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ちょうど、ネストが絵に集中している時だったから、ネストは離宮においてきた。
絵に集中し始めたらこちらが声をかけるまでは大抵集中したままなので、放っておいても大丈夫だろう。
ケイジと共に工房へと行くと、ペルトが少女の絵に隠された模様を描き出した紙を見せてくれた。
「……」
俺はその模様をじっと見つめる。
俺が模様を見つめていると、ペルトが驚くべきことを言った。
「これは、魔法陣だと思います」
前世でアニメなどは嗜んでこなかった俺でもわかるファンタジー用語になんだか一瞬、すごく高揚感を感じた。
魔法陣! その響きと共に、光で浮き上がった美しい模様が想像できる。
しかし、この魔法陣は円の中に色々と描き込まれているようなものとは違うようだ。
まるで円の縁の部分にだけ模様があるような感じで、魔法陣の中は特に何も描かれていない。
「確かに、これは魔法陣に見えるな」
ケイジもペルトの言葉に賛同する。
俺が想像するような魔法陣とは違うけれど、ケイジもそう言うのなら、この世界の魔法陣というのはこのようなものなのかもしれない。
「だが」とケイジが言葉を続けた。
「これでは魔法陣は機能しないだろう」
「そうなんです」
「どういうことだ?」
二人の言葉に俺は詳しく話してくれるように促す。
「魔法陣は円形に全て繋がっていないと作動しないんだ」
絵に描かれた魔法陣は絵の端から端までアーチ状に描かれており、それが上下にある。
キャンバスの脇の部分も確認したがそこには何も描かれていなかった。
「今は機能していないとして、これはどんな作用のある魔法陣なんだい?」
「わかりません」
「知らないな」
キオさんの疑問にペルトとケイジが答えた。
二人の言葉に俺とキオさんは顔を見合わせた。
「いくつかの魔法陣を見たことがありますから、これが魔法陣だろうという推測はできますが、これがどのような作用をする魔法陣なのかまではわかりません」
「魔法陣っていうのは魔法理論を完璧に理解している者にしか描けないものだ」
どうやら、魔法陣というのは貴族で多少魔法に馴染みがある者でも描くことは非常に難しいようだ。
「誰に見てもらったら、この魔法の効果がわかるんだ?」
「宮廷魔導師とかならわかるだろうが、でも、この状態では作動しないのだから知ったところで無駄じゃないか?」
「無駄ではないよ」
俺はケイジにはっきりと答えた。
「この魔法陣を完成させる方法に心当たりがあるんだ」
俺の言葉にケイジとペルトが怪訝な顔をした。
「ケイトは魔法のことはろくに知らないと思っていたが?」
「魔法のことは知らないけれど、俺は画商だから」
俺の言葉にケイジもペルトもますます不思議そうだったが、キオさんだけは納得したようだった。
「この絵の完全な姿を見ることが許されるなら俺も見てみたい」
そうキオさんは再び少女の絵を見つめた。
よほどこの絵が気に入ったようだ。
次にこの絵を侯爵に持っていったら返さなければいけないかもしれないが、呪われた絵の問題が解決したなら、もう一度だけ絵を貸して欲しいとお願いしてみよう。




