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「宮廷画家 バッティスの件で皇帝陛下にはご迷惑をおかけいたしましたこと、深く謝罪いたします」
宰相からは皇帝陛下への謝罪は建前として行う必要があるが、他の貴族たちには不要だと言われている。
そのため、俺は皇帝陛下にのみ頭を下げる。
ちなみに、ネストは離宮で留守番である。
「うむ。この度は陳情があると聞いておる」
「はい。バッティスが贋作に対してなぜあれほどまでに感情を昂らせたのかご説明いたします」
「贋作に対して?」と、すでに真実を知っている陛下がニヤリと笑う。
ネストは自身の贋作を含め、他者の作品に興味などない。
なんなら、自身の作品への評価にも興味はない。
しかし、ここで俺のことを馬鹿にされてネストが腹を立てたと正直に言うわけにはいかないだろう。
俺は陛下ににこりと微笑んで、話を続けた。
「こちらの作品をご覧ください」
謁見の間に集まった貴族たちが見える程度の大きさのネストの絵を持ってくる。
ぜひ、皇帝陛下と宰相にネストの真の才能をわかってもらいたいと思い、ネストに描いてもらった風景画だ。
湖畔と湖畔を囲む森が描かれている。
「絵とは、生活に溶け込むものです。屋敷の主人、そして、屋敷の中で一日過ごされることも多いでしょう奥様やお子様方、その屋敷で生活するすべての人と共に時間を共有するのが絵画です」
俺はケイジが持ってきてくれたランプの光源を調整し、絵の傍に掲げる。
「こちらは太陽の代わりになります。太陽の光が窓から入り込むところを想像してください」
貴族たちの視線が集中する中、俺はゆっくりとランプを上から下へと動かす。
「これは、日の入りの光の動きです」
ランプの光は、表面の絵の具の下に隠された絵の具を映し出していく。
「まぁ……」
「これは美しい……」
「先ほどとは違う色合いだな」
「素敵ね……」
さらに下から上にランプの光を動かして日の出の絵の変化を見せた。
貴族たちは感嘆の声を漏らして、絵に見入っていた。
俺はネストのその絵を脇にずらして、今度は中央に贋作を持ってきた。
魔法で作られたものを、贋作を作っていた令息一人につき一作ずつ。
「こちらは、貴族令息の作品として皆様が期待しておられる作品です」
ランプの光を当てて、先ほどのネストの絵と同じようにゆっくりと上から下へと動かす。
「いかがでしたでしょうか?」
貴族たちはどことなく気まずそうだ。
俺に視線を向けられると、大抵の貴族たちはそっと視線を逸らした。
「色の変化はなく、平坦であったな」
皇帝陛下が言う。
「はい。これが、修練を重ねた者の絵と、魔法で片手間に作成されたものの違いです」
「もちろん」と俺は微笑む。
「このような絵であっても、身分が大切だと金貨を積むのも良いでしょう」
再び、俺はゆっくりと貴族たちを見回していく。
「ただ、皇帝陛下がお認めになった画家の作品を盗むことは大罪であり、そのような絵を賞賛される方の目が濁っていることも確かでしょう」
そこまで言って、しまったと思った。
ここまで言うつもりはなかったのだが、贋作を目の前にしたらつい本音が漏れてしまった。
クックックッと皇帝陛下の笑い声が謁見の間に響いた。
「では、ネストを見出した私は見る目があるということだな?」
陛下の助け舟に俺は深く頭を下げた。
「お見事でございます」




