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111.神戦開幕

 八神会議から二週間後――来たるべきロジスティクス神戦の日。

 自由区市街地から北にある、名も所有者も無い雄大な平原にて。


 ネロアはトードイスムカ軍900万とシュラ、リュート、チョルヒの援軍たちと共に、西に背を向け布陣していた。


「おっ、来た来た、ヴァイスの連中が見えてきたよ」


 その向こう側――東にいるのは、ヴァイス率いる1600万のミレア軍と、これに与するランニバーニ軍、カメセスコア軍、イペファワエゼ軍、イズセラ軍。ネロアが今ここにいるのは無論、彼らの侵攻に徹底抗戦するためである。


 双眼鏡越しにヴァイス軍勢を見て、リュートは一言。

「メチャクチャ人いるなー、あっち。橙瀧さんもジュリクスちゃんも、イズセラの人も!? うわー、メチャクチャじゃん」


 結局、ヴァイス派の者を懐柔しきれなかった。チョルヒは、敵勢を見てそのことを悔やむ。

「本当にすみません、私がまだ未熟なばかりに……」


 シュラはチョルヒを慰めつつも、圧巻のヴァイス軍に身震いする。

「……縁起でもない事聞くけど、本当にいいのかい? 『ここに集中して布陣して、正面からヴァイスを迎える作戦』で」


 総大将であるネロアは答える。

「リュートさんやチョルヒさんに後背を突かせる作戦も考えましたが、ヴァイスさんがそんな単純な奇襲に引っかかるはずがないと思いましたので、こうしてひねり無く、総動員で待ち構えることにしました。そして後は……」


