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魔大樹ライフ!  作者: てるてる
20/25

18話 進化


 空を覆っていた分厚い雲はなくなり、一面の青空が見えるようになった。

 日差しも、地上に届いて暖かい。


『これで地面の魔素量は回復…っていうか普通ぐらいにはなったんだよな?』


 俺が彼女にそう聞くと、彼女は肩をすくめる。


『普通の基準は分からないけど、枯渇状態ではなくなったわね。とりあえずは、いいんじゃないかしら?』


 地面に手をついていた彼女は立ち上がって大きく伸びをする。そして俺の木陰から太陽の日の指す場所に出た。


『やっぱり日光はいいわねー。疲れた体に染みるわ』


『お前は何もやってないだろ』


『気分よ、気分。……それに、封印から出たばっかりで本調子じゃないからいいのよ』


 全身を解すように動く彼女を見て、俺は思った。


 ……お前、祟り神の類いだろ。作るより壊す方が得意とかいってるやつの本調子なんて恐怖しか感じねぇよ。


 だが、それを言葉にはしない。俺は気遣いが出来る木だ。

 それに、本当に心配している部分も少しはあるので俺は彼女を優しく気遣う。


『そうか……、早く本調子に戻るといいな』


『ええ、早く何か壊したいわ』


 ……やっぱり、こいつは本調子じゃない方がいいのではないだろうか?



『……それで、次のことなんだけど』


 自分がヤバイ発言をしているのに気付かない彼女が俺に話しかけてきた。……俺の気も知らないで…!


 だがツッコミは入れない。俺は出来る木だからな!


『ああ、次はどうするんだ?』


『……あなたなら大丈夫だと思うの』


 ……? 何を言ってるんだ? 


 急に意味深なことを言う彼女に疑問をもつ俺。

 そんな俺に彼女はゆっくり近付いてきた。そして、俺の根の上に登ると俺の幹にそっと触れる。


『耐えてね?』


『だから、なに言って……!』


 ……突然だった。


 思考が一瞬止まり、視界がモノクロに映る。

 そして次の瞬間には、全身が脈打つかのような感覚に襲われ、燃えるように熱くなった。


 ーーなんだ……っ、これっ!


 幹が震えて枝葉が揺れる。

 まるで自分の身体が自分の物では無いように感じる。

 ……駄目だっ! 意識が……。


 意識が飛びそうになるその時、ふと感じる僅かな温もり。


 根っこの方の幹の部分……、こうなる前にあの彼女が触れた場所だ。

 朦朧とした意識の中、俺が見た彼女はとても不安そうな顔をしてた。……いや、不安になるくらいならやるなよ。

 彼女の姿を見ると、何故か自然と意識がはっきりしてくる。


 ーーだが、この気持ちは、信頼……という優しい気持ちではない。


 どちらかというと、負けん気……というか、怒りだろうか?


 事前に何も言わずに急に俺に何かするなんて、どうかしてる!絶対後で泣かす! ………と、俺の心が叫んでいる。


 まったくもってそうだ。あの女はどうかしている。


 身体中が脈打つような感覚が次第に速くなっていき、それと共に熱さもどんどん増していく。


 だが、俺の意識は先程までよりはっきりしていた。


 くそがっ! 絶対後で文句言ってやるからな! ……と。


 異変が起きてからは、それほど時間は経ってないだろう。だが、その短い時間で俺の身体は変化していく。


 そして、これ以上は無理だろ!?と思う程の脈打つような感覚になったその瞬間。

 俺の身体は発光し、俺自身も一皮剥けたような感じになる。

 感覚でしかないが、確かな確信があった。


 ーー俺は進化したのだと。


 そして、光が収まり、意識が途切れないまま、むしろ意識がかなりはっきりしていく中で、俺は彼女にそっと枝を伸ばす。


 枝が伸びてくるのを確認した彼女は、ほっ、と安心したような表情になった。


『よかったわ。やっぱり成功したわね』


 ……俺は、無言で枝で彼女に触れる。


『出来るかどうか心配だったけど、私は出来ると信じてたわ』


 ……さらに俺は触れた枝を彼女に巻き付ける。


『これで次の段階に……て、ねえ? なんで無言なの?』


 と、そこで彼女は俺の異変に気付いたようだ。だが、既に枝は彼女に巻き付けてある。

 俺はそっと彼女をそのまま持ち上げる。


『なんで私を持ち上げてるのよ!? なんで返事しないのよ!?』


 彼女は枝から抜け出そうとするがもう遅い。


 ……時は来た!


