15話 これからどうする?
俺の話も終わり、ちょうど日が傾いて来たところで彼女は眠くなったと横になりそのまま寝てしまった。
……ここ、これの上なんだが?
まあ、少女を固い地面の上とかで寝かすほど俺は鬼畜じゃないので、そのまま寝かせるけどね?
ついでに彼女の下に葉っぱがたくさん生えている枝をしいてあげた。幹の上よりは柔らかいだろ。
穏やかな寝顔だなー。
………………、
…………。
ちょっとつついてみようかな?
ほっぺを枝の先で……、ぷぷっ、つついた時に眉間にシワがよって面白い。
しっかし、これからどうするかなー?
地下の封印はなくなった。
同時に大量のエネルギーとそれを集めるシステムもなくなってしまったが、今は、地上にエネルギーが溢れているので生命維持分ぐらいは多分賄える。
つまり、本格的に何もすることがなくなってしまったのだ! ……他に何かすることあるか?
大きく……、これ以上大きくなってどうするんだ? 生命維持がもっと大変になるだけだろ。
俺が出来ることでなにか……、俺、魂と謎エネルギーを知覚することしかできないじゃん。
エネルギーの方は多少操作できるが、それだけだ。それで何か出来る訳じゃない。
うーん、どうしよっかなー。
そう思ってると、不意に俺の枝が引っ張られる。
『ちょっと! なんなのよこの枝! 全然寝れないじゃない!!』
おっと、考え事に集中しすぎて彼女のほほをつつき続けていたか。
彼女は怒ったように、枝を掴んで下に叩き付けるように投げると「xxxx!」と俺にはわからない言葉を言って再び横になった。
睡眠を邪魔されて相当不機嫌なようだ。
うん、これは朝まで静かにしていた方が無難だな。ちょうど考えが行き詰まっている感じだったしちょうどいいだろ。
寝るとまた数日間眠り続けそうだから寝ない。ちょっとの間、思考を停止させて静かにする、休憩みたいなものだ。気付いたら朝になってるだろ。
これからどうするかは、明日彼女にも聞いてみよう。
そうして、俺は静かになった。
……ちなみに、最後に彼女をもう一度つつこうとしたら、その前にすごい勢いで睨まれてしまった。
起きてたのかな?
ーー翌日。
『これからどうするのか?』
『ああ、お前はどうするのかなーって』
彼女が起きてからことの次第を説明してから質問すると、彼女はとぼけた答えを返してきた。
『そういえば考えてなかったわね。封印から出れたときは嬉しかったけど、出たかっただけで特にしたいこともなかったから……』
『つまりノープランだと?』
『そういうことになるわね』
なんてことだ……。二人揃ってこの後のことを何も考えてなかったとは……! いや? そもそも彼女は別に俺と一緒にいなくてもいいんじゃないか?
流れで二人でどうしようか考えようとしたけど、別に彼女にその責務はない。せっかく封印から出れたんだから、こんなの何もない土地にずっと居続ける必要はないんだ。
俺は彼女と一緒にいる前提で話していた。彼女と一緒にいたいなんて、俺も傲慢になったもんだ。
『別にお前がここを出たければ出ていって好きなことしてもいいんだぞ? せっかく自由になれたんだ。俺と一緒にいる必要はないぞ?』
これで彼女が出ていくと言ったら俺は喜んでその旅立ちを祝おうじゃないか。また一人……じゃなくて一本だけになってしまうが、前とさして状況は変わらない。
……寂しくはなるかな?
俺が一人覚悟を決めながら寂しくも思っていると、彼女は不思議そうな表情で言った。
『私はここを出ていくつもりはないわよ?』
………はい?
『正確には出れないってほうが正しいんだけど。私って恐らく神達に監視されていると思うのよ。多分、この土地から出てって何かすれば、今度こそ殺されると思うし』
『……ここにいれば安全ってことか?』
『完全に安全とは言いきれないけどね? でも封印壊してから三十日以上経過しても何もしてこないんだから大丈夫じゃないかしら? まあ、あいつら時間感覚おかしいから一年後に来るとかはありそうね』
なにそれ、ヤバいじゃん。
この世界の神様に目をつけられてるって……、いや、封印されてたもんな。
でも、一番気にしていたのはそこじゃない!
