。


 ヤンデレな王太子がそんな軽い罰で済ますはずがないと思っているリベルタは、相手の男の通り名を聞いて戦慄した。


『死神男爵』


 次々に妻を娶っては、全員が不治の病で死ぬと言われている医師資格を持つ男だ。


 あっさり首を切られるより怖い。


 何をやっているのかは分からないが、聞くと夜が眠れなくなりそうなのでリベルタは忘れることにした。


 とにかく、見たこともないパロラッチャという少女を今後も見ることはないだろう。



「先ずは、調査結果を報告しよう」



 王であるヴィッセンが、テーブルの上に置いた資料を基に説明を始める。


 今回の事件については、国の機関が動いて厳正な調査が行われた。


 ススロット侯爵家を中心とした秘密結社の実態が、黒魔術で若返りや永遠の命を求める怪しげな組織であったこと。


 そこに集まった貴族達が、上納金の代わりに国家機密を売っていたこと。


 今回は、マジックバッグの秘密を他国より求められ、仕方なく犯行に及んだこと。


 組織員の統制が取れず、暴走したメンバーがリベルタ達を襲ったこと。


 大体が想像通りだが、最も重要な『魔王の残滓』に関しては語られなかった。


 もしリベルタが聖女並みの浄化魔法を使うと知られれば、神殿が黙っていない。


 彼らは、聖女は教会にあるべきだと信じて疑わず、リベルタは本人の意志は関係なく、全ての自由を奪われる事になるだろう。


 故に、事実を知るのはリベルタとシャイネンのみ。


 倒された人間達も『魔王の残滓』に乗っ取られていた時間の記憶は何も残っていなかった。



「私にとっては、そのような細かなことは、そちらで対処してくれれば何も問題ない。それよりも、クオーレを王太子妃候補から外していただきたい!」



 今日一番の核心とも言うべき議題をレオンが持ち出し、テーブルを思い切り叩いた。


 そう、彼は正に王家に鉄槌を下しに来たのだ。


 臣下として行って良い態度ではないが、今までの不誠実さがあるだけに王家も文句は言えない。


 ヴィッセンは、息子から彼女への思いを聞き、出来ることならクオーレを王太子妃にと思っていた。


 しかし、破棄を申し出る義父の横で顔色一つ変えない彼女に、息子の願いは叶わないと知る。



「こちらの有責で、婚約は白紙と言うことで良いだろうか?」


「ち、父上」


「お前は、黙っていなさい」



 一人狼狽える息子を、ヴィッセンは哀れに思いながらも厳しく諭す。



「我らがしたことを考えれば、この決定はどうしたとしても覆らない。それならば、せめて最後に誠意を見せなければならない」



 一度白紙撤回されたものは、もう二度と結ぶことは出来ない。


 たとえ候補だとしても、降りれば王太子妃への道は閉ざされる。


 今までのクオーレなら、泣いてレオンを止めただろう。


 しかし、数週間といえどもテリブル家の人間となり厳しい訓練を受けた彼女は、己の意思で動けることに幸せを感じた。


 更に火魔法だけでなく風にも適性があり、合わせ技で大きな火柱を作り上げた時は、テリブル家の面々すら驚愕させたのだ。


 もう、王太子妃候補等という微妙な立場に戻り、同じような生活をしたいとは思わなかった。



「当たり前でしょう!この子は、ずっと理由のわからないカツラまで被せられ、誰にも辛さを気づいてもらえず、何年も無駄にさせられたんですよ!白紙撤回上等!お受けさせていただきます」



 暗に王家が馬鹿だからクオーレが貧乏くじを引かされたのだと言っている。


 見たいものしか見ず、見えないものを無かったことにすれば、いつかこの国は崩壊するだろう。


 先王が後宮を持たざるを得なかったのは、王として泥を飲んでも国の為に果たさなければならない使命があったからだ。


 その負の遺産を継承前に解体してもらえたのは、ヴィッセンにとっても王妃にとっても良かったことなのかもしれない。


 しかし、そのことで多くの派閥から協力が得られなくなり、新王の思い通りには政策が進まなくなった。


 現に、レオンが王家に提出したはずの書状も誰かが握りつぶし、シャイネンも軍部から怪しい要請を受けていた。


 しかも、実行犯達は不審な死を遂げ、如何に調べようとも黒幕が分からず闇の部分は未だに解明できていない。


 舵取りの難しい国政を担い、ヴィッセンも手が足りなかったのだろう。


 しかし、跡継ぎがライトだけならば、それ相応に教育に力を注ぐべきだった。


 いかに今の王政を守ったとしても、次の王が愚昧なら国はなくなってしまうのだから……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
クオーレちゃんをしっかりと守ってくれる頼もしい家族ができて良かった!レオン義父さんも王家にガツンと物申せるところがカッコいいです。 今の王家は現王が弟が好きすぎて自分の息子と変わらない年齢のリベルタを…
あらー 思ったより大胆に国の中枢が動いちゃいそう! 優秀な井の中の蛙が真夏のアスファルトで火傷しちゃったねぇ。下手したら井戸取り潰しの大惨事だったのか。国がヤバい。何気にこの世界、キナ臭案件盛り盛りな…
おお、サクッと終わった 目が覚めてよかったねえ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