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宮廷魔導師に魔法陣と思われる模様を見てもらえるように宰相に相談したところ、そのような絵を無闇に預かったことを注意された。
「全く! 呪われたらどうするのだ!」
前世の記憶を持つ俺からすると大の大人が呪いを本気で信じていることに驚きだが、この世界には魔法という不思議なものがあるのだから、呪いのようなものもあるのかもしれない。
「申し訳ございません。宮廷に持ち込む時には、布で包んだのですが」
それもダメだっただろうか?
今すぐ侯爵のところに返してくるようにと言われるだろうかと思っていると、宰相の眉間の皺が深くなった。
「私はそなたの心配をしているのだ!」
とても意外なことを言われた。
いや、これまでも宰相も皇帝も俺やネストを気遣う言葉をかけてくれることもあったのだから、意外だと思うのは失礼だったかもしれない。
「まぁ、呪われた絵を持ち込んだそなたと陛下を会わせるのは少し不安があったため、私だけが来たわけだが」
「それは当然です。お気遣いいただき、ありがとうございます」
俺は宰相に頭を下げた。
「それで、宮廷魔導師に会いたいのだったか?」
「呪われた絵と言われている絵には、ぱっと見にはわからないように模様が描かれていまして、それがどうやら魔法陣のようなので、本当に魔法陣なのか、もし魔法陣だとしたらどのような効果があるのかを知りたいのです」
「なるほど。直接会わせてやりたいが、あやつらもなかなか忙しくしておるからの。その魔法陣を描き出したものがあるのだろう? そちらを私の方から渡しておこう」
「はい。お願いします」
俺は宰相にペルトが模様を描き写してくれた紙を渡した。
その紙を見て、宰相は訝しんだ。
「途中で途切れているな」
「完全に描かれているものでなければ、効果はわかりませんか?」
「いや、そんなことはないが、これは絵に何か損傷があったのか?」
「いえ、違います。絵を再び侯爵のところに持っていった際に魔法陣も完成させることができると思います」
俺の言葉に宰相は半信半疑な様子ではあったが、ひとまずは宮廷魔導師に魔法陣を見せてくれることを約束してくれた。
「また出かけるなら僕のことも連れていってよね」
昨日、ネストが絵を描いている時に離宮を抜けて工房に行ったことがバレて、朝から拗ねられている。
「ネストには大切な仕事があるだろう?」
「そう言って、また僕を置いていく気?」
幼い頃に置いていったことがよほどトラウマのようで、少しでも離れるとこうして責められるのだ。
「リュエル様、宰相様がお越しです」
この離宮の管理をしてくれている家礼が伝えてくれた。
「え? お越しということは、離宮に?」
「客間でお待ちいただいております」
家礼の返答に俺は立ち上がった。
すぐにネストに袖を掴まれた。
「僕も一緒に行く!」
「離宮から離れるわけじゃないぞ? 話もつまらないだろうし、絵の続きを描いたらどうだ?」
「それでも行く!」
家礼がスッと俺に近づいた。
「昨日、リュエル様が居られないと気づいた時のバッティス様の落ち込みようはひどいものでした。本日はお連れしてはいかがでしょうか?」
家礼にそう言われては嫌とも言えない。
ネストは性格はこのように子供のようだが、背が非常に高く、本気で暴れればこの家礼では止めるのは大変だろう。
そして、もしも家具でも壊されたら、その弁償代が怖い。
だから、家礼が連れて行けということは、そういうことなのだ。
家礼の言葉はだいぶ控えめに言ってくれたものであり、強行手段に出られる危険性があったのだと思う。
それでもネストのことをなんとか落ち着かせて、絵を描く作業に戻してくれたのだから、この家礼には頭が上がらない。




