友情
翌朝、ぐっすり眠り疲れの取れたトゥールは先に起きていたルアを入り口の近くで見つけると声をかけ側へと駆け寄った。
「おはよう!」
「ああ、眠れたか?」
「うん、良く眠れたよ。ルアは?あまり顔色が良くないけど具合が悪いの?僕、何か手伝うよ!」
トゥールは見よう見まねで入り口の脇に束ねて置いてある木の皮を持って来るとルアの隣でカゴを編み始めた。
幸いにも手先が器用だったトゥールは編み始めには手間取ったもののすぐにコツを掴むと目を飛ばす事なくすいすい編み出した。
黙々と作業をする二人に会話は無く、だからと言って重々しい空気が流れるわけでもない二人だけの静かな空間は意外にも心地良く、お互いの存在だけを認め自己の意識に集中出来る時間となっていた。
すると一つめを完成させたルアが口を開いた。
「確か、前に私に家族の事を聞いていたな。」
「うん、聞いたけど…。」
トゥールは急に話しかけられビックリしたのと同時に自分が聞いてしまってもいい話なのかわからず返事に困ってしまった。
だが、時折見せるルアのひどく哀しそうな顔やミーゴの話を聞くともっとルアの事を知りたいと思うのだった。
そしてその答えには、やはり自分と重なる部分がありルアに対して不謹慎だとわかりながらも親近感を覚えずにはいられなかった。
「死んだんだ、みんな。」
「そう…」
「僕と一緒だね…」
トゥールがそう言うとルアはそれまで俯いていた顔を上げキッと睨みつけると大声をあげた。
「どこが似てるんだ!?お前には父親が居てお婆さんも生きてる、お前は自分が可哀想だと周りに甘えて生きているだけじゃないかっ!」
「え…」
「おい!ルア、やめろっ!」
「離せっ!お前に何がわかるっ!?」
「家族の事はこいつには何の関係も無いだろ?顔でも洗って頭冷やして来たらどうだ!?」
大声に気付きミーゴが慌ててルアを止めに入るとルアはミーゴを手で払い退け切らした息を大きく肩を揺らし整え外へと出て行った。
「気にするな、ただの八つ当たりだ。」
ミーゴはトゥールにそう言うとルアの出て行った方を見つめてこう続けた。
「あいつも訳ありでな、家族を亡くしたのを自分のせいだと思い込んでるんだ。だから簡単に一緒にされたく無かったんだろうな…だけど今のはあいつが悪い、気を悪くさせてしまって悪かった。」
トゥールは伏し目がちに下を見ながら顔を強張らせ話し始めた。
「ううん、僕が悪いんだ。だって僕、心の中で酷い事を思ってた。ルアの家族が死んだって聞いたとき、僕…嬉しかったんだよ。ルアも同じなんだって、そう思いたかったんだ。」
「いやぁ、でも…ん〜、そうなのか?」
トゥールの思わぬ本心にミーゴはどうしたものかと頭を悩ませ思わず口を閉ざした。
(こいつにこんな一面があるとは…)
昔、人間について話を聞いた事があったがまだ十くらいの子供の心に潜む暗く濁ったものを見たミーゴは人間という生き物を恐ろしく思ってしまった。
「僕、ルアの所へ行って来るよ。」
トゥールはルアの元へゆっくり歩いて行った。
その後ろ姿はやはり、その年頃に合ったもので何も変わった様子はなくミーゴは背中を見送りながらもトゥールに対して不安を抱かずにはいられなかった。




