10話 目的までは前途多難
地下の封印を解くと決めた俺だが、それには問題がいくつかあった。
『なあ、お前って一体なんなんだ?』
《…………!》
『ごめん、なに言ってるか分からん』
《…………?》
『へ? なんだって?』
《…………!》
『いや、だから分からないんだって…』
まず、意志疎通が難しい。
封印の中の存在は感情を思念として伝えてくるが、これはあくまで感情であって言葉ではない。だから簡単な質問に対する相手の感情やイエス、ノーは分かるが、普通の会話レベルになると途端に難しくなる。
「君は女の子?」という質問にイエスかノーで答えるのはできるが、「君の性別は?」という質問に対して「私、女の子!」とか「僕は男の子!」というのを感情で理解するのは無理である。……なにか答えているという意志は感じられるのだが…。
だから基本的な会話は、イエスかノー、嬉しいとか悲しいとかそういった簡単な感情で答えられる質問を俺がして、それに対して答えて貰うという感じになってる。
たとえ相手が質問してきても、疑問、という感情しか伝わらないから何を質問しているのか? 何が分からないのかが分からないのしな。
まあ、そんな会話?で話が進む筈もなく意志疎通に限界を感じ始めていた。
もう一つの問題は、封印の解き方。
ぶっちゃけ、中の存在なら分かるかなーと思っていたが、複雑な意志疎通が難しい現状ではそれは無理だ。
つまり、完全に俺だけの力でどうにかする必要があるのだが……、うん、無理だな。
封印の解き方は後ほど検討することにしよう。
ーーそしてさらにもう一つ。
《……………!》
『え? 怒ってるの? ……なんで?』
《…………!》《……!》《…………!》
『うおっ、なんだよ急に!? ごめん、ごめんってば!? だから落ち着けって……』
どうやら封印の中の存在が反抗期に入ったようだ。
何に対して怒ってるのかさっぱり分からないが、とにかく怒ってらっしゃる。
まあ、十中八九、自分の意志がきちんと伝わらないことに怒っているのだろう。
その気持ちは分からないでもない。
……でも、俺に一体どうしろってんだよ…。
とりあえずの問題はこれぐらいか。
てか、問題の殆どが意志疎通がきちんと出来ないことに帰結してしまうんだが……、
とりあえず、その手段だけ先に考えた方がいいのか?
でも、どれだけ頑張っても進展しないんだよなー。
…………………、
…………。
あー、どうすればいいんだろう?
何も思い浮かばない。
封印をどうにかするのが先か、意志疎通の手段を確立するのが先か、
『お前はどっちがいいと思う?』
《………?》《…………!》
うん、分からん。
しっかし、このままって訳にもいかないよな。
何かしらの策は考えないと。
意思疎通……は俺がいくら頑張っても無理そうなのでパス。
となると、残りは封印を解く方法なんだが…。
まあ、簡単には解けるわけないよな? そうなると物理的に破壊してみるか?
根っこで締め付けてみて……、
ーーその瞬間、まるで高圧電流が流れたかのように激しい抵抗が封印を締め付けてた根っこを襲った。
どれくらいの抵抗だったかというと、…実は俺本体にはちょっとビリッときたぐらいの痛さだった。
だが、封印に触れていた根っこは焼き焦げたかのようにボロボロになってしまっていた。
やばっ、なにこれ? 防御機能?
俺は突然のことに戸惑いながらも根っこを修復して、再び封印に触った。……うん、問題ない。
《………!?》《……………?》《……………!》
っと、すっげぇ心配の感情。
どうやら今のは中の存在も分かったらしく、すごく心配してくれていた。
とりあえず、大丈夫だよー、って伝えとく。
うん、大人しくなった。
しっかし、なんだったんだあれ?
俺自身にはそんなに痛みや影響はなかったから未だに実感がないのだが、確実に一瞬で根っこがボロボロになった。
原因は俺が封印を刺激したから。
おそらく、封印を破壊しようとすると自動的に発動するのだろう。
どれくらいの反撃が来るかは分からないが、今回は根っこ一本で済んでよかった。
だが、こうなると物理的に封印を破壊するのはやっぱり無理じゃないだろうか?
これじゃあ根っこが何本あっても足りないぞ。
うーん、手詰まり感が半端ない。
これが機械とかだったら破壊方法が色々思い付くのだが……、
いや、この方法なら封印に対しても有効じゃないか?
防御機能がどう働くか分からないが、やってみる価値はあるのでは?
幸い、条件は揃っているし、もし失敗したらまた別の策を考えればいい。
でも、これ地味に大変だな…。俺、かなり大きくならなきゃいけないし。それに負荷も多そうだ。
それでも現状、これしか方法がないからやらないわけにはいかないのだが……、
《…………?》
ん? 心配してくれているのか?
さっきのやつをまだ……、いや、違うな。
どうやら俺が悩んでいる感情が相手に伝わってしまったらしい。
ふふ、なんだが可愛げのあるヤツじゃないか。
大丈夫だよー、と子供をあやすような感じで伝えたら怒りの感情が返ってきた。
からかったのが、バレたか……。
だが、おかげで決心がついた。
よし! いっちょ派手にやるか!
まずは、未だに貯まりきらなくて貯蓄に流し込んでいるエネルギーを全部、自身の成長につぎ込む。
今は、高さ二十メートル位だからその二・五倍の五十メートルサイズになりたい。
太さも、直径8メートル位を目指したいな。
流石にこれ程の超成長は短時間では無理なので、それなりの期間で行う。
焦りは禁物だからな。
その間、少し暇になってしまうのだが……、意思疎通の再チャレンジでもするか。
出来なくてもある程度のコミュニケーションはとれるだろう。
コミュニケーションは互いを知るためには大事なことだしな。
とりあえずは……、好きな食べ物でも聞いてみるか?
いや、それはおそらく俺に伝わらないだろう。
じゃあ、外に出たら何をしたいかとか……これも無理だな。
あれ? これ案外難しいぞ?
いや、難易度は最初から変わってないのだが……。
でも、最近アイツすぐ怒るから面倒くさいんだよなー。
あー、封印どうにかするよりこっちの方が大変かもしれない。
とりあえずは、さっきからかったのをまだ根に持ってるみたいだから、それのフォローから始めますか。
ちょっと短めです。
あと、主人公の今までのサイズを、高さ二十メートルの直径二メートルから直径四メートルに変更しました。
それと、主人公成長日記のところも、太さ=~メートルから太さ=直径~メートルに変更しました。




