第五章 — 血の試練と揺るぎなき覚悟
活気あふれるギルドホールのただ中で立ち尽くしながら、カイは若い受付嬢の瞳を見つめ返していた。周囲を行き交う武装した戦士や魔法使いの喧騒が一瞬消え去ったかのように、少年の意識はメアリーの謎めいた言葉だけに集中していた。
「どうして僕が諦めるの?」カイは腕を組み、軽く首を傾げながら、明確な説明を待った。
メアリーは目を軽く見開き、本気の驚きを露わにした。彼女は胸に抱えた大量の書類の束を抱え直し、真剣な面持ちで小さく溜息をついた。
「待って……あなた、冒険者登録を完了するための最終段階がどうなっているか、本当に知らないの?」彼女は周囲を気にするように声を潜めて尋ねた。
「知らないよ」カイは正直に認めた。「基本的な登録方法やランク分けの仕組みは知っているけれど、ギルドのこの最終試験の詳しい内容までは知らないんだ」
メアリーは周囲を見渡し、近くのテーブルで笑いながら酒を飲んでいるベテランたちに目を向けた後、哀れみと心配の混ざった視線をカイに向けた。
「毎年、夢を抱いた大勢の若者たちが英雄になろうとここへやってくるわ」メアリーは静かに、重々しいトーンで語り始めた。「でもね、外の世界の現実というのは本当に残酷なの。駆け出し冒険者の死亡率は異常なほど高いのよ。ダンジョンの危険性を甘く見たり、予測不能な事態に陥ったときにパニックを起こしたりして、最初の数週間で多くの人が命を落としてしまうの」
彼女は一度言葉を切り、姿勢を正して続けた。
「新人たちのそうした悲惨な犠牲が絶えないことから、ギルドの幹部たちは加入システムに大きな変更を加えたの。昔は剣の握り方さえ知っていれば誰でも身分証をもらえてダンジョンに入れた。でも今は、新人冒険者のための準備講習と基本訓練の最後に、すべての志望者に義務付けられた最終試験が課されるようになったのよ」
「その試験っていうのは何なんだ?」カイは冷静さを保ちながら尋ねた。
「自分たちのレベルよりも『一つ上のレベルのボス』と戦わされるのよ」メアリーは少年の目をまっすぐに見つめ、その言葉の重みを強調するように言った。「ギルドの理念は明確で容赦ないわ。『管理されたテストの環境で自分より上の問題を克服できない者に、本物のダンジョンで高レベルの魔物が突如現れたとき、どうやって死の危機を乗り越えられるというのか』ってね」
二人の間に、しばし重苦しい静寂が流れた。
「この最終ミッションでね」メアリーは瞳に悲しみの影を宿しながら続けた。「本物の恐怖の重圧に押しつぶされて、大半の候補者が諦めて辞めていくの。そして自分の実力を過信して無理に突き進んだ人たちは……テストそのもので命を落とすことになる。残酷な篩なのよ。だから私はあなたに『諦めないで』と言ったの。あなたと同じような目をして入ってきた人のほとんどが、現実を知った途端に引き返してしまうから」
カイは彼女の一言一言に深く耳を傾けた。彼の頭の中で、論理の歯車が精密に噛み合っていった。地球での前世の痛み、母の死、奴隷の鎖の惨めさ、そして病院のベッドで高額な薬を待ちながら横たわるおばあちゃんの蒼白な顔。カイにとって、引き返すという選択肢は最初から存在していなかった。
メアリーの目を見つめ返すカイの表情には、微かな揺らぎすら存在しなかった。彼は深呼吸をすると、力強く、穏やかで、固い決意に満ちた声で答えた。
「僕は大丈夫だよ。その試験がどれほど難しくても、相手のレベルがどれだけ高くても……僕は最後まで貫き通す」
華奢に見える少年の声から発せられた完全な迷いのなさに、メアリーは驚いて目をパチクリさせた。やがて彼女の顔から不安の色が消え去り、パッと温かく華やかな笑顔が咲きこぼれた。
「すごい……本物の覚悟を感じたわ!」彼女は嬉しそうに声を弾ませ、小さく笑った。「そうじゃなくっちゃね! 本物の冒険者にはそれくらいの強い意志が必要よ!」
突然、ホールの奥の壁に掛けられた時計が鳴り響き、職員のシフト交代の時間を知らせた。メアリーはハッとして飛び上がり、時間を確かめた。
「大変! 上司のデスクにこの報告書を届ける時間、とっくに過ぎてるわ!」彼女は焦って書類を整えた。「走らなきゃ! 幸運を祈ってるわ、カイ! またね!」
カイの返事を待つことなく、メアリーは書類の山を抱えながら人ごみの間をすばしっこく縫い、ダッシュで走り去っていった。
カイは彼女がオフィスへ続く廊下に消えていくのを視線で見送った。そして静かに向きを変えると、受付カウンターへ向かって歩き出し、**【冒険者登録・受付窓口】**と書かれた装飾看板の真前で足を止めた。
大きな木製のカウンターと、列を作って待つ人々を見つめながら、カイは腰に下げた黒い小剣の柄に手を置いた。
「最初からそのくらいの覚悟はできている……」カイは瞳に冷たい闘志を宿し、静かにつぶやいた。「この世界で生きていくと決めた瞬間から、死の危険なんて百も承知だ。格上のボス程度で僕の足が止まると思うなよ」
胸に一切の迷いも抱くことなく、カイは確かな足取りで一歩を踏み出し、正式な旅立ちとなる登録領域へと足を踏み入れた。




