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ロジスティクス・サーガ ――死せる神と、外道の正義――  作者: 都P
CHAPTER5 ロジスティクス・サーガ最強のプレイヤー
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47.星竜大戦

 時はさかのぼること、二ヶ月前。

 ウェンリーが八神会議とヘブンズレイドから、カメセスコアに無事帰還し、主である橙瀧に、その仔細をお土産代わりに話した。


 それを聞いた橙瀧は思った。

(そういや最近、俺様あんまデカめの戦いしてないぞ。

 カメセスコアの野郎どもは、俺様に見つからないようにチマチマ小競り合ってばっかだし。

 なんなら俺様も、ウェンリーに投げずに八神会議出とけばよかったかな)


 そして橙瀧は、ヘブンズレイドに触発され、久々に化神官らしく、国レベルで大規模な計画を練り始めた。


 ネロアの書が届くよりも遥か数日前。災国カメセスコアの化神官、錦山橙瀧は他の【十二星竜】を力ずくで集め、こう語った。


「カメセスコアの英傑者共、俺様はカメセスコアの頂点に立ってからえーっと、何日経ったか? まぁ、とにかく長い年月が経った!

 そして俺様は思った! 『頂点の座に居座り続けるのは飽きた』と!

 故に俺様は【星竜大戦】を開催する事を決めた。そこで優勝した暁には、そのものに次の化神官の座を譲ると決めた!

 どうだ、最強に単純な話であろう!? 皆はこの話に乗るか、乗らまいか!」


 他の十二星竜は、だいぶ躊躇しながらも、肯定の意を示した。

 橙瀧は怖いが、次の化神官の座はそれを踏まえても欲しいものなのだ。


「……そしてその準備の最中にネロアさんが困っているとの手紙が届いた。

 これを見た途端、橙瀧様は『星竜大戦を盛り上げるスペシャルゲストに丁度いい』と狂喜乱舞したんだ。

 てなわけで僕は出演していただくために、トードイスムカに行ったんだ」


「成程、それが貴方たちの目論見であったか」


「そういうこと。では、ネロアさん。聞くタイミングがおかしくなっちゃったけど、この話はどうするのかな?」


 アンティルは言う。

「おい、ネロア、ちょっとここは考えた方がいいと思うぞ……なんせ、話が無茶苦茶過ぎる」


 レイザックは言う。

「なんせこの星竜大戦とやら、成り行き次第ではあの橙瀧と戦う羽目にもなるかもしれないのですよ!

 そんな無謀に等しい戦い、したところで何も得るものはありませんって!」


 二人の意見は完全に『否』である。しかしネロアは逆にこう答える。

「喜んで、参加させていただく」

 恩人アビスが愛したトードイスムカを救うため、どれだけつらい道だろうと、問答無用で通るつもりだ。それが彼女の心中である。


 この決断に橙瀧はどっと笑って、

「フハハ! 流石はトードイスムカの化神官だ! こんな勇気に満ちたプレイヤーを迎え撃とうとしたとは、ヴァイスが尚更羨ましいぞ!

 よろしい、ネロア・ルォーナピアナ、アンティル、レイザック!

 貴様らの星竜大戦の参加を認める! ようし、これにて計十六人の役者は揃った! 星竜大戦は明日開催される! それまで皆準備をしろ! いいな!」


「了解!」

「「は、はい……」」


 かくてネロアたち三人は『星竜大戦』なる、ロジスティクス・サーガ最強のプレイヤー、錦山橙瀧、その他諸々の強者が待ち構える死の饗宴に誘われる事となるのだった。


「宿の方は予め手配しているから、そちらに泊っていいよ。あと、星竜大戦の会場はあちらの巨大闘技場だから。きちんと早朝、そこに集合してね」


「案内、感謝する。ではアンティル、レイザック。往くぞ……」


「「はい」」

 ジャグガバゼパ神殿前で、三人はウェンリーに礼をし、宿へと歩いていく。


「……おいネロア! お前、本気で本気で正気か、お前! あの時の『はい』は、実質ロジスティクス・サーガ最強のプレイヤーに挑む、地獄行きの切符なんだぞ!」


「そうですよネロアさん! 別に橙瀧だけが脅威なんてことでは無いんですよ! この星竜大戦には【十二星竜】が勢ぞろいしているんですから!」


「とは言われましても、橙瀧さんから認可を得られる方法は他になさそうじゃないですか。だから僕はやるしかないのです」


 さらにネロアは、帰り際にウェンリーに渡された星竜大戦のパンフレットをパタパタさせながら、

「あと、お二人さんとも少し怯え過ぎかと思いますよ、星竜大戦は参加人数十六人のトーナメント形式ですから、最高でもたった四回戦うだけで、別に十二星竜全員とボスラッシュするわけではないんですよ?」


