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魔大樹ライフ!  作者: てるてる
11/25

9話 決断



 ーー嫌な気分だ。


 

 封印に触れ、その中の存在の感情を思念として受け取った俺は、眠れない夜を過ごしていた。


 いや、別に今は眠くないから寝る必要なんてないけどね! 夜、眠らないなんて普通にあるけどね!


 …まあ眠れないことはおいといて…、とにかく俺は嫌な気分がずっと続いていた。


 理由は明確。対策も明確。


 理由は知っての通り、封印へ接触した際に受け取った感情の思念。…聞いてるだけで呑み込まれそうになる、そんな思念のせいだ。


 そしてその対策は至ってシンプル。


 ようは、忘れればいいのだ。


 全部忘れてなかったことにする。

 俺はいつも通り、生命維持と成長に必要な分だけを地下のエネルギー溜まりから吸って封印には触れない。触れなければ思念が届くことはない。

 そのまま、これまで通りに過ごせばいい。


 …そうすれば元通りだ。


 ………………、

 …………。



 ああ、くそっ…、まただ。


 また俺は本質から目をそらそうとしている。


 本当は封印から聞こえる感情の思念なんて関係ないのだ。


 …いや、関係なくはないがそれは本当の本質じゃない。


 俺が嫌な気分になっているのは、俺自身にイラついているからだ。

 所謂、自己嫌悪というヤツだ。


 封印から聞こえる悲しい思念。それを聞いて、俺は真っ先に封印から出してあげようと考えた。

 だが、俺の本能は止めろと言う。


 背反する思いが俺の中でごちゃ混ぜになって、それを考えるのが嫌で目を背けている。


 これが俺のイラつき、自己嫌悪の正体だ。


 本当は向き合うべきだと分かっているのに…。



 ーー俺は、俺自身で答えを出さなきゃいけない。



 助けるにしろ、忘れるにしろ、それは俺自身が納得して俺自身の答えを出さなきゃいけないのだ。

 途中で考えることを放棄するのは、答えを放棄するのは逃げでしかない。


 俺は逃げるような存在になりたくない。これは俺の一種の信念のようなものだ。


 …だが、実際には俺は答えを出すことから逃げている。




 ああぁぁぁ! くそっ! 考えがまとまらない!


 落ち着け俺。一旦冷静になれ。



 口がない俺は叫ぶことも息を整えることも出来ないが、代わりに葉っぱが俺の感情を表現する。

 俺が焦ったり混乱したりすると、ザワザワと忙しなく小刻みに揺れるのだ。


 それをなんとか落ち着かせて、再び思考に入る。


 よし、先ずは順番に確認しよう。


 俺はイラついている。イラついている原因は自己嫌悪。

封印の中の存在は、感情の思念を俺に伝えてきて、俺はそれを本能的にヤバいヤツと認識している。


 ただ、ヤバいヤツというだけで絶対に悪だとは限らない。善良な存在の可能性もある。

 だが、善良だったとしても無害とは限らない。


 俺は出してあげたいと思っているが、中の存在の不確定さが俺の判断を躊躇わせている。


 それらのことを考えるのが嫌で、無理やり忘れようとして自己嫌悪に陥り、嫌な気分になっている…と。


 うん。思考が見事に堂々巡りしてるね!


 まあ、確かなのは自分で何かしらの決定を自分の納得した上でしないとこの自己嫌悪、ジレンマは終わらないってことだ。


 でも、自分で答えを出すには判断材料がかけていると俺は思っている。


 なんせ、相手の思念を一方的に聞いただけだからな。


 答えを出すには、俺自身が聞いて判断しなければならない。


 ………まあ、つまりだ…、


 ーー封印の中の存在と会話が必要だと、俺は考えている。


 というか、そもそも会話出来るのだろうか?

 触れることで相手の思念が送られてきたんだから、俺の方からも同様のことが出来るのでは?というのが俺の推測である。

 ……そうであるのだが…。


 いやー、でもなー…。会話しなきゃ駄目か?


 封印の中身がヤバいヤツなのは俺の本能からして確定じゃん。そんなヤツと会話? 無理無理無理!


 一方的に聞いただけでその思念に呑まれそうになったんだぞ。会話なんてしたら洗脳されてしまうのでは?


 いや、そもそも会話なんて本当に出きるのか?

 こちらの思念を相手に送れるかも不明だし、送れたとしても会話になるのか?


 あー駄目だ。だんだん面倒になってきた。これやっぱり放置でいいんじゃないか?

