16話 土地開発……の前に
とりあえず、この土地の環境を整えるということが決まったのだが……、
『こんな土地どうやって整えるんだ?』
何もない……本当に何もない土地だ。荒れ地ではあるが、遮蔽物も生物もほとんどないという点では、ある意味、綺麗に整っているとも言えるか?
そんな冗談を考えていると、彼女はコブの上に座りながら言った。……いや、だから座るなよ。
『まずは自然を増やしたいわよね。それと空も。毎日こんな天気じゃ気が滅入ってしまうわ』
俺も彼女の言葉には賛成だ。
確かにもう少し植物や生き物がいてもいいだろう。
いきなり林とか森とまではいかなくても、草原みたいな感じになるだけでも大分変わる。空は言わずもがなだ。
この二つは最低限どうにかしたい。
『ふむふむ……。で、具体的にはどうするんだ?』
『さあ? 何かいい案ない?』
次に、それをどうやってやるか聞きたかったのだが……、彼女からの返事は予想外のものだった。
『……お前がやり方とか方法とか知ってるんじゃないのか?』
『私、壊すのは得意なんだけど何かを作るのは苦手なのよね。多少はアドバイスできるかもだけど基本的にはあなたがどうにかしてよ』
『………え? 本気で言ってるのか?』
……マジで? ジョークとかじゃなく?
『え? 本気だけど……、』
『…………。』
なんてこった。
てっきり何か手段があるから提案していると思っていたが、これもノープランだったとは……。
しかも俺が考えるのか? 俺もそんなやり方知らねぇよ!
『……使えねぇな、お前』
『えっ? それ私に言ってるの?』
心底不思議そうに聞き返してくる、使えない少女。
何で不思議そうなんだよ。お前以外に誰がいるんだよ。
『当たり前だ。提案しといてやり方知りませんとか、無責任にも程があるだろ』
『アドバイスはするわよ?』
『例えば?』
『魔素を土地に還元するとか?』
とっ、いきなり知らない単語が出てきたぞ。
魔素? なんじゃそりゃ?
『魔素ってなんだ?』
『え!? あなた魔素も知らないの? ……冗談でしょ?』
なんでそんな驚くんだよ。そんなに常識なものなのか? 少なくとも、俺が何故か知っているの最低限の知識の中にはないぞ。
『知らないものは知らない。その魔素?ってやつはなんなんだ?』
『なんなんだって、あなた普通に封印壊すときに使ってたでしょ? しっかり自分の中にも貯めてるみたいだし』
彼女のその発言に、俺は心当たりがあった。
封印壊すときに使って自分の中にも貯めてるもの。そんなの一つしかない。
『もしかして、あの謎エネルギーのことか? 名前あったんだな』
『謎エネルギーってあなたねぇ……』
俺の発言に呆れた表情をする少女。おそらく俺が何も知らないことを悟ったのか丁寧に教えてくれた。
『魔素っていうのねぇ、この世界に溢れているほとんど全ての場所や物にに存在するし含まれている力のことよ。決して謎エネルギーなんて意味不明なものでもないわ』
なるほど、やはり俺の謎エネルギー……、もとい魔素に対しての仮説は正しかったわけだ。
『その魔素を使えば問題は解決すると?』
『土だけだけどね』
そう言って彼女は肩をすくめる。
『この土地は私の封印のために魔素を吸い続けられて常にカツカツの状態だったのよ。魔素はほぼ全ての物に含まれてるけど、枯渇するとその生命力が著しく低下する』
『だからこんなに荒れていると?』
『そういうこと。土が荒れるとそこに生える植物も少なくなる。それを餌にする生き物も。さらにそれを餌にする生き物も……って感じでね』
確か食物連鎖って言うんだっけか? それが一部でも崩れると連鎖的に崩れて生物が住みにくくなるって感じか。
『それに土地だけじゃなくて、ことの土地にいる全ての生き物達からも魔素を吸っていたからこの土地にはほとんど生物がいない。いたとしても小さいものばかりね』
『俺は大きいけど?』
『あなたは異常よ。あなたのお母さんの方は、種族特性みたいなのがあったみたいだけどあなたほどでかくはなかったでしょ?』
そう言われると俺は確かに異常なのかもしれない。
『まあ、そんなことはどうでもいいのよ。大事なのは、この荒れた土をどうにか出来ればその後の事がやりやすいってこと』
そう言って彼女は俺の上から飛び降りた。……え? 飛び降りちゃったの?
