体調不良
苦しい。きつい。重い。誰か、助けて...。
「はっ...」
目に飛び込んできた明かりに、思わずもう1回目を瞑る。部屋の電気って、こんなに目が痛くなるものだったかな。
いや、違う。電気じゃない。ゆっくりと目を開けると、豪華なシャンデリアが天井から吊り下げられていた。
「ここは...」
ふかふかなベッドを堪能しつつ、ああそうだ、ここは違う世界なんだと現状を理解する。
あの後、気を失ったんだ。
残念ながら、体調はさらに悪化しているようだった。
「お目覚めですか?」
急に横から声がした。驚いて声がした方に顔を向けると、とても美しい人が座っていた。
イケメンと言うには烏滸がましいくらい整った中性的な顔立ち、深い青の髪と夕焼けのようなオレンジ色の瞳の対比がとても綺麗な男性だった。
声はルキタさんに似ているような気がする。ルキタさんよりも少し高めかな。
「すみません、気づかず...」
「いえ、体調はどうでしょうか」
「倦怠感が、酷いです。明るいのもきつくて...」
一言で言うなら、朝早くから夜遅くまで人混みの中を歩き回った後の体の疲労感に、1日中スマホを見た後の眼精疲労を加えて、それを10倍酷くした感じだ。正直、命の危機を感じるレベル。
「やはり...」
「これ、何なんですか?」
「魔力欠乏症の症状です。しかもかなり重症みたいですね」
「魔力...?」
魔力って、魔法が使えるあの魔力?そういえば、魔導士なんて単語も出てきていたな。
「仮説ではありますが、レネ様の世界には魔力が存在しないため、レネ様自身にも魔力がない。しかしこの世界は魔力が存在し、皆魔力を持っています。魔力を使いすぎると魔力切れを起こし、その状態が続くと魔力欠乏症になります。つまり、レネ様は魔力がないため、常に魔力欠乏症の状態になっているのかもしれません」
「なるほど...」
レネ様って。まさかの様付け。
ではなくて、確かにこの人の仮説は一理ある。魔力なんて絶対持っていない。
「これ、良くなりますか...?」
大事なのは、回復するか、しないかだ。このままずっとこの状態だと流石に辛すぎる。
「通常だと、魔力回復力を増やす薬を飲みながら治療しますが、レネ様にはやはり効果がないようなので、魔導士団長に魔道具を開発させています。それ次第でしょうね」
「そうですか...」
気を失っている間に既存の治療法は試されていたらしい。0には何を掛けても0とはこういうことなのだろう。
魔道具とやらを待つしかないらしい。
しばらくの沈黙が降りた。
そういえば、この人の名前を聞いていなかった。
「失礼ですが、名前を聞いてもいいですか?」
「名乗っていませんでしたね。私はルーエレイト・アイルベル。レネ様を召喚したルーキャスタの弟です」
まさかの弟さんでしたか。声が似ている気がしたのは間違いではないらしい。そして名前が長い。ニックネームはルーエさんにしよう。
あの部屋は暗くて髪や瞳の色、何なら顔すらあまり見えていなかったけれど、ルキタさんも似ているんだろうな。なんという美形兄弟。
「魔道具が完成するまで寝ましょう」
「そうします...」
私の顔色が相当悪いのか、ルーエさんは険しい顔をした。ビンゴ、体調は悪化する一方です。ひとまず寝ます。