「オレっちらの底力で抵抗するってことだよな、ネロア!」

 と、イペファワエゼでの武者修行を終えたばかりというのも相まって、アンティルは自信満々に言った。


「はい。いくつかの策は既に考えてありますが、それを支えるのには、ここにいる皆様全員の力が必要です」


 同じく、イペファワエゼで特訓を積んで来たレイザックは言う。

「わかってますよ、ネロアさん。イペファワエゼでの俺とアンティルの鍛錬の成果も、しっかりと見せてやりますよ!」


「その意気です。では、鼓舞のため、同志達に一言送りましょうか」


 一方、ヴァイス軍は陣の設営を始め、ネロア軍との全面戦争の準備をしていた。

 その本陣にて。


「ヴァイス殿、此度は我々の当軍への参加を許可して頂き、本当にありがとうございます」

「ワタクシもデリトソースも、持てる限りの才をなげうち、ヴァイス様への勝利に貢献いたしますので、期待してください!」

 と、イズセラのヴァイス派の筆頭格の二人――【チーム・アーセナル】リーダー、デリトソースと【チーム・エナジー】リーダー、キラリエルは、総大将ヴァイスに媚びを売る。


「わかりました、あなたたちは北方面をまかせますので、直ちにそちらへ」


「了解!」「仰せのままに!」


 ヴァイスに認められたイズセラの二人は、軽やかな足取りで本陣を出る。

 彼らの後ろ姿を見て、ヴァイスは風に紛れるぐらいの音量で、舌を打つ。


「使えるだけ使ってやりますけど、ね……」


「それは、私たちにも当てはまりますか?」

 と、たまたま国を代表して挨拶にやって来たオサラウドが尋ねる。


 ヴァイスはオサラウドに笑顔を向けて、

「いえ、あなた方イペファワエゼは、賢明な判断をする味方として快く受け入れていますよ。彼らは……その……事情がありましたので」


「そうですか。されば、南方にて、ご期待に沿うよう奮戦致します」


「わかりました……生徒会長こと、貴方がたの化神官、エロイースさんが来ないのは至極残念ですが、頑張ってください」


「……はい」


 オサラウドが自陣に戻っていった直後、自軍をまとめ終えたジュリクスと橙瀧がヴァイスの元に来る。


「いやぁ、無事ヴァイスんとこに入れて良かったぞ。やっぱカメセスコアの【十二星竜】全員ぶん殴って連れてきて正解だった」


「それが尾を引かないといいですね……いや、橙瀧さんに限ってはないですか」


 ヴァイスは彼らと向き合い、誠意を込めて礼をする。


「ジュリクスさん、橙瀧さん、この度は私の身勝手にご助力頂き、心の底から感謝いたします」


「こちらこそ、このロジスティクス・サーガの新たな時へ導くアクションを起こして頂き、ヴァイスさんに感謝しております」


「俺様も貴様に感謝するぞ。こんな二度とないくらいの最強に盛大な闘争の舞台を用意してくれたのだからな!」


「それは何より嬉しいです。さて、折角三国の首魁が揃いましたし、兵の前に出て激励しましょうか」


 ネロアとヴァイス、二人は奇跡的偶然に、同時刻に幾数万の前に出て、総大将としての最初の努めを、口より放つ。


「諸君、僕(やつがれ)が貴方たちの長である、ネロア・ルォーナピアナだ。今宵は貴方たちへ、端的にも貴重な言を送る……」


「皆様こんにちは、この神戦の首謀者、ヴァイス・O・ヘブンです。この時を以て私は貴方達に、短いながら大切な事を申し上げます……」


「僕達の光輝たる意志の為!」

「私達の機才ある正義のため……」


「「総員、全身全霊武勇智謀を尽くし、勝利せよ!」」


 総参加者数約7000万人、ロジスティクス・サーガ史上かつて無い規模の合戦――『ロジスティクス神戦』の幕が、数多の英傑を役者に、幾多の歓声を伴奏に、この時より斬って落とされた。


「才気という銘の剣を抜刀せよ! 知勇という名の業を顕し、己の敵を滅殺するのだ!」


「では、イペファワエゼ、カメセスコア、ランニバーニ、そしてミレアの方々、これより開戦と致しましょう!」


 時間はおおよそ9時頃、大戦争の日としては雰囲気としては不適だが、戦略的な部分では都合よく、空は爽快に晴れていた。

 この時、この青空の元で、東西の軍から何万人もの大人数の先鋒隊が出撃し、やがて個々の技、各々の武器を交え始めた。

 ――これがロジスティクス神戦の幕開けだった。


「【バティ軍】のみんな、ランニバーニのため、ただ突撃と走破あるのみだよ!」


「魔法研究の二大巨頭の片方は、私達【インスピリン学院】にあります。そして、この勝負の行方も私達の物にさせていただきます!」


 神戦最序盤を彩ったのは二人の女性。ウィンディ・バティとトリン・インスピリン――両者とも時国ランニバーニの【八大ギルドマスター】だ。


 彼女たちの軍団はお得意の武術と魔法を駆使し、敵――西軍の先駆プレイヤーをあたかもホウキで掃くように連続撃破する。

 八国の内最も伝統ある国、時国ランニバーニの『積み上げてきたもの』が表れた瞬間だ。


「……」

 最序盤とはいえ、西軍の総大将ネロアは東軍の幸先の良さを快くは思わない。

 ただし手は打たない、もう既に信頼がある故に。


「うっし、順調順調! このまま戦線を押し上げ続ければきっとアタシたちが勝てるね! トリンさん!」


「ええ、しかし油断は禁物です。ここにいるのは功績に飢えているでしゃばりな下級プレイヤー。きっとそろそろ部隊長クラスの方が……来た!」


 トリンは真西の空を指さす。炎の翼を備えたコートを纏う少年が、

「うぉぉぉ! イペファワエゼで得たオレっちのパワー! 特と喰らいやがれぇぇぇ!

 【ブレイジング・バレット】!」

 全身を燃え上がらせ銃を突き出して構え、自らを炎の弾丸に変えて飛来する。


「【ブレイジング・バレット】は死国トードイスムカの【射手】が間合いを詰められた際の解決に用いる突進技。

 なんていう性急な行動。私の魔法ならば簡単に止められますのに」

 命中した相手の時間を止める魔法【タイム・フリージング】の発射体勢を取るトリンは、これを確実に与えられる距離まで少年を引きつける。

 この確実性を優先した行動が、彼女の運命を分ける。


「まだまだいくぜ! 【イグニッション・ヒート】!」

 少年は翼から火を噴射し急加速。


「!?」

 トリンの魔法発射のタイミングを狂わせ、彼女を通り過ぎてランニバーニ先鋒隊のど真ん中に着陸する。少年の背後で、焦げた地面から黒煙が立ち上っていた。


「……アイツ、当たる直前に何かしらすごい魔法を当てようと計画してたみたいだったな。ま、結局オレっちの勢いに押し負けたんだから、その智謀は足んなかったってこと、か」


