友情2
先ほどまで降っていた雨は止み、ルアはぬかるんだ地面にしゃがみ込むと濁った水たまりに映る自分の顔を思い切り手で払いのけた。
水たまりに映る顔は酷く歪み一度消えてはまた暗く沈んだルアの顔を映し出していた。
そこへ後を追ってトゥールがやって来ると、落ち着きのある表情はなぜかとても大人びて見えいつものトゥールとは少し違うようにも感じられた。
「ルア、さっきはごめんね。」
「いや、私も悪かった。」
気まずそうに顔をそらしながらルアは小さな声で口早に謝った。
トゥールはルアの後ろに立ったまま風を受けサラサラと髪が揺れると、ゆっくりと思い出すように話し始めた。
「あのね、僕のお母さんが死んだのは僕のせいなんだ。僕を産んだから死んじゃったんだ。」
「え…?」
「もともと体が弱かったみたいなんだけど、僕を産んで無理をしたから、僕が赤ん坊の頃に死んじゃったんだって。だからね、僕は生まれてこない方が良かったんじゃないかって思うんだ。そうすればお母さんは生きられたのかも知れないし。」
トゥールはルアと同じように水たまりに向かってしゃがむと悲しそうに笑ってみせた。
「なんで笑っていられるんだ…?」
ルアはそう言うとそれ以上言葉を続ける事は出来なかった。
事情は違うがトゥールが抱えた母親を失った悲しみと感じている責任はルアにもよく理解する事が出来、確かに共通するものがあったのだ。
しかしトゥールはその質問に答える事はなく静かに目の前の水たまりを見ていた。
「虹だ!」
二人はしばらく黙っていたかと思うと水たまりに映った虹を見つけ一斉に空を見上げると顔を合わせて微笑み合った。
空に架かる虹は綺麗な弧を描き水に映され曖昧だった色彩は本来の色を取り戻すとその姿は何かの象徴なのかと思わずにはいられない程心惹かれた。
部屋へと戻るとミーゴを交えこれからの事について話がされた。
不安が全く無いかと言われれば嘘になるがトゥールに今までのように怯える素振りは見られずルア、ミーゴを信頼している様だった。
「まずは東の森にいる"あの人"に会い行く。"あの人"ならどうすれば良いのか教えてくれるはずだ。」
「まさかアイツの所か!?俺は御免だぜ。」
ミーゴはあからさまに嫌がるとトゥールの背中へ回り隠れてしまった。
「なら、ミーゴはここに残れ。これはアレセンシアにとって重要なことだ、"あの人"なら知っている。」
「あの人って?」
「行けばわかる!」
トゥールは恐る恐る聞いてみたが二人のやり取りに案の定、言葉は飲み込まれ投げ捨てたような返事しか返って来なかった。
「説教臭くて嫌なんだよなぁ、あのオヤジ…」
後ろからボソッと呟いたミーゴもそれ以上はルアに言い返せず大人しく付いていく決心をするしかないようだった。




