17話 今度こそ土地開発!
『念話が使えるようになったところで、本題に戻るわよ』
念話が使えるようになって喜んでいた俺に彼女はそう言った。
そういえば、魔素でこの土地をどうにかするって話の途中だったな。
『そうだったな。で、さっき地面に降りたのは何を確認したんだ?』
『土に含まれる魔素量をみたのよ。多分、封印が破壊される前よりはよくなっているんだろうけど、それでもまだ足りないわね』
ああ、そういえば封印を破壊した後は地上から感じるエネ……魔素量が多かったっけ?
『じゃあ自然に元に戻るのを待つか?』
封印ないんだし、時間が経てば魔素量も増えるんじゃね?
俺はそう思ったが、彼女の考えは少し違ったらしい。
『それでもいいけど、時間がかかり過ぎるわ。一応、一年ぐらいのタイムリミットがあることを忘れないでよね』
一年のタイムリミット。それはこの世界の神とやらが彼女に接触か、干渉か、もしくは殺しにくるであろう時までの猶予だ。
神も俺と同じかそれ異常に時間感覚がおかしいらしいから、もしかしたら予想よりも前後するかもしれないらしいが。
『分かってるよ。じゃあどうするんだ? 魔素でも流し込むのか?』
『何よ、分かってるじゃない』
そりゃあ、最初に魔素の還元とか言ってたし、話の流れ的にもそれしか方法ないだろ。
『で、それを俺がするのか?』
『ええ。私がやると何起こるか分かんないしあなたがやるべきだわ。やり方は封印壊した時のように地面に魔素を流し込めば大丈夫な筈だから』
何が起こるか分からないって、そんなに危険なのかよ。
じゃあ俺の身の安全のためにも俺一人でやるのがベストだな。
まあ、出来ないことはないし、難しくもから別にいいが、問題が別にある。
『でも、流し込む魔素はどこから調達するんだ? 俺も今ほとんどないぞ』
封印の破壊のために使ったため、俺の魔素量はかなり減っていた。半分もないしそれを回復する手段もない。
『あなたに空気中から吸ってもらってそれを流し込んでもいいのだけれど、多分無理ね』
『なんでだ? それくらいなら出来るが……』
『量が足りないのよ。それに一度吸ったら空気中が元の魔素量に達するまで時間がかかるでしょ? だから却下』
『じゃあ、どうするってんだよ?』
そう聞くと、何故かしたり顔をする彼女。なんだよ、早く言えよ。
自信満々そうな彼女が指差したのは上。
……まさか、
『空にちょうどいいのがあるじゃない』
彼女が指差してたのは、あの分厚い雨雲だった。
『これなら、空もどうにか出来て一石二鳥。本当はあの雲はこの地に何があるか上から分からないようにするジャミング機能があるんだろうけど、どの道、植物を育てるには邪魔だからさっさと消しちゃいましょ?』
『あの雲から魔素を吸うと?』
冗談だろ? 確かにかなりの魔素量だが……、
『そうよ。いけるわよね?』
『……ジャミング機能があるんだろ? なら残しておいた方がいいんじゃないか?』
『そんなの神からしたらないも同然よ』
『じゃあなんであるんだよ?』
『そりゃあ、地上の民に私の存在を知られないためでしょ。神達は自分を殺せる存在が生まれるのを恐れてるみたいだしね。知ってた? ここって大陸からかなり隔離された島なのよ?』
知らなかったよそんな情報。
でも今はそんなことはどうでもいい。
『失くしたら神達がすぐに来てしまうんじゃないか?』
『気付かれるだろうけど、そんなに敏感なら封印が壊れた時点で直ぐに来てるわよ。だから大丈夫』
『でも……、』
『ねえ? なんでそんな消極的なのよ? さっきまではあんなに息巻いてたのに。……怪しいわね…』
クソっ、露骨に嫌がり過ぎたか……!
あの雲には例の嵐のトラウマがあるから、あまり関わりたくないのが本音だ。というか怖い。だが、それを彼女に言うか? いやいや。そんなことしたら一生ネタにされかねない! 『雨雲が怖いんだねー』と嘲笑うように弄ってくるに決まってる! それはなんとしても避けなければならない……!
……どうする!? どうすればいい!!