「だとしてもおっかないだろ! そんな魑魅魍魎に足突っ込むなんて!」


「それと二人とも、もう少し自信を持つべきだと思いますよ。折角トードイスムカであれほど特訓して、今ではお二人ともレベル60あるんですから、きっと上手くやれば十二星竜とも戦えますよ」


「……と、今レベル80の化神官様に言われても、いまいち自信がわかないなぁ……」

「しかもさっき見ちゃったんですけど、橙瀧はレベル100らしいですよ」


「それとお二人とも今回は僕の臣下という設定で参加していますからね、あんまりみすぼらしい活躍すると僕まで馬鹿にされるかもしれませんから、最低でもそこは気をつけてくださいよ」


「「は、はい……」」


「それでは、大会でしっかり活躍できるように、後でどこかで特訓……」


「おい、ちょっと待て!」

 突然、アンティルはある事に気づいた。


「何だアンティル、まだ弱音を吐く気か?」


「いや違う。確か星竜大戦って参加人数十六人だよな。橙瀧とウェンリーを含む十二星竜でまず十二人だろ、オレっちらで三人だろ、足したら十五人だろ? 何か、一人足りなくねぇか?」


「あ、確かにそうですね……? 僕たちの他にもゲストがいるのでしょうか?」


「きっとこの恐ろしい戦いに混ざるというのですから、きっと尋常じゃない意図で来た人なのは確かでしょうがねぇ……」


*


 その晩、ネロアたちが竜都郊外で戦闘訓練に励む中。ジャグガバゼパ神殿にて。

 橙瀧とウェンリーは、大戦前の晩餐をしていた。


「よかったね、橙瀧様。これで好き放題強者と戦えるね」


「ああ、これも貴様のお膳立てのおかげだ、ウェンリー。あの日お前が俺様の元に降ってくれてつくづくよかったよ」


「それはそれは、感謝するよ……ところで、橙瀧様。どうでもいい話なのは承知で聞くけど、今回の星竜大戦、誰が優勝するか予想出来てるかい?」


「言うまでもなく、俺様、錦山橙瀧だろうが!」


「だろうね。じゃあ準優勝は誰か、予想出来てるかい?」


「要は決勝で俺様と戦う者だろう? ううむ面白い質問だな、トーナメント表にもよるが、まずやはりトードイスムカの【化神官】、ネロアが残るだろうな」


「うん、それは僕も予想出来ていたし、実際に起こってほしいんだよね、化神官同士の戦い」


「それ以外なら貴様、【天秤星竜】ウェンリー・イーブネスに望みがあるな。それと……あの最凶最低の『アイツ』か」


「だいたい僕も同じこと考えていましたよ。ですが、僕としましては、遥々ミレアからやって来たあの人もなかなかあり得ると思……」


 和やかなムードをぶち壊すように、橙瀧は叩きつけるように盃を置き、押し殺したような声でウェンリーに言う。

「そいつの話はやめておいてくれないか」


 橙瀧が不機嫌になった理由を、ウェンリーは遅れながらも思い出し、謝罪した。

「申し訳ございません。橙瀧様」


「……まぁ、何より一番なのはどんな強者でもいいから戦うことだがな!」


「だね、僕も他の勇士がどう活躍するか楽しみだよ」


*


 翌日。早朝から、竜都の上空には無数の花火が打ち上がる。今日始まる国内最大規模のイベントの開催を告げるものだ。


 その舞台にある、巨大闘技場には、己の主君の勇士の勝利を願うカメセスコアの国民たちと、十二星竜による究極のバトルを観戦したい旅行客と……


「本当に、この日が来ちまったな……」

「だな……」


 ……本大会の緊急参戦ゲストの三人、ネロア、アンティル、レイザックが集まっていた。


「これに勝てばトードイスムカを救う認可を貰えるんですよ、頑張りましょう!」


 ここで弱音を吐いても怒られるのは承知、故にアンティルとレイザックは、

「「はい!」」

 気勢を張って、元気よく返事した。


 そして三人は大戦運営に、選手控えへと案内される。


「「あっ……!?」」


 そこに至るまでの廊下を歩く最中、アンティルとレイザックは驚きの声を上げ、背筋をピンと真っ直ぐ伸ばした。


「どうかしましたか、二人とも……あ!?」

 そしてネロアは、二人の真意に気づき、同じように驚いた。

 向かい側から、彼女にとっても、二人にとっても因縁深い、エメラルド色の眼の男――ミレア幹部【五造:排】ゲイルリンド・A・ハングが歩いてくるのだ。


「げぇッ、イルリンドぉッ……?」

「ど、どうしてアイツ……ゲホゲホ、あのお方がここに……?」

 