 あまりにも急過ぎるギルドマスターの敗死に【インスピリン学院】のメンバー、さらには行動をともにしていた【バティ軍】もざわつく。


「と、トリンさん!?」


「灰になった方の心配をするほど、あなたたちに余裕があるのですか?」


「!?」


 そんな【バティ軍】にも危機が迫る。ギルドマスター、ウィンディへ、トードイスムカの【魔剣士】の少年が、たった独りで彼女の部下を斬り結びながら訪れた。


「この人、単騎で来たの……!? ううん、気にしちゃダメだアタシ。もっと皆のために落ち着かなきゃ。

 うん、余裕はあるよ! なんてったってアタシにはランニバーニの仲間たちがいるからね!」


 ギルドマスターの危機を察して、メンバーたちがウィンディの元へ集結する。だが、ウィンディは少年と二人で炎の格子の中に閉じ込められていた


「【パイロ・ジェイル】は既に展開しておきました。これにて俺の相手はあなた一人です。さてどうします?」


 入れろと叫ぶメンバー達と、上下前後左右を封じる六角体の炎格子に囲まれ、一騎打ちに望まんとする少年に睨まれて、ウィンディは、

「アタシは絶対にこの逆境に勝ってみせる! 未来と仲間のために!」

 覚悟を決め、地を強く踏みしめ、少年へ迫る。


「……まぁ、正直ここに入ってる時点でだいたい俺が勝ってるんですが」


 六角体の炎格子はたちまち六体のレイスに戻り、六方から強烈な火魔法を浴びせウィンディを火だるまにした。


「ま、まだ……アタシは絶対にあきらめな……」


「遅い」


 少年はダメ押しに闇を帯びた一刀を浴びせ、ウィンディのHPはゼロになった。


「ヒデーぞアイツ! ウィンディさんの覚悟をあんな風に踏みにじりやがって!」

「このトードイスムカ人め! こうなりゃ全員で懲らしめてやるわ!」


 マスターの敵討ちのため、【バティ軍】メンバーは少年へ一斉に襲いかかる。


「そんなにマスターのことが大事だったら、その信頼に応えてお前らも牢の周りでボヤ騒いでないで、なんとかすればよかったんじゃないんですかねぇ!? 【闇黒の一振り】!」


 少年はおびただしい闇を帯びた剣を力いっぱい横一文字に振り、前方と側面の敵をはね返した。彼の背後の敵は、

「【インフェルノ・バレット】」

 銃の少年が放った炸裂弾で焼殺された。


 銃の少年は、剣の少年と対面するや否、相手の肩をどついて、

「おいレイザック。今お前、オレっちが助太刀してくれること前提でこうしたな!」


「いいや違うね。俺はこの後振り向いて同じスキルを出すつもりだった。アンティル、お前が来ることなんて、『いたらいいな』ぐらいしか考えてなかった」


「さっきのじゃねぇよ。あのギルマスとの戦いの時だよ。お前の【パイロ・ジェイル】の硬さはさほど無い。もうちょっと早く行動してなかったらお前はギルマスと手下達を同時に相手しなきゃいけなかったんだぞ」


「知らないね」


「ちっ、相変わらずプライドが高い奴だな。そんでもって……」


「かくいうお前も感情的になって、格上と相手したりするなよ……」


「「ネロアに迷惑かけるんじゃないぞ」」


 翼と銃の少年アンティルと、剣と魔法の少年レイザック。

 二人は友のネロアの信頼に応えるべく、まだ残るランニバーニ・プレイヤーへ、この日のために磨き上げてきた能力を惜しみなく出していく。


*


 西軍本陣にて。


「むっふふー、今のアンティル、ようやく頼れる感じになったねー」


「まさかランニバーニのギルドマスターを倒せるとは。ボクに挑んで完敗した時とはまた違った鮮烈みがあるね」


 諜報部隊からのチャットを聞いた二人の男女はしみじみ思う。

 前者は音国エホシャドチグパの化神官、リュート。後者は文国ヨヤアサの化神官、シュラ。どちらもひょんなことからネロアの雌伏時代から付き合いがある。アンティルとレイザックとも顔なじみだ。