『ねえ? どうしたの?』
『……いやー? 何でもないよ? 君のことを心配してただけさ?』
『……なんで疑問系なのよ?』
『そうだったか? まあいいじゃないか。それよりさっさとやっちゃおうぜ!』
『……まあ、いいわ』
どこか怪しんでる様子の彼女だったが、それ以上の追及はなかった。
……そして俺は、結局、プライドが勝ってしまった。
いや、いいんだ。
ネタにされて弄られるより何倍もマシじゃないか。ちょっと我慢すればいいだけだ。俺はこのプライドを守り抜くぞ!
『じゃあ早速だけど、やってみてくれる? 枝伸ばせば雨雲まで届くわよね?』
『……はい、できます』
だが、俺のプライドは彼女の無慈悲な言葉により、既に崩れ去りそうだった。……やっぱり話しとけばよかったか?
まあ、決まってしまったものはしょうがないので、俺はこれ以上怪しまれないように枝を空に向けて伸ばす。
うわー、嫌だなー。
『なあ、これ俺が伸ばした枝に雷が落ちてきたりしないよな?』
ちょっとずつ伸ばして、ふいに不安になった俺が彼女にそう聞くと、あっけらかんと言った。
『何言ってるの? 落ちるに決まってんじゃない』
その言葉を追及しようとした直前だった。
ピカッと眩い光が雨雲を走ったと思ったら、轟音とともに俺に衝撃が襲う。
『そういうことは、早く言えー!!』
『大丈夫。私にはなんの問題もないから』
お前はそうだろよ! でも俺は……あれ? そんなに痛くない?
『それにあなたも平気でしょ? ほらさっさと雨雲まで枝伸ばして! 雷も魔素を消費してるから魔素量が減るわ!』
何故か平気だったので、俺はそのまま雨雲まで枝を伸ばした。その間も雷は俺に落ち続けたが、衝撃を感じるぐらいで全然痛くない。
それどころか雷に含まれる魔素を吸収しているぐらいだ、
もしかして、この前ので俺耐性ついたとか? それとも単純にでかくなったからか? ……よく分からんが、助かった気分だ。
『枝伸ばしたぞ。後は魔素を吸えばいいんだな?』
『ええ。それで雨雲も消える筈よ』
なら遠慮はいらない。俺は雲一つ残さない勢いで魔素を吸い始めた。
すると、雷の数がどんどん減っていき、雲もだんだん薄くなってきた。
同時に俺の中にも魔素が貯まっていくので、最高のな気分だ。
『吸った魔素は地面に流しなさいよ』
『え? ……あ、そうだったな。今やるよ』
最高の気分過ぎて、主目的をすっかり忘れてた。
魔素が自分の中に貯まっていくと、なんとも言えない幸福感があるんだよなー。
俺は彼女に言われて、吸った魔素を地面にそのまま放出する。
おお! エネルギーが俺を中心に広がっていくのが分かるぞ!
『いいわよ。その調子でどんどん流しちゃって』
『いつまでやればいいんだ?』
『空の雨雲がなくなるまでよ。……ほら日の光が漏れてきたからあともう少しよ』
本当だ。薄くなった箇所から光の筋が地面に射してなんともきれいな光景だ。
下が。荒れ地なだけにすごく幻想的に見える。
『……きれいだな』
『……ええ、そうね』
俺たちは、その光景に目を奪われていた。
この光景を見ると、何か良いことがこれから起こるような気分になるな。
きっと、土地開発もうまく行くだろ。
その時の俺は干渉に浸っていた。
だが、そんな一時は彼女の一言によって強引に現実に引き戻された。
『そういえば、あなたが雨雲から魔素を吸うことを妙に渋ってたのは、もしかして、雷が怖かったからなのかしら?』
ごく自然に……。本当にナチュナルに聞いてきた彼女に、俺は一瞬、言葉につまった。
まさに図星だったからだ。
なんで、こんな時に言うんだよ! ムードが台無しじゃないか!
『……そんなことはないぞ?』
『今一瞬、答えるまでに間があったわね』
なんでこんな時に限って察しがいいんだよ!
しかも、そう言った彼女の表情はどこか確信している様子だ。……これはもう無理か。
ーーその後、俺は嵐の時の雷が若干トラウマになっていたことを彼女に告げた。
その際、もう克服したことも言ったのだが彼女はお座なりな態度で返事するだけで、まともに聞いてる様子はなかった。……いや、ちゃんと聞いてくれよ。
なお、幹の上のコブがその時の古傷だとも教えたのだが、わざわざ幹の上に昇ってペタペタ触る程の関心ぶりだった。
……解せぬ。
ーー主人公成長日記
雷に耐性がつきました。




