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69.朱い太陽と赤い月

『そん、な……』


 ウルフレットの機体、ウールヴヘジンは、チョルヒの朱いヴァンガードの一撃によって激しく損傷。そして、自ずと膝を突いて倒れた。


 これを見ていた、遠くで機体に乗って待っている【チーム・トランス】のメンバーは、

『う、ウルフレット様!?』

『そんな、あのウルフレット様が……』

『待ってください! 今私たちが助けに行きます!』

 自分たちのリーダー、ウルフレットを救いに行こうとする。


 ウルフレットは彼らに叫ぶ。

『来るな! これ以上恥の上塗りをするな!』


 この命令に従い、【チーム・トランス】メンバーは停止した。


 直後、チョルヒは、ウルフレットに言う。

『まず、申し訳ございません。私が、ウールヴヘジンをここまで大破させてしまって』


 ウルフレットは悲痛に満ちた声をしてつぶやく。

『……俺は、何も出来なかった……英雄にもなれず、化神官にもなれず、挙げ句の果てには、あれ程『救う救う』とほざいていたイズセラを、逆に滅ぼす始末……ハハッ、ハハハ……俺って、一体何の為にここまで頑張ってきたんだろうな……』


 ウルフレットは、まだ動くウールヴヘジンの右腕をどうにか動かし、レーザーブレードをチョルヒの手前に突き刺す。


『もう俺は負けた。だから頼む、『イズセラの英雄』さん。これか斧か銃……いや、何を使ってでも良い、俺の頭を冷やさせてくれ』


『イズセラの英雄……それは誰ですか?』


『チョルヒ、お前だ。さぁ、やれ』


『……腹が立つかもしれませんが。あえて言わせてください。私は、イズセラの英雄と言えば、ウルフレットさん、あなた以外に考えられません。

 だってあなたはイズセラで誰よりも頑張っていたんですから。

 あなたがガイオンさん、キラリエルさん、デリトソースさんたちから【チーム・モブ】を守ってくれたおかげで、大失敗をして居場所を失った私が、居場所を得ることが出来たんです。

 あなたがガイオンさん、キラリエルさん、デリトソースさんたちのせいで歪んだイズセラを正そうとしていたのを見て、いつか大失敗を巻き返そうと思って、私はここに居続けられたんです。

 そして、あなたがいたから、私はこうして、過去を乗り越えて、化神官になれたんです』


『……たった、たったそれだけじゃねえか。それで、俺を慰めたつもりか……ふざけるな。

 俺は何も出来ていない……そんなので、『英雄』と呼べるわけない……なのに……そう無理に褒めるような事言って、俺のこと逆撫でするんじゃない……』


『……英雄という言葉自体には、何の意味も無いんです。自分がしたいことを貫き通した人を、正しいと思った他人が、勝手にそう呼ぶものなんです。

 なので、私は、あなたをイズセラの英雄と呼びます』


 チョルヒは赤いヴァンガードの左腕を動かし、手前に刺さったレーザーブレードを倒し、左手をウルフレットに向ける。


『これからもイズセラの為に戦いましょう。ここまでの暴走は忘れます。他の方々が何か言ってきたら私がいくらでも謝ります。だから……お願いします、『英雄』を辞めないでください! ウルフレットさん!』


 ウルフレットは、しばしうなった後、

『……ごめんなさい……チョルヒさん……エドウィンさん……俺が、余計な欲を張って、あれだけ大切にしてたイズセラ共々、やつあたりして……本当に、ごめんなさい……!』

 と、ウールヴヘジンの操縦席の中で、大泣きしながら叫んだ。


『でしたら、これからも、頑張ってくれますか……イズセラの英雄、ウルフレットさん』


 ウールヴヘジンの右腕は、赤いヴァンガードの左腕へと伸び、二つの機体の手が、互いに相手の手を握る。


『はい……イズセラの英雄、チョルヒさん』


 かくて、イズセラ最後の反逆者は、アカいタイヨウの元、再び反逆し、再びイズセラの英雄として舞い戻ったのであった。


『……さて、後は……ありがとうございます、ネロアさん!』

 チョルヒは、ネロアとギビーが隠れている場所を向き、こう礼を述べる。が……


『あれ、ネロア……さん?』

 そこには、ギビー一人しかいなかった。


『ギビーさん。ネロアさんはどこに行ったのですか?』


「ああ、ネロアさんなら、だいぶ前――ウルフレットさんと戦い始めた頃かな――にどっか行きました」


*


「結局、キラリエルも、デリトソースも、ウルフレットも、役立たずだったか……クソが!」


 イズセラの名も無き雪原を、西へと走る装甲車の中で、男はぼやく。

 男の名前はギアディオ・テクノロジオ。

 イズセラと西隣の国――時国【ランニバーニ】を治める八ギルドの一つ、【テクノロジオ連合】マスターにして、キラリエルとデリトソースをそそのかし、イズセラの化神官の座を横取りしようと企んだ、今回の黒幕である。


「アイツらがもう百倍賢く、自分のために馬鹿みたいに働いてくれれば、絶対自分が化神官になれたというのに!