 と、アンティルとレイザックが、ゲイルリンドと目が合わないようにしながら、小声でやり取りする中、ネロアはすれ違いざまに、


「お久しぶりですゲイルリンドさん」


 と、気さくに挨拶する。


「こちらこそ、久しぶりだな。ネロア殿……何故貴様がここにいるんだ?」


「橙瀧さんから頂きたい物があって、今から始まる星竜大戦に参加する事になりました。かくいうゲイルリンドさんは、何故ここにいるのですか?」


「貴様と同じ理由だ……詳しくは言えないがな」


「そうですか。では、ご健闘を祈ります」


「……こちらこそ」


 そしてトードイスムカの三人と、ゲイルリンドは互いに背を向け、各々の控室へと歩き出す。


 数時間後。

『皆様長らくお待たせしました! カメセスコア人の、カメセスコア人による、カメセスコア人のための饗宴、【星竜大戦】の幕が、今斬って落とされまーす!』


 というウェンリーの実況の元、ついに星竜大戦が開幕した。

 観客席にいる民衆からは大喝采が上がり、選手紹介の為闘技場の地に立たされた十四人(※ウェンリーと橙瀧は実況室にいる)は、皆思い思いの気持ちでそれを聞いていた。


 橙瀧は平たく言うとマイクのような形と効果を持つアイテム【拡声の魔石】をウェンリーより受け取り、会場にいる全員に告げる。

『ではこれより主催者である、この錦山橙瀧より一言……皆、己の極みを尽くして戦え! 以上!』


 その橙瀧の乱雑な演説で、さらなる大喝采が巻き起こる中、本大戦の詳細説明が始まった。


 ルールは一対一のトーナメント形式。時間無制限。

 各バトルごとに両者に配られる【救命の魔石】(※これを持っている状態でHPがゼロになった時、その所持プレイヤーのHPを1にして、かつ、周囲に一定時間破れないバリアを張り、壊れるアイテム)が壊れたほうが負け――要するに相手のHPをゼロにした方が勝ち。

 それ以上も以下もない。


 続いて、トーナメントの第一回戦のマッチングが発表された。


 第一試合、『【双魚星竜】錦山橙瀧 VS 【射手星竜】ユーキナミト・ロゼリア』

 第二試合、『【ネロアの側近】アンティル VS 【金牛星竜】稲葉弦迅』

 第三試合、『【天秤星竜】ウェンリー・イーブネス VS 【白羊星竜】ユリウス・ニヴェル』

 第四試合、『【ミレア五造:排】ゲイルリンド・A・ハング VS 【獅子星竜】バーキー.U.G.O』

 第五試合、『【水瓶星竜】ナガレタル・ボーイ VS 【トードイスムカ化神官】ネロア・ルォーナピアナ』

 第六試合、『【双子星竜】ノーヴァ・ハルモニア VS 【天蠍星竜】スノウ・ファウンデン』

 第七試合、『【山羊星竜】ジョージ・ポール VS 【乙女星竜】アルトリウス・ノープライド』

 第八試合、『【巨蟹星竜】鳳凰丸戦禍 VS 【ネロアの側近】レイザック』

 

 これらより勝ち残った八名が第二回戦に上がれるのは、言うまでもないだろう。


「う、うえぇ……オレっちワンチャン二回戦目で橙瀧と当たる羽目になるじゃんかよ……」


「運が尽きたな、アンティル……だが、まず他の十二星竜との戦いを制さないとってとこだがな」


「何がどうであれ、僕は優勝まで突き進むのみです。トードイスムカの皆のために」


 そして間もなく第一回戦第一試合――橙瀧とユーキナミトの戦いが始まろうとしていた。


「久しいなユーキナミト! どうやら俺様がカメセスコアで退屈している間、あちらこちらにその弓携え『旅行』していたらしいな!」


「ああそうだ! ついでにこの弓でありとあらゆる強者を地獄に旅行へ行かせたぞ! お陰様で俺は『ロジスティクス・サーガ最強のスナイパー』と呼ばれてるぜ!」


「そうかそうか、それは羨ましいわ!」


 と、和やかに楽しそうに会話を交える男二人。だが、試合開始の鐘の音がなり響けば……


「さぁ、俺の矢でハリネズミになってありがたく死ねぇ!」


「望むところだ、ユーキナミト!」


 互いに『最強』の二字を背負い、『勝利』の二字を追う者と化す!