 数分前の大号令時から続いていた厳格な真顔を解いて、ネロアはニヤニヤ笑う。

「ええ、術国イペファワエゼでの特訓が効いているみたいで何よりです……が」


 ネロアはすぐ真顔――総大将の体に戻り、卓上の戦況図の駒を動かしながら、

「中央部のランニバーニ先鋒隊はどうにか退けられましたが、北部・南部の先鋒隊は苦しい状況でしたね……」


 ここで一つ解説を入れるとしよう。

 戦力数において優勢を誇る東軍は、この利を活かすべく、兵を北、南、中央の三軍に分け、これらを同時に西征させている。

 ネロアたち西軍はやむなくこれに対応するため三軍に分かれ、敵軍を受け止めている。

 もちろんこの場合においても数はあちらに分がある。なので、ただいま西軍はかなり慎重な動きを強いられているのだ。


 ネロアは諜報部隊の情報を耳にしつつ、今度はメモを書き込む。

「北軍は災国カメセスコアが、南軍は術国イペファワエゼが、中央軍は時国ランニバーニが中心。

 総大将ヴァイスが率いるミレア軍はまだ表に出ていない。

 なおかつ化神官やそれに準ずるクラスのプレイヤーの姿は確認されていない。

 ――どうやら東軍はまだ本気を出していないみたいです」


「じゃあアタシたち西軍は今ヴァイスに遊ばれてるってことなの? はー、バチクソムカッとくるなぁ!」


 わかりやすく頬を膨らませて怒るリュートに対して、シュラは冷静なまま、

「……ボクはどちらかというと、ネロア君の方に不満があるんだけどな」


「僕に、何がですか?」


「これはボクのしょうもない杞憂だから言いたくないんだけど、聞かれたら答えなきゃいけないか。

 ネロア君、そちらもそちらでヴァイス君をナメてないかい?」


 先程から再三に渡って言われている通り、西軍と東軍の戦力差は後者が圧倒的。


 なので、これを覆すには戦略や団結はもちろんのこと、通常のプレイヤーより一つ上の次元の戦闘力を持つ【化神官】を惜しみなく戦わせる必要がある。


 西軍にいる化神官はネロア、シュラ、リュート、それと、


「ネロアさん、私も、総大将のあなたに反対したくはないのですが……私共々、イズセラ軍を出撃させてください! このまま押され続けるのを待ってられません!」

 今、その場で落ち着いていられず、その場で足踏みをしている機国イズセラの化神官、チョルヒだ。


 出撃を迫るチョルヒに、ネロアは毅然とした態度で、

「チョルヒさん。あなたの気持ちはわかります。ですが僕たち化神官はまだ待機したほうがいいです。開戦前に話した通り、もっと相手の陣形が散らかったところを叩きますので」


「なら、せめてイズセラの機械部隊を出撃させてくれませんか!?」


 ネロアはこのチョルヒの提案も拒む。

「申し訳ないですが、それも無理です。こちらも先に話した通り、大型のロボットを大人数にぶつければ、バカでかいマトになってしまいます」


「や、やはりそうですか……わかりました」


「うわー、さっすがネロア・イン・総大将モード。自分が見据えた勝ち方以外はまるで譲る気無いみたい。ねぇどうするシュラちゃん?」


 急にリュートに話を振られたシュラは、言いにくそうにヒソヒソと、

「どうするったって、ボクはこんなつまんないところでネロアと破局したくないんだけど……」


 今現在が十二分に劣勢だから、ここでどうにかしたほうがいい。と、三人の化神官は考えている。


 一方ネロアは、彼女なりに後々どうにかなる作戦がある。だから今出る必要もないと考えている。

 しかし三国のトップがこう言っている上、兵の不満爆発もそろそろ起こり得る予感がし始めてきた。

 なので、いよいよ『危うい』ということを認識したネロアは、


「……わかりました。僕が出ます!」


「うん、それでこそネロア君だ……え!? 出るのは君なのかい!?」


「はい、士気への影響を考慮して僕が出ます。皆さんは引き続きここで待機していてください」


「総大将のネロアがいきなり出たらまずいって! アタシが出たほうが絶対いいって! 盛り上げだったらアタシのほうがレベチで上手いし!」


「そうですネロアさん! 無理に自分だけでどうにかしようとしないで、少しくらいは私たちに甘えても……」


 これはこれで反対するリュートとチョルヒ。だがネロアはすっかり覚悟しきっている。


「いいえ、僕が行きます。さもなくば僕たち西軍に勝利はないのですから!」


 これ以上の引き留めは聞きたくない。そう言わんばかりに、今後を案じたネロアは本陣から飛び出した。


「いっちゃいましたね……シュラさん、リュートさん、どうしましょうか?」


「まー、待機しかないよねー。デタラメに動いて戦局乱したら悪いし」


「そうだね、うん」

 さっきネロアが駆けていった東方面を眺めながら、シュラは思案する。


(いくら何度も死線を越えたネロアとはいえ、ここで単騎特攻は危険過ぎる。本当に何を考えているんだろう?)