 それで自分はイズセラの兵力を全て、憎きランニバーニ化神官、ジュリクスにぶつけ、さらにランニバーニも自分の物に出来たかもしれないというのに!

 無能が、無能が、無能が! キラリエルもデリトソースも口先ばかりで雑魚殲滅以外何も出来ず、イズセラの化神官はポッと出てきた小娘に奪われ、最後の望みだったウルフレットはしょーもない戦いと、しょーもない改心しただけで終わり! 逆にわざわざこんな所来た自分がみっともないと思ったくらいだ!

 イズセラめ、よくもここまでこのギアディオの期待を尽く裏切ってくれたな! 許さんぞ! そうだ! 今のイズセラは、この内乱のせいで戦力を大きく失っている! これならば自分のギルドの戦力だけでも、イズセラを征服出来るかもしれない!

 ようし、決まりだ! おい運転手! もっと早く車を飛ばせ! さっさとランニバーニ帰って、さっさとイズセラをぶんどる用事があるんだからな!」


「はっ、かしこまりました」


 ギアディオの希望通り、彼を乗せた装甲車はさらに加速し、ランニバーニとの距離を縮める。が……突如そのタイヤの一つに、闇属性を帯びた剣が深々と突き刺さり、走行不能になる。


「大変ですギアディオ様。タイヤがパンクしました。直ちに、スペアタイヤに取り替えますので、少々お待ち下さい」


「はぁ!? これは装甲車だぞ!? タイヤだって防弾仕様なんだろ? なのに何でパンクするんだよ!?」


「それは、僕(やつがれ)が所以である」


 ギアディオと、その他装甲車に乗る者は、左側の窓を見る。黒鎧群青髪の少女が、ワイヤー付きの剣を引き戻しながら、悠々と歩いてくる。


「あの姿……噂に聞いた事があるぞ! 奴はあの大国ミレアと化神官ヴァイスをぶっ倒した、小国トードイスムカの化神官……」


「ネロア・ルォーナピアナ! それが我が名である! 問おう、貴様らは何故此処に居る……その身なり、明らかに機国イズセラの物では無いが」


 ギアディオは言い返す。

「それはこちらの台詞ですよ。何でトードイスムカの化神官がここにいるのですか?」


「時国ランニバーニの化神官であるジュリクス殿により、トードイスムカに課せられし国交断絶の約定を解錠せん為、各国の化神官を訪ねて廻る――それが僕の天命だ。

 そして今宵、僕はイズセラの民の願いを聞き届け、極悪非道を誅しているのだ」


「ああ、そう言えばそんな話、ジュリクスから聞かされてたな、忘れてた……なら何故、この車のタイヤをパンクさせる必要があるのです? さっき貴方が言った通り、私たちはランニバーニの人間で、イズセラの反逆者ではないです」


「……では、何故貴様らは、今宵、イズセラにその身を置くのだ?

 その上、この車、外装が重厚堅牢で、出来が細密だ……あたかも、是が非でも守らねばならない要人を乗せる天命を賜った、イズセラの産物であるかのように見えるが」


「私は、イズセラに使者として赴いているのです。それとこの車は、イズセラから友好の証で譲り受けた物です」


「ならば何故、使者が今宵、混迷極めるイズセラの地を疾駆する。尋常ならば、かような事態の最中に居る使者は、万が一に備え、いずれかに防護されるか、いざという刻の為、人質となるかの双択が道理だろうに……?」


「それはデリトソース様とキラリエル様が考えてなかったからかと……」


「ともなれば、何故、貴様は戦地イズセラを疾駆するのか? 無謀ではあるまいか? 幾らランニバーニの使者、善悪が曖昧となる戦禍中なれば、何時何者に討たれても平然と成るのだぞ。

 されど貴様はこうして無傷で有り続ける……さては貴様、予め乱が起こる運命を、既知としたか?」


「ネロアさん、何故ランニバーニのいち使者である私が、イズセラ内の反乱を察知出来るのですか? それに、もし仮に察知出来てたら、もっと早く逃げ出しますよね?」


「『既知としたか?』とは、左様な意義で申した訳ではない……無駄話が過ぎたな、結末を告げる、『貴様、今宵の黒幕であるな』!?」


「はっ、はぁぁぁ!? 何ですかその突飛した推論は! こんな私が何故、イズセラの反乱なんかに……」


「先刻、ランニバーニの化神官、ジュリクス殿より、『配下がイズセラの要人と陰謀を企てている』との報告を受けた!