 その方が平和だし、安全だし。


 …いやいや、だから自己嫌悪に陥っているんだろうが。ここで確実に答えを出さなければ!


 ……でもなー、




 俺は結局、長い時間悩み続けることになった。


 どれくらい長い時間かというと、実に数日間!


 詳しい日数は俺も分からないが、気づいたら日が沈んでたとか昇ってたとかを何回も繰り返していた。


 そんな長考の末、俺は出した結論は『取りあえずやってみよう!』である。


 最終的には自己嫌悪力が勝ったのである。…あれは長い戦いだったなー…。


 まあ、決まってしまったものはしょうがない。次はそれをどのようにして実現させるかを考えよう。


 まず、会話の第一関門! 俺の思念は相手に伝わるのか?という問題。


 これはやってみないと分からない。ぶっつけ本番な!


 次に、会話の基本! 言葉のキャッチボール!


 …これもぶっつけ本番だな!


 次に、封印の解除方法! ……これもぶっつけ本番だな?


 なんか俺の計画行き当たりばったりで、むしろ無計画なのでは?


 いやいや、そんなことはない! それしか選択肢がないだけだ


 とりあえず、考えても無駄なことが分かったので、ここは勢いに任せてやってしまおう!



 まず、封印へ接触! これは楽勝。


 同時に封印の中の存在から感情の思念が一方的に伝わってくるが全部無視だ。


 次に、なんとか俺の考えを思念として相手に送る!


 これは数撃ちゃ当たる戦法でとにかく色々やってみるしかない! …えーと、取りあえず念じてみる? 普通にいつも通りの思考で話しかける? 先ずはノックかな?


 色々やっていたのだが、そこで俺は気づいた。


 あれ? 相手から思念が送られてこない? これは何かが相手に伝わったのでは?


 おおー! やってみるものだ! …でも、一気に色々やりすぎてどの方法で相手に俺の意志が伝わったのか分からない。

 ここは最初からゆっくり一つ一つ反応があるか確かめながら……、


 《………?》


 おっ、やっぱり通じてた。なんだ、普通に念じるだけかー。


 取りあえず、こんにちわ、っと。


 《…………?》


 …挨拶っぽいな? やっぱり、そういう感情だよー、というのは分かるけど正確に話すのは難しいな。

 そもそも、俺の思念もちゃんと言葉で届いてるか分からないし。


 まあ、なんとなく思いが伝わるだけでも十分か。


 じゃあ、次は本命の質問だな。ここから出たいか?っと。


 《…………?》


 ん? 疑っているのか? まあ、封印の解き方なんて俺にも分からないが…。取りあえず意思確認は大事だろ。

 もう一回、ここから出たいか?っと。


 《………………!》《………………!!》《……………!》


 って、うわっ! 一気に来た。


 びっくりして封印から根っこを離してしまった。


 もう一回…、おおー…すごい出たがってる。


 めっちゃ必死なのが伝わってくる。

 気を抜くとその感情に呑まれてしまいそうだ。


 …やはり、ヤバいヤツなのでは?


 俺が封印を解くことを前向きに考えてる時点ですでに相手に洗脳されている可能性もある。

 そもそもファーストコンタクトの時点で操られているかも…、


 いや、決めつけは良くないな。


 そこも含めて自分で判断するって決めたんじゃないか。


 まあ、洗脳されたらされたでもう俺にはどうしようもないだろうしな。

 流れに任せるさ。


 俺が聞きたいこと…、お前は悪い存在か?っと。


 《ーーー》


 ん? 返事が来ない?


 まあ、急に自分が悪いヤツかって聞かれて即答できるわけないか。

 …いや、そもそも悪いヤツは自分を悪いヤツって言わないんじゃないか? これ質問の選択ミスったか?

 これで悪者じゃないって言われても俺信用できないんじゃ…、



 そんなことを俺が考えていると、ふと、一つの感情が俺に伝わってきた。


 ーー悲しい、と。


 ……………。


 ……ああ、バカだな俺は。


 あんな質問されて、悲しいと思うヤツが悪の筈がない。


 断言できる。あれは相手の純粋な気持ちだった。



 ……出してやるよ…。



 俺が封印を解く方法探して、お前をそこから出してやよ!




 ーー答えは決まった。


 俺がしたこの決断が、後に世界を巻き込む重大な問題に発展してしまうのだが…、今の俺はそれを知るよしもなかった。




 ーー主人公成長日記


 大きな決断をしました。

 

 精神力が少しだけアップしました。




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