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 そんな感じで、何となく上の空になっているコハクの注意を引こうとしていたら、いつの間にか文化祭が終わっていた。前日までの準備期間も文化祭当日も、僕はほとんど覚えていない。

 当然ながら、学級委員であるコハクは、僕と違って忙しそうにしていた。それでも雪景色のような瞳の奥にもやがかかり、目の前の文化祭に集中できていないことが僕には分かっていた。

 レイは隣にいるようで、もうここにはいない。

 授業中も休み時間も放課後も、レイはコハクに素っ気ない態度をとり続けた。きっとコハクのことを一番に考えた結果、レイは彼女から手を引くことを選んだのだと僕は思った。


「あれ? レイくんは?」


 放課後、気づかないうちに帰ってしまったレイを探して、コハクが僕に尋ねた。


「レイなら先に帰ったよ」

「えっ、そうなんだ……」

「なんだか最近、すごく忙しそうにしているよね。さて、僕らも帰ろうか」


 曇り顔のコハクをよそに、僕はリュックに荷物を詰めて立ち上がる。しかしコハクは思いつめた表情のまま、椅子から腰を上げない。


「コハク?」

「私、なにかレイくんに嫌われるようなことしたかな」

「え? どうしてそう思うの?」

「だって最近、一緒に帰ってくれないし、交換ノートだって文化祭期間中に辞めちゃったから。なんとなく距離を置かれているように思えて」

「コハクが文化祭で忙しかったから、遠慮したんじゃないかな」

「でも文化祭が終わってからも、こんな調子だよ。ねえ、ヒカリくんには何か言ってなかった?」

「いいや、なにも。そもそも僕には、レイがコハクに対して距離を置いているようには見えないな。レイって昔からあんな感じじゃない?」


 僕の言葉にコハクは寂しそうに納得しかけた。

 レイの上手いところは、文化祭期間を利用してゆっくりとコハクから離れていったこと。そして彼がもともと社交的ではないために、その変化がコハクにも微かにしか感じられなかったことだった。

 巧みな恋敵のおかげで、僕はコハクと二人きりでいられる。


「そう……、だね。そうだよね、ごめん。急に変なこと言って」


 コハクは自分自身を説得するように頷いて、やっと椅子から重い腰を上げた。


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