*


 東軍本陣にて。


「俺様の出番はどこなんだ……?」

 次々と出入りする伝令兵の戦況報告を聞いて、災国カメセスコアの化神官、橙瀧はこうぼやいた。


 一方、時国ランニバーニの化神官、ジュリクスは腑に落ちない顔をして、

「私の国のギルドマスター二人が敗れてから、西軍の反抗事例が少なすぎる。それに未だ敵化神官四人の目撃情報もない。東軍の圧倒的戦力差に怖気づいたのでしょうか? どう思います、ヴァイスさん?」


 命国ミレアの化神官にして、東軍総大将のヴァイスは即答する。

「そろそろ動くのでしょう」


(以前の敗戦が示す通り、ネロアはこのような劣勢状況を絶妙にひっくり返せるセンスがある。

 前回は私の『過ち』や『驕り』によりそれをより絶妙にしてしまった。だから今回はそうはさせない……)


 ヴァイスは報告してくれた伝令兵にお返しとして、

「三方の軍に伝えてください。『敵味方双方に妙な動きがあれば、それへの最大の警戒と、迅速な報告を優先せよと!』」


 この伝達の直後、噂をすれば影とやら、

「伝令! 敵軍総大将ネロア・ルォーナピアナと思しき人物が南軍と交戦を開始しました!」


 これを聞くや否、橙瀧は大げさ気味に手を叩く。

「やはり来たかネロアめ! こうじゃなきゃあ面白くないよなぁッッ!」


 あまりにも早すぎる総大将の出陣――ヴァイスは情報を整理する。

(西軍にはシュラ、リュート、チョルヒ、三人の化神官がいるのに、何故ネロアが先走る?

 奴の側近アンティルとレイザックが中央軍と奮戦しているにも関わらず、何故奴らと連携しない?

 そして何故『南軍』なんだ? 南軍の構成の大多数を占める術国イペファワエゼのプレイヤーと、ネロアの戦闘スタイルは、相性の優劣はさほど無いというのに?)

 

 刻一刻と迫るネロアの奇策の炸裂――それを予感したヴァイスは、今の時点での最善策を打ち出す。


「カオンさん」


 本陣の中で待機していたミレアの幹部、【五造:関】カオンがヴァイスに呼応する。

「はい、いかがなさいまして?」


「直ちに南軍へ合流して欲しい。そこで南軍を監督し、先の通り不審に思ったことがあればすぐに対応を」


「かしこまりましたわ」


 双方共に策謀と武勇を張り合うロジスティクス神戦は、まだ始まったばかり。


【完】

ロジスティクス・サーガ・データベース


■その他雑多な話

【ざっくりわかるロジスティクス神話】


 ネロアなどが劇中で暗唱している当作のフレーバーテキスト、ロジスティクス神話全集。

 その本筋の神話を今回、ここでざっくりとまとめて記載する。


1.どこからともなく創神R・L・Fが現れ、大陸とそこにある自然、人間を含む生き物、それから四柱の神を創り出す。


2.その四柱の神は時神ア・ドネザスオグ、災神ジャグガバゼパ、死神ホイプペメギリ、命神キトァミァといい、それぞれ一つ一つ理を司る。


3.四柱の理の制御により人類は徐々にその文明を発展させていく。


4.しかし人類は発展していくにつれ、神々でも予想だにしなかった概念を生み出していく。そして、その概念で人類同士で軋轢が生じていく。


5.ここで時神ア・ドネザスオグがその概念全ては「時間があったから生まれたんだ」と主張し、それを理由に全て自分で管理し、四神の中で抜きん出ようとする。


6.この主張に対し、災国ジャグガバゼパと命神キトァミァが反発。神々は人類をも巻き込んだ尋常ならざる争いを始める。

 その時、死神ホイプペメギリは大量死していく生命の処置でてんてこまいとなり、蚊帳の外にいた。


7.この神々の争いを根本から止めるべく、創神R・L・Fは、人類が新たに生み出した概念を管理する、新たな四柱の神を創造する。


8.機神ドトッパ・マ、術神イイキュフォアグ、文神ユールコア、音神マダキウポオーベーの四柱は人類が生み出した概念をしっかりと管理し、人類の進化を正しい方向に修正する。

 これで人類同士の不和は収まったが、神々はまだ野心を持ち続けてしまう。


9.なので仕上げに創神R・L・Fは、世界創造から遍在していた細々とした太古の理を寄せ集め、万能の権能を持つ最高神、理神レソカーラ・シュクペバーを創造する。


10.理神レソカーラ・シュクペバーは、前期四神の諍いを圧倒的な力で仲裁し、神の王として、元より司っていた理の維持に専念するように命じる。


11.こうして人類は神々が敷く理のもと、比較的安定した暮らしが出来るようになった。めでたしめでたし。


 ……というのが、ロジスティクス神話のメインストーリーである。

 ちなみに他にもサブストーリー的な短編がいくつかあるが、なかなか数が膨大なのでここでは記載したくない。

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