そう思ってたら、彼女はふわふわと浮遊するようにゆっくりと降りていた。
そういうことことも出来るんだな。あ、いや。そういえば封印されるほど力があるんだもんな。出来て当たり前か。
彼女は地面に手を当てると目を閉じた。
そしてしばらくすると再び立ち上がる。
『やっぱりね。封印がなくなって少しずつ魔素が大地に戻ってきてるけど、それでもまだまだ足りないわ』
へー、そうなんすね。
……って、あれ? 今彼女どうやって俺に伝えてきたんだ? 俺と触れてないのに。
聞こうと思ったが、彼女にはこちらの考えは伝わってないらしい。彼女からの一方通行なのか?
俺がザワザワしてると、それに気づいた彼女が俺の根っこに近い場所に近づいて触れる。
『どうしたの?』
『う、あ! いや、触れてなくてもお前の声が聞こえたからな。俺からは伝わってないみたんだからどうしてかなーっと』
『ああ、なるぼどね』
どうやら彼女は理解したらしい。
『念話よ。すっかりこのこと忘れてたけど別に触れなくても意志を伝えることが出来るの。……けど、あなたと会話するには触れてないと駄目ね』
何それ便利。俺も使ってみたい。
いちいち枝を伸ばすのも、彼女が俺に触れるのも大変だしこれは使えるようになりたいな。
『俺も使ってみたいんだが…』
『触れて会話が出来るんだから、多分すぐ覚えられるわよ? ……でも、調整は大変かしら? まあ、やってみましょ』
彼女が言うには、念話は空気中の魔素を伝って相手に意志を伝える技だそうだ。だが、調整が難しくピンポイントで相手に意志を伝えるには練習が必要とのこと。
普通に魔素を伝って伝えるだけだと他の人にも意志が伝わってしまうそうだ。
『まあ、ここにはあなたと私以外は、少しの雑草と虫ぐらいしかいないからそこまで気にしないなら大丈夫だけど』
そう言って彼女は俺に見本を見せてくれた。
うん、触れなくても意志を伝えられるっていいな。
確か空気中の魔素を伝うんだっけか?
試しに彼女に話しかけてみたが、彼女は無反応。これは伝わってないか?
まあ、一回で出来るとは俺も思っていない。地道にやろう。
とりあえず、失敗したことを彼女に伝えるために根っこで……は、彼女が下にいるから揺れるか。普通に枝伸ばそ。
俺が上から枝を伸ばすとそれに気づいた彼女はそれに触れる。
『どうしたの?』
『いや、失敗しただけだ。何も聞こえなかっただろ?』
『そうね。私には聞こえなかったわ』
やっぱりか。
『何かアドバイスはないか?』
『うーん、そうね……。空気中の魔素を水みたいに例えて波をイメージするように振動させるのはどうかしら?』
……以外に分かりやすい説明がきたな。
よし、それでやってみよう。
水に例えて、波のように振動……っと。
『どうだ?』
『ちゃんと聞こえてるわよ。よかったわね』
『マジで! よっしゃぁ!』
『でもこれだと私以外にも聞こえてるかもね。……まあ、ここらの雑草に話しかけても答えが返ってくるわけじゃないから気にしなくてもいいけど』
どうやらまだまだらしい。これに調整が必要なのか。
まあ、これから慣れていけば出来るようになるだろ。
『とりあえずは出来るようになったんだ。それでいいさ』
『ええ、そうね』
ーー主人公成長日記
謎エネルギーの正体が判明。少しだけ賢くなった。
念話が使えるようになった。




