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ロジスティクス・サーガ ――死せる神と、外道の正義――  作者: 都P
CHAPTER5 ロジスティクス・サーガ最強のプレイヤー
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51/136

51.暗雲が明ける寸前

 第二回戦第三試合、『【トードイスムカ化神官】ネロア・ルォーナピアナ VS 【双子星竜】ノーヴァ・ハルモニア』。

 ノーヴァは、手なずけたモンスター二体を融合させるスキル【双子星の竜眼】を持つ。

 そのスキルで創り上げた強力なモンスター【ファイア・サンダー・ドラゴン】を暴れさせて、ネロアに立ち向かった。


 だが生憎、ネロアはかつて凶悪なモンスターに立ち向かうことをメインとした、恩人アビスが率いる変態ギルド【悲劇の演出団】に属していた経験と、化神官になる際の試練で計七体のボスモンスターと戦った経験がある。


 ネロアはこの経験を元に、【ファイア・サンダー・ドラゴン】を楽々攻略し、ノーヴァを倒したのだった。


 続いて第二回戦第四試合、『【乙女星竜】アルトリウス・ノープライド VS 【ネロアの側近】レイザック』。


「うっし、今回も勝つ、この勢いのまま準決勝にのし上がる!」

 と、意気軒昂に戦場に上がるレイザック。


 対して、黒い鎧に、それよりもさらに黒い布を頭から被り、いかにも邪悪な雰囲気を醸し出す男――アルトリウス・ノープライドも戦場に立つ。


 そして開戦を意味する鐘が鳴り響き、二人は即、臨戦状態に入る。


「【ダークマター・ソーサー】!」

 始めにレイザックは、牽制としてアルトリウスに闇属性の丸ノコギリを放つ。


 アルトリウスはそれをローリングで容易くかわし、左手から黒い煙を放ち、戦場一帯にそれを充満させる。


 レイザックはそれをやむを得ず吸って、片膝を突いた。


 その様子を見てアンティルは言う。

「一回戦の様子と、今のアイツの様子からして多分あの煙、何かしらの状態異常にする物なんだろうな……」


 続けてネロアも、

「しかしその詳細はわからないのが凄まじくもどかしいですね……そして、レイザックさんには今回もどうにか勝って欲しいのですが……」


 しかしその願望は叶わぬまま終わってしまう。


「ああああ! もう嫌だぁぁぁ! 助けてくれぇぇぇ!」

 突如レイザックが声を荒げ、自分の【救命の魔石】を自らの手で粉砕した――それ即ち……


『勝者、アルトリウス……』


 そのウェンリーの、どことなくやる気のない勝者宣言が放たれた後、アルトリウスはスタスタとその場を去った。


「この卑怯者アルトリウス!」

「いっぺん正々堂々戦ってみろ!」


 そして戦場にいなくなったアルトリウスにめがけ、闘技場中から無数の罵声が放たれた。


『皆様、静粛に! 静粛に!』

 それをウェンリーは必死に押さえつけ、


『本日は数々の名試合が行われまして、熱狂が続いたまま、ついに日が沈みだしました! これも皆様、観客総員のありがたい頑張りのおかげです!

 さて、ただいま第二回戦第四試合が終わりましたので、準決勝『【双魚星竜】錦山橙瀧 VS 【ミレア五造:排】』と『【トードイスムカ化神官】ネロア・ルォーナピアナ VS 【乙女星竜】アルトリウス・ノープライド』、そして栄光の決勝戦で、この【星竜大戦】が終了いたします!

 どうせならこのウェンリーも、この盛り上がりのままそれらを観たいという気持ちもありますが、ご覧の通り時間が時間ですし、勇士の疲労もありますし、それにもうスケジュールに書いてありますので……これ以降の試合は、翌日に行います!