「橙瀧、貴様の死因はこれだ! 【ワイバーン・アロー】五十連!」


 先に動いたのはユーキナミトだった。彼は矢を五十本同時に放つ。

 数秒遅れて橙瀧はユーキナミトとの距離を詰めに走る。だがその時既に、飛竜の如き威力の矢が、彼一点へと飛んでいく。

 そして闘技場のほぼ中心で砂煙が巻き起こる。


「おい、砂煙のせいで全く見えないぞ! 何か起こった!?」


「落ち着け、アンティル!」


 その砂煙は観客席の視界を塞ぎ続ける。

 なお余談だが、観客席には、ウェンリーが術国イペファワエゼとの交渉によって、共同開発で作られた名付けて、『万物(ナンデモ)絶対(マジ)遮断(キカネー)防壁(バリア)』が張られており、砂煙はそこで阻まれる。


 砂煙が消えた時、闘技場内に【救命の魔石】によるバリアが出来ていた。

 そして、その中心にはユーキナミトが横たわっていて、側に橙瀧が堂々と立っていた。


 それをしかと確認した実況者兼審判のウェンリーは拡声魔石片手に高らかに告げる。


『勝者はやはりこの男だった! 【双魚星竜】にしてカメセスコアの【化神官】、錦山橙瀧だァッ!』


「どゥらおらァァッ!」

 

 このあまりの不鮮明過ぎる勝負の行方に、ほとんどの観客はどよめきを隠せなかった。


「錦山橙瀧……どうやらロジスティクス・サーガ最強のプレイヤーの名前は伊達じゃないようですね……」


 だがネロア等の一部の、観察眼のある強者は、この一部始終をある程度把握できた。


 その仔細はこうだ。


 まず橙瀧は、迫りくる五十の矢を前にし、流星により得た特殊スキルを発動。

「【双魚星の竜眼】!」

 己の両手に激流を帯びた水を纏わせる。


 次に、橙瀧は飛んでくる矢を、拳で打ち消すか、拳に纏われた水の激流でいなす。


 先程の砂煙は、この時いなされた【ワイバーン・アロー】が地面に命中して起こった物だ。


 そして橙瀧は五十の矢全てを防ぎきった所で再進撃。ユーキナミトは次の矢を大急ぎで弓に掛ける。


 最後にユーキナミトが次の【ワイバーン・アロー】を放つ寸前に、橙瀧はユーキナミトとの間合いを詰め切り、激流纏った拳による怒涛の連続殴打を食らわし、ユーキナミトのHPを削りきったのである。


『錦山橙瀧ッッ! やはりこの男は強かったァッ! 見たか諸君、カメセスコアの化神官はお飾りではないことをッッ!』


「見えるかウェンリー!?」

「一瞬で決着つけんじゃねぇよ、橙瀧のボケェ!」

「もう少し押されてから負けろよ、つまんねーぞ橙瀧!」


 と、観客からは両者の称賛ではなく、盛り上がりに欠ける試合を提供した橙瀧の野次とブーイングが飛び交った。

 だがしかし、その他の十二星竜や、ゲイルリンド、ネロアたちにとって、この試合は非常に満足いく物だった。


 ――この戦い、『星竜大戦』がどれ程高レベルな物か把握するには、十分すぎる。


【完】

ロジスティクス・サーガ・データベース


■用語説明

【十二星竜】


 ある日、災国の地に落ちてきた十二個の流星をそれぞれ受けたプレイヤーたちの総称。

 全員【〇〇星の竜眼】という名前の、独特かつ強力なスキルを獲得し、混沌の戦国時代と化していた災国を、自分たちの十二勢力だけが残るまでにスッキリさせた実力者である。


 その一覧は……今回のトーナメント表と重複する部分があるので、そちらでお願いします。


 ちなみに、言うまでもなく竜眼の名称は十二星座から取っています。

 さらにちなみに、これに属するプレイヤーの名前は、ゲームやアニメのライバル・ラスボス・もう一人の主人公キャラから拝借しています。

 裏設定としては、災国のツートップである錦山橙瀧とウェンリー・イーブネスが、たまたまその法則に合致していたので、ゲン担ぎとしてそういう名前にしたプレイヤーが多発したという感じです。

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