 その配下の名前は、ギアディオ・テクノロジオというらしい。

 貴様がそのギアディオであるとすれば、今宵の貴様の言動の不自然と、今宵の悪逆無道の蜂起の理由、全ての辻褄が合うのだが?」


「……」


 ギアディオは運転手に、『車を飛ばせ』と目で訴える。直後、運転手の困った顔を見て、この車はパンクしていたことを思い出す。

 

 もう逃げられない――そう悟ったギアディオは、自ら車を降り、ネロアと目を合わせて、

「テメェ、これ以上好き勝手するならどうなるかわかってんのか!?」

 己のこめかみに銃を当てがいながら、怒号を浴びせる。


 ネロアは、警戒して剣を構えながら、

「何をする気だ……貴様」


「貴様ではない! 俺は、この騒動の主謀者、ギアディオ・テクノロジオだ! お前の推理は見事正解だ!

 どうやらさっきの話からして、貴様はジュリクスと共謀して俺の悪事を暴こうとしていたようだな!

 だが、そうしたところでどうにもならんぞ!? 国外まで使ってジュリクスの政権打破を狙っているのは俺だけじゃない! 他のギルドも並行して作戦を行っているんだ!

 もうここまで来たら俺は罪を認めるさ! けど、ただでは死なん! お前たちの都合のいいようにされる前に、俺は俺を撃つ!

 そしてリスポーン後に、俺は貴様をありったけ極悪非道に仕立てたシナリオを世に広め、俺は悲劇の英雄となる! ついでに死国トードイスムカを国際社会から完全に孤立させる!

 この世の中はな、たとえ嘘だとしても、それが大多数の人間にとって都合がよければ、それが真実になる法則があるんだ! これを利用して、俺たちは悲願のジュリクス打倒を成し遂げるんだ!」

 と、聞かれてもないようなことまでベラベラと唾を飛ばしながら語った後、ギアディオはより強く、こめかみに銃を当てて、


「わかったか! それが怖かったら、さっさと俺を自由にしろ!」


 そう命令された、ネロアは剣を納め、

「ならどうそ、貴方の望むようにしてください」

 と、諦めたように言った。


「は……口調が変わった……?」


「ただ、これだけはわかった上で帰ってください、例え世論が向かい風になろうとも、僕とジュリクスさんは引き続き戦い続けますよ。どれだけ遠くても、いつか、皆さんに納得してもらえるようにね。

 あと、一つ余計なお世話をさせてください。正直で思いやりのある人の方が、印象はいいですよ」


「……マジで余計なお世話だな! ゲーム内に限らず、現実世界の大企業とかを束ねる人はだいたい性格が良いんだ! つまり、テクノロジオ連合っていう大ギルドのマスターを務める俺も、性格が良いんだよ!

 テメェ俺のことおちょくってんのかこのスカポンタン!?」


「……確かに、そう言われますとそうですね。本当に余計なお世話をしました……」


 ここで、【チーム・トランス】の機体達と、赤いヴァンガードが、ネロアとギアディオと装甲車を囲んで立つ。


「……貴方の考えをより沢山の方に知ってもらおうと、イズセラの人を集めてしまって」


 チョルヒと共に、赤いヴァンガードの中にいるウルフレットは、ギアディオに警告する。

『話は全て聞いていました。今回は自国のことを優先したいので、ランニバーニ・プレイヤーであるあなたの詮索は一旦止めておきます。

 ですが、イズセラはその気になれば、どうとでも出来ることを、お忘れなく』


「……う、う、う!」


「僕はこれ以上貴方に言うことはありません。どうぞ、ランニバーニへとお帰りして構いません……よね?」


 赤いヴァンガード内のチョルヒとウルフレットは、口を揃えて、

『『はい、気をつけてお帰りください、ギアディオさん』』


「……おい、さっさとスペアタイヤに替えろ!」

 