 というわけで皆様、是非明日もこぞって、星竜大戦を盛り上げてください!」


 どうにか星竜大戦Day1を終演に導いた。


*



 試合を終え、ネロアは闘技場を後にし宿に帰った。

 そしてすぐ様、ネロアはレイザックにこう尋ねた。


「あのアルトリウスさんの煙を吸って、どうなったんですか?」


 言うまでもなく、次の相手、アルトリウスへの対策のための質問だ。


 レイザックは、至極申し訳なさそうに、ネロアに答えた。

「ごめんなさい……全く、覚えてません」


 アンティルは言う。

「オイオイオイオイ! レイザック、本当かよそれ、ステータスを確認するとかも出来なかったのか!?」


「それすら出来る余裕も無かったんだよ……あの煙を吸ってから、急に滅茶苦茶気分が悪くなって、戦うのが嫌になったんだよ……」


「『気分が悪くなって~』というのは、風邪とかで起こるダルさみたいなものですか?」


「そういうことじゃないです。本当に今となってはどうしてだか思い出せないんですが……気持ち、というよりメンタル的にグエってなった気がしました……」


 アンティルは自ずと目をつむり、深くうなだれた。

 自分よりも遥かに頭の回るレイザックが、こんな漠然とした説明をするということは、本当にあのアルトリウスの妙技は『謎』なのだろう。と、それこそ気持ち悪い結論にするしかないのだから。


