14話 世界を滅ぼす者
短めです
俺の予想以上に封印されていた存在がやばかった件について。……いや、予想通りか。
その上、封印されてた理由もぶっちゃけてらっしゃる。
なんだよ、世界を滅ぼすって? 破壊神かなにかか? 邪神って言ってたけど、俺こんなの復活させちゃったの?
自らを邪神と名乗る少女のあまりにもインパクトが強すぎる発言に、一瞬フリーズしてしまう俺。
すると、それを察したのか、少女は顔を俯かせる。
『やっぱり、怖い……よね?』
その声は不安で満ちていて、震えていた。
いや、これどう答えても角が立ちそうなんですけど。どう答えるのが正解だ?
俺は必死に考え無難な答えを返した。
『……いや、怖いって言うのは違うかなーって。それに世界を滅ぼそうとしたのだってなにか理由があるんじゃないか? 話してみろよ』
うん。敢えて質問を質問で返す。これによって明言を避ける。俺って完璧かな?
俺が自分の返答に満足していると、彼女はとぼけたような表情をする。
『え? 特に理由はないけど? ……強いて言うなら壊したかったから?』
ーーその言葉を言われた時、俺は彼女が一体何を言っているのかわからなかった。
へ、なに? 壊したかったら世界って壊していいもんなんだっけ? やっぱり破壊神かな?
『お前って破壊神なのか?』
あ、やべ。思わず聞いてしまった。聞くつもりなかったのに。
だが、俺の質問に彼女は少し考えるような仕草をする。
『……少し違うかな? でもそうかもしれないわね。当時の私は今みたいにはっきりした自我があった訳じゃないから本能で動いてたし…』
ん? 昔の彼女と今の彼女は違うのか?
というより、そもそも彼女はどういう存在なんだ?
『なあ、お前って神様なわけ?』
『そうとも言えるし違うとも言えるわね』
いや、どっちだよ。
『私はこの世界に生きている生物の負の感情で生まれた存在なの。一応、神に近い存在なのは確かよ? でも完璧な神ではないのよ』
『祟り神みたいなものか』
『なにそれ?』
『人に畏怖させたり忌避される神様』
『……良いわね。今度からそう名乗ろうかしら?』
名乗るのかよ? てかさっきまで怖がってたのはなんだったんだ。
そう思ってると、彼女が真っ直ぐ俺を見てきた。
……いや、見てるのは触れている枝だけど…。
『あなたは私が怖くないの?』
『怖い? なんで?』
『だって私はあなたの言うところの祟り神みたいなものなのよ? ……それに世界を滅ぼそうとして封印されてたし』
なるほど、それを気にしてたのか。でも、そんなの今更すぎだよ。俺が封印壊した張本人だし。
きっと、封印される前はみんなに怖がられていたんだろうな。そして封印されてからも一人ぼっち。そりゃ情緒不安定にもなるわ。
大方、俺が怖がって彼女を拒絶するのを恐れているのだろう。……馬鹿馬鹿しい。
『お前は俺に危害を加えるつもりがあるのか?』
『え? いや、ないわよ?』
『だろ? なら俺が怖がる理由はどこにもない。もっと気楽にいこうぜ』
さて、これで納得してくれればいいが……、
『………。』
……なんで、返事しないんだよ。実は俺に危害を加える気があったとか? ぼーっとしてないで早く答えろよ。不安になるじゃないか!
『どうした?』
『……はっ! いいえ、なんでもないわ』
『それは良かった』
……本当に良かった。
『……あなたって不思議なアレよね?』
『アレってなんだよ?』
『馬鹿』
なんか急に失礼なこと言い出したぞこの女。アレってなんだよ。普通に馬鹿って言えよ。
『お前には負けるよ』
『ふーん……、? ちょっと待って。それって遠回しに私のこと馬鹿って言ってるの?』
『……さてねぇ』
『誤魔化さないでよ! て、おい! また枝を離そうとするな! 逃げるなーぁ!』
必死に枝にしがみついてくる少女。
うん、面倒くさい。でもこれぐらいが彼女らしい感じがして俺は好きだ。
なんだかんだ悩んでたみたいだけど、大丈夫そうだな。
しばらく彼女と綱引きみたいなことをしてると先に彼女の方がバテてその場に座り込んだ。
『あー、なんか心配して損したわ』
『何を心配してたか知らないが、お前が不器用なだけだ』
『………ばか』
聞こえてるぞー。気を遣ってもらった相手に馬鹿とはなんだ馬鹿とは。
拗ねるようにそっぽを向く彼女。だが、そこで思い出したかのようにこちらに顔を向けた。
『ねえ、それよりあなたの話を聞かせてよ』
『……俺の?』
……恐れていた時が訪れてしまった。
『私は話したんだし、次はあなたの番よ』
『……まだ、聞いてないこととか聞きたいこととか、色々あるんだが…』
『そんなの後回しでいいじゃない。ねえ、聞かせてよ!』
やべぇ、逃げ道もねえ。……そして話すこともねえ。
『俺は……木だよ』
『……それだけ?』
『……他になにかに見えるのか?』
『違うわよ! え? それだけ? もっと他に言うことがあるでしょ?』
『……例えば?』
『自分はどういう木だー、とか、俺は実はすごい木なんだー、とか!』
『……お前は俺に何を求めてるんだよ』
『何か一つくらい秘密があるでしょ! だってこの土地でここまで大きくなってるじゃない! じゃなきゃただの変な木よ?』
変な木ってなんだよ。……まあ当たらずとも遠からずってとこだな。
ついつい木での生活が新鮮すぎて、俺の魂だけで漂っていたときのことが薄れていってるけど、それって確かに変だよなー。
しっかし、それをコイツに説明するのか? 面倒くさい以外の何者でもないんだが……。
『(ウキウキ、ワクワク!)』
や、やべぇ……、めっちゃ楽しみに待ってる。
これ絶対、俺に何かあるって確信してる顔だよな? ここで変にはぐらかすと後の方が大変そうだ。
……しゃーない。話すか。………あまり気が乗らないけど。
『分かったよ。………実はだな…』
俺は彼女にこれまであったことを全て教えた。
魂だけの状態だったこと。その影響か魂を知覚できること。マザーが残した種に乗り移って成長したこと。
俺が知ってること全てだ。
……変に隠すと勘ぐられそうだし。
それらを聞いて、時には質問して、……何故か笑われて…。
全部聞き終わった後の彼女の感想はこうだった。
『おかしいとは思ってたけど、ここまでくると最早、異常ね。異常種だわ』
『はっ倒すぞ』