 ギアディオの部下が装甲車のパンクしたタイヤを替えた後、ギアディオは車内で大層不愉快な顔をして、ランニバーニに帰っていった。


*


 ロジスティクス・サーガ内のとある空間より。


「強大な悪党、かつての友、卑劣な黒幕……それらを全て超えた……くう〜、やはり人の情熱は面白いなぁ!」


「機神トドッバ・マ、貴様はあれこれ人に関与し過ぎだ。それはロジスティクスの神としては不良だぞ」


「僕はただ人に人が持ってる物――情熱を、改めて教えただけだぜ? 人が人らしくいられるようにする、それが僕たち神々の役割だと思うんだが? むしろ常にジメーッとして、約一名を除いて特に何もしてあげないお前の方がどうかしてると思うぜ? 死神ホイプペメギリさん?」


「それは……一理あるやもしれんな」


「ま、僕の方もちょっと、人に要求し過ぎたかもしれないな。イズセラに化神官が就任するまで、かなり時間を開けちまったし……ほんと、ようやくチョルヒに就いて貰って嬉しいぜ、これでようやく八国の化神官が出揃ったな」


「尤も、この八人の化神官が皆、活発に動くのは、まだ時間がかかるだろうがな……」


*


 イズセラの大反乱の翌日。イズセラの首都【鋼都】の、【チーム・モブ】の管轄区域にて。


「ネロアさん、これで大丈夫でしょうか……?」

 チョルヒは恐る恐る、直筆の『許可証』をネロアに渡す。


 ネロアとレイザックは、チョルヒと、後ろにいるエドウィン、ギビー、マリック、グレゴリー、その他【チーム・モブ】のメンバーたちに礼をする。

「ああ、重畳だ。感謝する」

「俺からもありがとうございます。短い間ですけど、お世話になりました」


 エドウィンは聞く。

「本当にもう帰るのですか? もう少しゆっくりしていても良いんですよ?」


「僕(やつがれ)は丁重に遠慮する。イズセラは早急に、昨夜の戦痕を癒やさねばなるまい。僕たちは、これ以上ここで世話となり、それを妨げる運命を拒絶したい」


「俺たちの目的は『この許可証をもらう』ことと『ランニバーニの脅威からイズセラを救う』ことですからね。それが終わったら、後は用はありませんから」


 エドウィンは少しだけ笑って、

「そう……かもしれませんね。わかりました、どうかお元気で。またいつか会えれば、その時はその時で」

「「「お元気で」」」

 ギビー、マリック、グレゴリーと共に、二人に別れを告げた。


 さらにチョルヒから、

「ネロアさん、レイザックさん。今回は本当に、ありがとうございました。あなたのおかげで、私は大きな一歩を踏み出せました!

