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「どうしてだよ!」
控室へ戻ると、ペルトがそう俺に迫った。
「どうして、俺の絵も貴族たちの前に出さなかったんだ!?」
そう。俺が貴族たちに見せた贋作は魔法で作られたものだけで、実際に手で描かれたペルトのものは見せなかった。
ペルトの絵もキオさんの絵を盗んだものに変わりはないから、それを作品と認めて評価する気はない。
しかし、ペルトの絵には、キオさんへのリスペクトを同時に感じたのだ。
「一応、贋作を作っていた君たちの名前は伏せているが、魔法で作ったものとは違い、自分で描いているペルトの絵は、後々、ペルト自身の絵を見た人々が贋作の製作者だと気づく可能性がある」
「……自分だってバレるような特色は出していないつもりだけど?」
「そうだね。でも描き手の癖というのは、思わぬところに残っているものだし、感性が鋭い人が見れば、わかってしまうものだ」
だから、将来、ペルトがオリジナルの作品を発表した際に困らないようにした。
俺に庇われたことに気づいたペルトの表情は複雑そうだ。
「ペルトばかり庇われてずるい」
そんなことを言い出した令息を一瞥する。
「絵を描く努力をしたわけでもないのに、ずいぶんなわがままですね」
一応、貴族令息だから敬語は使うが、絵を描く努力をしたこともない奴の話なんてまともに聞く気はない、
「あなた方の能力は陛下も宰相も興味を持っておられました。この後、あなた方を紹介し、就職の斡旋をしようと思っていたのですが、嫉妬で冷静な判断ができないようであれば仕事にならないでしょうから、やめておきましょう」
俺としては、早々にこの令息たちを誰かに押し付けてしまいたかった。
俺の言葉に魔法を使える令息たちは慌てる。
「親に期待されていない四男、五男でも仕事があるならやりたいです!」
ずるいと言った令息とは別の令息が言った。
正直、雇ってもらえるかどうかは彼らの実力次第だとは思うが、貴族たちの目を誤魔化すことのできる贋作を作っていたのだから、人の目を錯覚させたり、注意を逸らすようなことは可能だろう。
きっと、どこかで使い道があるはずだ。
ネストを恐れ、一時は批判的な感情もあった貴族たちだったが、ネストの性格はともかくとして、絵の才能は認めてくれたようで、その後も皇帝と宰相からの依頼で貴族の肖像画を描く作業は進んだ。
伯爵のように他国へ国の情報を売る売国奴のような貴族や、平民相手に汚い方法で稼ぎ、治安を悪くしている貴族などもいたが、俺は作り笑いで彼らと会話し、ネストが絵を描くための支援をした。
もちろん、ケイジが助手のふりをして護衛としてついてきてくれていた。
贋作事件からひと月ほどもすると、ペルトが荷物を持って工房を訪ねてきた。
「ペルト! 久しぶりだな! 待っていたよ!」
そうキオさんがペルトを迎えた。
ペルトのことはキオさんに任せることにした。
「お、お久しぶりです」
キオさんの前ではペルトは非常におとなしい。
憧れの人を前にすると緊張してしまうようだ。
これからペルトはキオさんの弟子となり、キオさんの屋敷に世話になりながら、絵を学んでいく。
やり方は間違えたが、ペルトには才能がある。
もちろん、キオさんには今回の贋作事件について説明した。
その点は、ペルトにも謝らせたが、キオさんは笑って許してくれた。
「若者の絵は、俺にも刺激になる」
そうおおらかに笑えるところが、キオさんの最大の魅力かもしれない。
そんなキオさんに育てられたペルトはきっと、由緒正しい貴族の画家の一人目になることができるだろう。