『……じゃあ、出ていかないんだな?』
『そうだけど……、なに? 私がどっか行くと思ってたの? もしかして寂しかったとか?』
からかうように笑う少女。きっとこれをネタに俺をイジろうと思っているんだろう。
だが、今の俺にとってはどうでもいいことだった。
……だって彼女がここに残ってくれるんだぞ!
『ああ、寂しいと思ってたさ! お前がいないと物足りない位だよ!』
『え、ええ、そうなの?』
俺のストレートな気持ちに動揺する彼女。
何故動揺するんだ! こんなにも俺は気持ちを露にしているのに!
俺は全身の枝葉を揺らして嬉しさを表現したのだが、何故か彼女のほうは引き気味だった。
なら、こうしてやる!
『お前がここに残ってくれて嬉しいぞ! 愛してるぞー!!』
『ちょっ、急にどうし……って、きゃ! な、なに掴んでるのよ! ちょ、振り回すなー! それに、愛してるなんてー!!』
俺は枝で彼女の腰の部分をぐるぐる巻きにすると、そのまま、振り回す。喜びの舞だ!
もちろん、幹の上でではない。
俺の周りを、だ。
『ちょっ! ホントに速いからぁー!! 高いからぁー!! お、降ろしてぇぇぇーー!!』
その後、数分位してから幹の上に降ろしてあげると、コブの部分をガツガツ踏まれた。
『ほんっとうに、信じられない!』
しばらくして落ち着いた彼女が俺の枝に詰め寄ってきた。……いやこれ落ち着いてないな。声が全然怒ってるし。
『いや、ごめんって。反省してるよ。でもお前と一緒にいられるって分かって嬉しかったんだよ』
一本だけだと寂しいもんな。めんどくさいヤツではあるが一緒にいてくれれば嬉しいことこの上ない。
彼女は俺が言った言葉に、怒気を潜めて俯く。
『わ、私もあなたと一緒で嬉しいわ……、』
『そうだよな!』
『……ええ』
恥ずかしそうにしているがどうやら彼女も同じように思っていてくれたみたいだ。やはり、俺たちはベストフレンドだったんだな!
俺が喜んでいる間、彼女は小さく「xxx?」「xxxx…、」と呟いていた。何て言ってるんだろ? そろそろ俺もここの言葉を覚えた方がいいのだろうか?
そう思っていると、彼女は大きなため息を吐いて顔を上げた。
『まあいいわ。それより、やらなきゃいけないことを見つけたわよ』
『やらなきゃいけないこと?』
『ええ。いつ神やその尖兵が攻めてくるかわからないからそれまでにここの環境を整えるの』
ああ、そういえばコイツ、狙われてたんだっけ?
『でも、環境を整えるって言ってもどうやって?』
『それは今から考えるのよ。何もないより、備えといた方がいいに決まってるし。それに、ここで生活するにはこの荒れた大地もどうにかしたいしね』
なんか、急にやること増えた気がするな……。
でも、やることないよりはマシだ。やってやろうじゃ、ないか!
『良し分かった! お前が殺されたりしないように頑張らないとな!』
そう、気合いを込めて言ってみたのだが彼女の反応は思っていたのとは違ってた。
再び俯いて、プルプル震えていた。……どうしたんだ?
『どうした? 何かあったか?』
そう聞くと、彼女は静かにコブに近づいて再び蹴りを入れ始めた。
なんで?
『お、おい。どうしたんだよ? 別に痛くないけどコブを蹴るのは止めろよ?』
俺は、彼女を枝で掴んでコブから離した。
すると彼女は、しばらく俯いたままでいたが少しだけ顔を背けて、ボソリと「xx…、」と呟いたのだった。
……うん。やっぱり言葉が分からないと不便だな。
今度、彼女に教えてもらおう。