 これからは二人の言葉を大事にして、イズセラの化神官として、イズセラをどんどん良くしていきたいと思います!」


「ああ、それが貴方の天め……いや、ここは普通の口調にしましょう……はい、僕(ぼく)も、トードイスムカから応援します!」


「俺も期待してますよ、イズセラの大復活!」


「はい……ありがとうございます!」


 ここでウルフレットが、ネロアとレイザックの元にやって来る。


「トードイスムカ行きの飛行機の準備が完了しました。ネロアさん、レイザックさん……本当に今帰るのならば、すぐに案内しますが、どうします?」


「頼む」


「わかりました、ネロアさん……それと、先日はみっともない真似を見せて、本当に申し訳ありませんでした」


 ウルフレットはネロアへ、深々と頭を下げる。


「ウルフレット殿……貴方はこれより、如何なる運命を辿るのだ?」


「これからは【チーム・トランス】のリーダーとして、堅実に、イズセラを支えていくことにします……それで贖罪をしていきます」


「そうか……期待するぞ、イズセラの英雄よ……では、案内を頼む」


「……は、はい! ありがとうございます!」

 再び、ウルフレットはネロアヘ、深々と頭を下げる。


「念には念を……それでは、イズセラの皆さん! 今回は本当にありがとうございました!」


 ネロアとレイザックは、イズセラの人々に盛大に見送られながら、ウルフレットに着いていった。


 そして、ネロアとレイザックが遥か遠くに行った所で、チョルヒはエドウィンに、

「……すみません、エドウィンさんに折り入ってお願いしたいことがあるのですが」


「ん? どうした?」


「私、【チーム・モブ】を抜けたいです」


 この急なチョルヒのお願いに、エドウィンら【チーム・モブ】の面々はざわつく。


「チョルヒさーん、急にどうしちゃったんだよー」

「一体どういう訳で、ここを抜けるって訳なんだよ、チョルヒ!」

「これだけ思い出深い【チーム・モブ】を抜ける……流石に考え無しじゃないですよね、チョルヒさん」


「はい、私はこれから化神官として、イズセラを引っ張っていくことになります。けど、そんな人が、一つのチームに居るのはおかしいと思うんです。

 化神官はイズセラというチームのリーダーですから。だから、私は【チーム・モブ】を抜けたいんですけど……いいですか?」


 エドウィンはしばし、『チョルヒはチームの誇りなんだけどなぁ……』と、小声で不満を漏らした後、

「……たまには、ここに帰ってくるんだよな?」


「はい、【チーム・モブ】は、私の実家のような物ですから。それは絶対に変わりません」


「……わかった、今まで、ありがとう」


「いいえ、どういたしまして」


 こうしてイズセラは、朱い太陽と赤い月、それと死神の手助けにより、闇を抜け出し、眩い発展を目指し、歯車を再起動させたのであった。


*


 大陸南西部――術国【イペファワエゼ】の首都【啓都】にある校舎にて。


「ヒドゥニルン学級長! 今日もオレっちに色々教えてくれて、ありがとうございました!」


「ま、当然オブ当然っしょ。アンティル君はわざわざトードイスムカからイペファワエゼに来て勉強しまくりする、激熱心な奴だかんね。これ千パー世話焼かなきゃね」


 ヒドゥニルン、と呼ばれた、緑色のパーカーめいた魔導着を着る、つむじ風のような癖がある緑髪をした青年と、アンティルと呼ばれた黒コートの少年は、雑談を交わしながら廊下を歩いていた。


 しばらくすると、二人は広場のような場所にたどり着き、

「あ、学級長。そういやこのUSBメモリ、一体何なんですか?」

 その中央に置かれた、USBメモリのような形と大きさの、プリズムめいて輝く物体が入ったガラスケースの前で足を止める。


「これ、『トパライザ禁書』って言うの。この学校を創った奴が作ったっていう、めちゃくちゃすごいこと書かれてあるらしいんだけど、あんまりにもすごいこと書かれすぎて、手に取ると魔力全部吸われてご臨終しちゃうって奴」


「ひえぇ、そんなヤバい代物なんですか……」


「けどけど、これを読めれば一流通り越して零流の魔法使いになっちゃうって話もあるけどけど、どう、アンティル君? 読んで見る?」


「今の説明聞いて読む奴なんていると思いますか?」


「いないだろうねー。てか、いたら困るから、こうやって保管されてある訳だし。ま、いずれ読めたらいいなー、っていう目標的な感じでよろしく」


「はい、わかりました!」


 二人は再び歩き出し、ガラスケースを横切る。


(ネロア、オレっち、絶対強くなるし、イペファワエゼの化神官から認可状貰うから、待っててくれよ……)


【完】

ロジスティクス・サーガ・データベース


■キャラクター紹介

【チュ・チョルヒ】※漢字表記だと朱鉄姫

 分類:プレイヤー

 所属:機国イズセラ

 レベル:46

 ジョブ:【職人】/【化神官】


 ようやく機神トドッバ・マの思いを受け入れたプレイヤー。

 ロボットアニメが純粋に好きな大人しい少女。 しかし、国の大敗の原因となり、権力者からどれだけ不遇に扱われ、長らく搭乗を拒んでいた。

 だがそれでも、ロボットに対する情熱は全く捨てようとしなていかった。


 イズセラの【職人】は、搭乗するロボットの、どのステータスも平均的にカバーしやすい性質を持つオールマイティタイプ。

 【チーム・モブ】の工場に鎮座していた、記念すべき一号機の【ヴァンガード】を駆り、国の危機を救った。

 トドッバ・マより賜ったスキルは【機神の激烈】。

 これにより搭乗する機械の速度を三倍に引き上げ、並のプレイヤーでは全く対処できない攻撃を繰り出せる。


 余談ですが、現行の化神官は全員、何かしらの色の名前が入っているという法則があります。

 しかし、この法則によって名前だけで誰が化神官であるかわかってしまうという弱点がございました。

 そのため、あまり聞き馴染みのなさそうな韓国語の『朱(チュ)』を名前に入れて、できる限り彼女が化神官候補であることを隠そうとしていた次第です。

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