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トゥールとアレセンシアの本  作者: 川島 蛍
13/17

声の主4

ルアの住む家は固い地面を削り中を石と木材で補強して造られた風変わりな家で中はガランとしていてずっと奥まで空洞が続き一人で暮らすには少し広過ぎるように思えた。

それでいて生活感も殆どなくルアがここへあまり帰っていないのが一見してわかった。

朝から歩き通しだったトゥールは敷かれた干し草の布団を見ると疲れていたせいかすぐに眠りに就いてしまった。


「ここは久しぶりか?」


「あぁ。」


「大丈夫なのか?」


「…。」


いつになく真面目な顔つきでミーゴが尋ねるとルアも静かに答え二人の間に少し重い沈黙が続くとミーゴはまたいつもの明るさでおどけて見せながらトゥールの布団へ潜り込んだ。

ルアも久しぶりの我が家を懐かしみながらぐるりと見渡し壁に手を触れると首飾りを握りしめて小さく呟いた。


「ただいま。」


ルア達以外いない部屋に風の音だけが響きドアがカタカタ揺れるとルアには不思議と誰かがおかえりと言っているように思えた。

そしてその晩、ルアは懐かしい夢を見た。

それはまだ子供の頃のもので父や母、兄弟達に囲まれ楽しく過ごしていた日々だった。

当たり前のように過ごす日常は時に退屈で憂鬱にも感じられるがこの時のルアにはこの時間がどれ程かけがえのないものなのかわかってはいなかった。

成長したルアの幸せな時間はあっという間に過ぎ、いつからか降る雨音に気付きドアを開けると外は一気に暗闇に包まれそれまでいたはずの家族は誰もおらずルアだけがその場に立って居た。

ルアは外へ出て家族を探してみたがどうしても見つける事は出来なかった。

激しさを増す雨に加え雷が近くへ落ちる衝撃でルアはあの時の光景を思い出し叫び声をあげた。

目を覚ましたルアは身体中に汗をかき自分がうなされていた事に気が付いた。


「くそっ、絶対に許さないっ。」


握りしめた拳を大きく振り上げ布団を叩き被せた布の下から干し草がパラパラとこぼれ落ちるとルアは遠くを見つめた。

ドアの向こうからはあの時と同じ雨が降りだしていた。

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