「とにかく、仮で『戦意を失わせる毒ガス』ってことにしとこうか。

 おいネロア、あのアルトリウスってヤツ、今までウェンリーさんとか橙瀧ばっかに目が行ってたけど、アイツもアイツでかなりヤバいんじゃないか?」


「ですよね。それに……」


「それに?」


「あの人、どことなく既視感があるんですよね。特にあのローリングの仕方、あれはトードイスムカのプレイヤーがよくやるスタイルです」


「ローリングの仕方だけで既視感が湧くとか……相変わらずの変な感性してるな、おい」


「とにもかくにも、あのアルトリウスという男には用心すべきですね、ネロアさん」


「はい、これと前の試合も注意しておくべきかと」


「前の試合……ああ、橙瀧とゲイルリンドの試合か? そんなの気にするまでもないだろ、どうせ橙瀧が勝つんだろう?」


「いいえ、僕が気にしているのは二人の勝敗ではなくてですね……」


*


 同時刻、とある竜都の路地にて。ゲイルリンドは宿を目指して歩いていた。

 最中、とある集団が現れ、彼の道を塞ぐ。


「試合に負けた故の八つ当たりか、ウェンリー殿」


 とある集団の先頭にいるウェンリーは、首を横に振って、

「そんなまさか。僕はスポーツマンシップに反するような真似をするような策士じゃない」


「では背後に手勢を並べて何故俺の帰路を塞ぐ?」


「手勢? ああ、そんな風に見えちゃった? ごめんね。僕としては、これ、おもてなしのつもりだったんだけどな」


「おもてなし?」


「それじゃあ遠慮なく、ついて来てもらうよ」


 かくてゲイルリンドは、半ば強引にウェンリーに、彼の邸宅へと連れて行かれ、ある一室でテーブルを挟んで座る。

 間もなく、先程ウェンリーが連れていたプレイヤーの一人が、キッチンワゴンを押してやってきた。

 ゲイルリンドは拳を握りしめ、いつでも誰かを殴れるように身構え、最上段に置かれた銀色のクローシュを開けるのを見つめる。


 するとその中には、竜都に点在しているハンバーガーショップの商品がいくつも置かれていた。


「……銃とか隠してると思った?」


「……いいや、そんなことはない」


「ああそう。じゃあ早速、メインとサイドとドリンク、それぞれ一つお選びください。ゲイルリンドさん」


「……ダブルチーズバーガー、フライドポテト、コーラ……ノンカロリーじゃない方のな」


「思ったよりもベタに重めのいくんだね、ゲイルリンドさん」


「現実世界じゃ計量が怖くてな。たまに行ったとしても魚しか選べてない」


「それは可哀想に。ああ、僕はベーコンレタスとナゲットとグレープソーダで」


 それから二人は、紙コップで乾杯をした後、ちまちまと選んだ食べ物をつまみつつ、世間話を交わし続けた。


 最中、ゲイルリンドは警戒を怠っていなかったが、ウェンリーのおもてなしについては比較的純粋に楽しんでいた。


 そして、ある程度飲み物と料理が減って来たところで、ウェンリーが仕掛ける。


「さて、ここから本題に入ろうか。君にいくつか聞きたいことがある。なんで君が星竜大戦に来たのかな」


「それは詳しくは言えない。とにかく俺には成し遂げたいことがあるんだ」


「ああ、ごめんね。前提が足りなかった。

 星竜大戦の開催するにあたって、僕はトードイスムカだけじゃなくて、ミレアからも特別ゲストを呼ぼうと思ってたんだ。その人の名前は、オルディッツ。

 あのヘブンズレイドの時に知り合ってね、彼ならあの大会を引っかき回せると踏んで、僕は彼に招待状を送ったんだ」


 ゲイルリンドは一瞬、目を見開いた。

「あの招待状は、本来はオルディッツ殿のためのものだったのか?」


「そう、本来はね……今ので察しがついたよ、なんで君が星竜大戦に来たのか。オルディッツ殿め、ゲイルリンドのために譲ってあげたんだね」


「多分そうだろう。オルディッツ殿は、あたかも最初から俺宛のように手渡してきたしな……ところで、いいのか、このまま俺が出場していて」


「別に構わないよ。君が見た通り、あの招待状は宛先こそオルディッツだけど、中身はここに来るまで誰のものでもなかったから」


 ストローでグレープソーダを少し吸い上げ、一瞬喉を潤してから、ウェンリーは次の質問をした。


「これは昼間の戦いを経て気になったことなんだけど、試合中、君はやたらと僕を倒した先にいる橙瀧様に固執していたね」


「悪いか? ロジスティクス・サーガ最強のプレイヤーとは誰だって一度は戦いたいだろう?」


「それは言えてる。けど、にしてもって感じだったよ、それ関連の話をしているときの真剣さは。

 あのときの君の試合運びも、ヘブンズレイドでちょこちょこ伺ってたものよりもかなり乱暴だった。もし僕が勝ってたら、悔しさのその場で切腹するかもってちょっとヒヤヒヤしてたよ。

 で、それだけ橙瀧様に執着しているのは何故? 何かあの方と因縁でもあるのかい?」


「……それを橙瀧に聞かなかったのは何故だ?」


「当人が『それはタブー』みたいな感じで言っているからだよ。一回戦の時は二人で一緒に君の試合を見れてたんだけど、その時も『早く終わんねーかなー』って感じでイラついてたしさ。

 だから、もう一方の君に尋ねているんだよ。さ、質問に質問で返すのはそろそろやめにして、いい加減に答えてくれないかな?」


 そうウェンリーが催促すると、ゲイルリンドは、

「……この話は二度も言う必要はない」

 と、返した後、残った飲み物を一気に吸い上げ、一応、フライドポテトの箱が空になっていることを確認する。

 そしてすぐ、ゲイルリンドはウェンリーに一礼し、ここを去ろうとする。


 ウェンリーはゲイルリンドを慌てて呼び止める。

「二度も言う必要はない。って、君まだそれを一度も言ってない気がするよ?」


「……明日全てまとめて話す。それまで大人しくしていろ」

 と、捨て台詞を言ってゲイルリンドは去った。


「明日、か。やはり闘士と闘士の問答は、闘いを交えつつ、って事かな? なら、明日を楽しみにしておこう。きっと実況しがいのある試合になるぞ、これ」


*


 そして翌日。竜都にある大型闘技場は、昨日以上に賑やかだった。

 なんせ今日の対戦カードは、『錦山橙瀧とゲイルリンド』、『ネロアとアルトリウス』、そして『それぞれの勝者』。

 果たして橙瀧の最強伝説がまた築かれるのか。はたまた、波乱が起こるのか。その運命を見届けたかったからだ。


『皆様、朝早くからご観戦いただきありがとうございまぁす! 本日も実況兼審判を務めさせていただきます、【天秤星竜】ウェンリー・イーブネスです!

 さあついに、ついに本日! この数々の名試合が生まれた【星竜大戦】の準決勝と決勝が行われようとしています! これより皆様は、このロジスティックス・サーガに新たなる歴史を刻む試合の目撃者となるのです! その覚悟、よろしいでしょうか!?』


 OK! だいたいそのような旨のコールが、闘技場にこだまする。


『ようし、皆様ノリが良くて助かります! じゃあもう御託はいらないでしょう! 早速星竜大戦準決勝第一試合を行います! 選手、入場!』


 ウェンリーの合図の元、戦場に、二人の男が歩む。


『まず片方は……もはや説明不要でしょう、ロジスティックス・サーガ最強のプレイヤー、【双魚星竜】にして災国カメセスコアの【化神官】、錦山橙瀧だぁッッ!

 対する片方は、遠路遥々命国ミレアから訪れ、このウェンリーすらも打ち破った今大会きってのダークホース! 【五造:排】ゲイルリンド・A・ハング!