『……まったく、』


『へ?』


『よくも俺に変なことしてくれたなぁぁぁー! この、クソ女がぁぁぁーーー!!!』


『急に……って!? きゃぁぁぁぁぁぁぁ~~~!!!』


 俺は、力の限り勢いよく彼女を振り回した。


 恐らく、普通の女性なら耐えられないであろう速度だが、彼女は自称邪神、祟り神だ。この程度では死なないだろう。


 だから目一杯枝を振り回す!


『死ぬかと思ったぞ! 何かやるなら事前に言えぇぇ~!!』


『事前に言ったらあんた絶対嫌がってやらなかったでしょ!? それより早く私を降ろせぇぇぇ~!!!』


 どうやら言い返せるほど元気があるらしい。これならさらに速く振り回しても大丈夫だろ。


 一応、落とさないようにきつく締め上げて……、


『ちょっ!? 急に締め付けが強く……って! 速度を上げるなぁぁぁ~!! ごめん!! 私が悪かったからぁぁぁ~!!!』


 速度を上げてようやく謝ってくれた。

 うん、満足。


 でも、せっかくだからこのまましばらく俺の周りを回って貰おう!


 進化したことによって、俺の力が増してる気がするしこれくらいはこれくらい平気だ。


 ……途中、ソニックウェーブが出たので止めてしまったが、まあ満足だ。思い残したことは何もない。


 いつの間にか気絶していた彼女を優しく幹の上に降ろして上げて、俺は改めて自分の状態を確認する。


 特に外見的には変化は見られないが、なんとなく、存在の格が上がった気がする。あとで彼女が起きたら確認するつもりだが、俺は進化したのだろう。

 

 何に進化したのか。具体的には何も分からないが彼女が何故俺を進化させようとしたのかは分かる。


 彼女は自然を増やそうとしていた。


 その時の俺は、そんなことは出来なかったが今なら出来る自信がある。彼女の目的はこれで間違いないだろう。


 だがやはり、俺を進化させる前に一言言ってほしかった。

 そりゃあ、嫌だが、方法がそれしかないなら俺も断ったりはしない筈だ……多分。


 まあ、過ぎたことだし俺ももう気にしないことにしよう。お陰で進化できたわけだし、これ以上の文句は言わないつもりだ。

 彼女も起きたら文句を言ってくるだろうが、まあ、そこは気にしない。しばらく喚いたら落ち着くだろうしな。


 それよりも、やはり俺は彼女のことが、気になっていた。


 邪神とか、負の感情とかで生まれたとか言ってたが俺はそれ以上詳しく質問したり、追及したりはしなかった。

 どうでもいいという気もあったし、話したくないならそれでいいと思っていたからだ。


 だが、彼女が俺を進化させたことでその認識は変わった。


 この先、彼女と一緒にいるなら彼女のことを知っておくべきだと思ったのだ。

 ……他にもヤバい能力とかあったら把握しておきたいし。


 それに、彼女を封印し、殺そうとしている神達についても気になる。神様って複数いるのかな?


 思えば知らないことだらけだ。


 この地のことも、他の場所のことも。この世界のことも……。


 そういったことも含めて、時間があったら話し合いをしたいと思っている。


 まあ、それも彼女が起きてからになるのだが……、起きたら起きたでめんどくさいだろうな~。




 ーー主人公成長日記


 存在が進化しました。

 ……何に進化したのかは不明。



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