27 第二部開始
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少しでも楽しんでいただけますと幸いです。
ネストと城の離宮に移った翌日、俺とネストは皇帝と宰相に呼ばれた。
早速、絵の注文だろうとは思ったけれど、風景画に神の子を描くという話だったはずなのに、そこには俺と彼らの考えに差異があることがわかった。
俺は人が描かれない自然の景色のみの風景画を考えていたのだが、皇帝と宰相は風景の中に人が佇み、その人を神の子が見つめるという構図をイメージしていたようだ。
「風景ではなく、人に焦点を当てているのならばそれは風景画ではなく、肖像画です。ネストが最も才能を発揮する風景画とは自然の景色を切り取ったものなのです」
俺は前世のミレーの作品も好きだったから、風景画に人が含まれる構図に文句があるわけではないし、否定したいわけではない。
しかし、ミレーの作品は人に焦点が当てられているものではなく、人も自然と共に生きている存在として描かれていた。
皇帝と宰相が望むような絵とはやはり違うだろう。
それに、やはり、ネストが最も得意とする構図ではないだろう。
ネストの風景画がいかに素晴らしいものなのか、皇帝と宰相に熱弁を振るってみても、これまでそのような絵画に触れてこなかった二人にはわかってもらえなかった。
「神の子が貴族の姿を見ているという構図が大切なのだ」
「自然や街の様子を描いた中に貴族の姿を描き、そこに神の子がいれば、より一層、どこにいても神の子の視線からは逃れられないという印象を残せるだろう」
プロパガンダの概念は知らないはずなのに、皇帝と宰相はネストの絵を政治的に利用しようとしている。
結局は芸術は権力者にとってはそうした利用価値のあるものとして見られてしまうのだろうか。
皇帝と宰相の考えを変えることは難しいようだった。
俺はこれからはネストが描きたいものを描きたいように描くことができると思っていたし、そのようにネストには話していたから申し訳なくなった。
しかし、ネストはそれほど不満を抱いてはいないようだった。
「そのような絵を描いていれば、ケイトさんから離されることはないのですね?」
挨拶の言葉さえも俺の後ろからしどろもどろとしていたネストのはっきりとした言葉に皇帝と宰相は少し驚いたようだったが、宰相はすぐに笑顔を作って頷いた。
それは見るからに、手駒を都合よく操るための笑顔だった。
「そうだ。我々の望む通りの素晴らしい絵を描いている限り、君がケイトから離されることはない。城の離宮で、ケイトと共に自由に暮らすといい」
ネストは宰相のそんな言葉に満足そうだった。
そんな画家本人の姿を見ては、俺ばかりが頑なに拒否することもできず、俺は皇帝と宰相の要望を受け入れるしかなかった。
それまでの絵は壁画の代替品から徐々にキャンバスに描く絵画へと以降していたために、人が二人程度で抱えるようなとても大きなキャンバスに描かれていたが、宮廷画家を置くことになった記念という名目で帝都にいる貴族たちに贈られる絵は、人が一人で抱えられるサイズのキャンバスに描くことになった。
そうでなければ、量産できないからだ。
それに、重要なところはネストが描くけれど、他の者が手を加えても問題ないところに関してはキオさんに手伝ってもらうことになった。
最初、俺はトルトに手伝ってもらおうと考えていたのだが、極度の人見知りのためか、ネストがトルトを嫌がったのだ。
「まずは、国のために貢献してくれている貴族たちの絵を描いてもらおう」
宰相はそう言った。
謀反を企てていたり、汚職をしていたり、賄賂をもらっているような貴族たちというのはある程度目星はついているということで、その貴族たちの警戒心を解くという意味でも、実際、褒美を与えるという意味でも、国に、皇帝に、利益をもたらしている貴族の姿絵をまずは描くこととなった。
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