 これまで優勝候補と密かに囁かれていたユーキミナトと弦迅を反撃する間も与えず撲殺した橙瀧に、ミレアの雄は果たして如何にして立ち向かうのでしょうか!?』


 対戦相手同士……橙瀧とゲイルリンドは互いに睨み合い、それ以上はせず、開戦の鐘が鳴り響くのを今か今かと待つ。


『では、試合開始!』


 そしてその時が来た刹那、二人は相手めがけ駆け迫り、錦山は【双魚星の竜眼】を発動しないまま、ゲイルリンドは【Dt-Do】を飲まないままで、同時にただの右拳を突き出す。

 二人の右拳は真っ向衝突し、闘技場を軽く揺らすほどの衝撃をもたらす。


『ゲイルリンドが、あの橙瀧の一撃を真っ向から受け止めたァッ!? 一体何者なんだこいつは!?』


 二人は右腕を軽くパタパタさせ、そこに響く衝撃を体外へ逃しながら、一度距離を取る。


 橙瀧は苦虫を噛み潰したような顔をして、ゲイルリンドに言った。

「……相変わらず、鍛えっぱなしのようだな……今は、ゲイルリンドと呼ぶのがネットのモラルか」


 ゲイルリンドはただでさえ鋭い眼光を、より鋭くして、橙瀧に言う。

「俺はモラル云々気にするつもりはないぞ……このクソ親父!」


 クソ親父……このゲイルリンドの一言に、観客はえらくどよめいた。


「オイオイオイオイ、クソ親父ってどういうことだよ! まさかゲイルリンドと橙瀧は……」


「親子、でしょうか……」


【完】

ロジスティクス・サーガ・データベース


※今のうちにしとかないとタイミングがなくなるので、四人ざっとまとめていきます。

■キャラクター紹介

【稲葉弦迅】

 分類:プレイヤー

 所属:災国カメセスコア

 レベル:82

 ジョブ:【魔術師】


 十二星竜の一人。別名【金牛星竜】。『鳴り止まぬ雷』なんていう別称もある。

 カメセスコアの【魔術師】は威力がやや高い代わりに、射程が短めの魔法を覚えやすい。

 また、魔法メインのジョブにしては珍しく、物理防御力が高いため、物理メインのプレイヤーを真っ向から叩き潰しやすい。

 特に彼は【金牛星の竜眼】で常にHPが回復するため、かなり崩しづらい強敵となっている。

 加筆修正(リマスター)時にしれっと改名したキャラクターです。

 理由は前の名前が元ネタからあまりにもひねってなさすぎたからです。


【ユリウス・ニヴェル】

 分類:プレイヤー

 所属:災国カメセスコア

 レベル:75

 ジョブ:【重装士】


 十二星竜の一人。別名【白羊星竜】。 

 カメセスコアの【重装士】は重装備を軸とした体当たりめいた攻撃スキルと、装備が持つ攻撃力増強値をさらに引き上げるパッシブスキルを覚えやすい。

 彼はこの特性と、【白羊星の竜眼】の電撃発散能力を組み合わせ、スチールウールをあしらった装備から電撃を広範囲に撒き散らすプレイスタイルを取る。


【バーキー.U.G.O】

 分類:プレイヤー

 所属:災国カメセスコア

 レベル:72

 ジョブ:【聖職者】


 十二星竜の一人。別名【獅子星竜】。

 カメセスコアの【聖職者】は、『自分のみ』を大回復・大幅強化する魔法を多数覚える。

 これにより、【獅子星の竜眼】による自分の身体から直に起こす爆発の反動を帳消ししながら、格闘攻撃を仕掛ける危険なプレイをする。


【ナガレタル・ボーイ】

 分類:プレイヤー

 所属:災国カメセスコア

 レベル:74

 ジョブ:【暗殺者】


 十二星竜の一人。別名【水瓶星竜】。

 カメセスコアの【暗殺者】は鈎爪や針などの軽くて小型な刃物を用いた、素早い至近距離戦を得意とする。

 さらに彼は【水瓶座の竜眼】で、降らせた雨の下で、まるで空間を泳ぐように立体的に移動し、相手の死角を突くという神出鬼没な戦法を得意とする。

 名前の拝借元同様、ボーイの英語スペルは”boy”ではなく”bowie”のつもりです。

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