死滅の配下
演奏するに連れ御札ボールから漂い出ていた不穏が消えていった。
【響、消音の御札を消してもらえる?】【ん♪】
何層にもなっているので少しずつ消していく。
【トシ兄、もぉブツブツ言ってない?】
【ないぞ♪ 静かなもんだ♪】
【じゃあお話しする~んるん♪】
彩桜が寄って呼び掛け始めた。
【アッシュカ様~♪】
2つの御札ボールをゆさゆさゆさ♪
【消音の御札、残ってるの?】
【ナイナイ! 無視じゃない?】
【困ったね。
時間かけてると拐われてしまうのに……】
【見えない手ね。そう脅してみる?】
【脅すのは、、ちょっとね。
それに、もう拐われての この状態かもだろ?】
【それもアリよね~】う~ん。
【アッシュカ様~♪
この話し方ダメ? 超越者様なのに?
トシ兄 聞こえてる?】再確認。
【おうよ♪ もっとシメたらいいのか?】
【うんっ♪】
【ヨーシ!】フンガァ!
力の神が力任せにギリギリと締め付けていく。
【わ、私では、ないっ!】【んあ?】
【アッシュカは、向こうだっ!】
【じゃあカケルの方だな♪ ヤッていいぞ♪】
【そんなら一緒くたに閉じ込められた分も!】
八つ当たりも甚だしいが、格闘技全般も大好きなカケルがサッカーで鍛えた蹴りも交えて締め上げる。
利幸も緩めたわけではないので、2超越者が大騒ぎだ。
【お兄、絞め過ぎじゃないの?】
【声が出せるんなら心話のができるだろーがよ!
超越者サマサマなんだからなっ!】
【そっか。確かにね~♪
アッシュカ様、もう止めませんからね♪】
【もひとり、アッシュオ様?】
【何故っ!?】
【返事した~♪ やっぱり心話できるねぇ。
お名前バレバレだから、お話ししてねっ♪
俺達、宇宙様とお話ししたいの。
だから先に時流様とお話ししたいの。
連れてって~♪】単直の極みに兄達が笑う。
【物生体の分際でっ!】後は叫び声。
【遠くの宇宙様なブルー様が、物生体は超越者様を諌める為に存在するて言ったの。
その為の物生体には超越者様が見えるし話せるし掴めるの。
『生』の時流様が『滅』と手を組むの間違ってる思うの。
地星ずっと支流なんだから、ソレ本流にしてもらいたいの。
い~っぱい生きてるんだから】
【物生体ごときが話そうとも時流の主様のお考えは変えられぬ!】
【アッシュオ様、時流様じゃないんだから決めつけにゃいでぇ。
話してみなきゃわかんないでしょ。
それに俺達、時流様が宇宙様に会えないのも知ってるよ。
でもね、それも変えられるの。
物生体なら変えられるの。
だから連れてってよ】
返事を待っていると、得体の知れない不穏が闇呼結界を通過したと感知し、即座に迫って来たとだけは感じ取った。
アッシュオとアッシュカが怯えて何かを訴えているとだけは伝わったが、その内容はサッパリだった。
【トシ兄 カケルさん! 絡みついててねっ!】
【【おう!】】
しかし見えない『手』が超越者だけを連れ去ろうと――
【させるかよ!】【だよなっ!】
――御札ボールの中には入ったらしいが、退き、不穏は消えた。
【アッシュオ様? アッシュカ様?】
連れ去られていないとは思うが確認。
【どうやらアッシュム アッシュラと同様に道具とされそうになったのだな】
【しかし何故? 敵である私達を助けたのだ?
何をしたというのだ?】
【噛みついただけだっ!】
【口しかヒマしてなかったからなっ♪】
【ウンディ、術を使おうとは考えなかったのか?】
ドラグーナの子としては すぐ上の姉である瑠璃が呆れ溜め息。
【ンなもんキクなんか思えるのか?
イタイとも感じねぇかもだが、噛まれるなんか初めてだろーしビックリするだろーがよ♪】
【咄嗟に考えたとも思えぬが?】
【だなっ♪ 動いちまってた♪】
【だろうな】苦笑。【だが流石だ。力の神】
【おうよ♪】
そこにドラグーナ達が現れ、マーズメンバーが揃ったので、白久と青生が行って状況を説明し始めた。
再び雰囲気を穏やかにしようと演奏していた集まりの中から出た彩桜は、水槽から御札ボールを出してリズミカルにポンポンしながらアッシュオとの話に戻った。
【ねぇねぇ、もぉ帰れないんでしょ?
仲間ならない?】
アッシュオもアッシュカも黙っているが、これまでの拒絶的な黙秘ではなく困惑しているようだった。
【御札ボールから出たら闇禍 飲まされて操られちゃうよ?
超越者様の力も吸い取られちゃうんだよ?
アッシュム様とアッシュラ様の知ってるでしょ。
闇禍に乗っ取られてたでしょ。
それでも物生体ダメ? 仲間イヤ?】
【……アッシュムとアッシュラは?
滅したのか? 滅されたのか?】
【そんなコトしにゃいもん。させにゃいもん】
【では今は? 何処で何をしている?】
【憑けられてた闇禍は浄滅したよ。
力、闇禍に奪われてたから消えそぉなったの。
だから俺の分身に入ってもらったの。
コッチ宇宙に居たら狙われるから異界に逃げてもらったよ。
もぉ超越者様じゃないから出られるの。
アッチ時流様トコで働くんじゃないかな?】
【そうか……】
【アッシュカ様と~っても強いんでしょ?
だったらアッシュオ様もっと強いんでしょ♪
さっきの『手』、死滅様の配下さん?
時流様じゃないよね?
時流様、こんなのされてるて知らない思うの。
地星のより先にソレ話さなきゃなの】
【だから連れて行けと?】
【うん。アッシュオ様でも時流様に そんなお話ムリでしょ?】
【それは……確かにな。だが――】
【だからね、俺達が連れてったてコトにしたらいい思うの~♪
このまま行こ~♪
行き先、思い浮かべてく~ださい♪】
返事よりも先に、つい思い浮かべてしまった。
それまで少し離れて静かにしていた桜龍神達が即座に それを拾い、空間ごと運んだ。
――が、経路を歪められたらしく、アッシュオが思い浮かべたのとは違う空間に出た。
桜龍神達が場所を確かめる隙も無く、アッシュオ達と同じ姿の人型超越者達に囲まれた。
【時流様の配下さん、いっぱいだ~♪
いっちばん偉いヒト~~~】ぐる~り、ピタ♪
【アッシュイ様~♪】
【なっ――】
【当ったり~♪
超越者様て和語なの? 五十音?
おもしろ~い♪】
【何を言っている!】
【わかんないならいいも~ん♪
俺の相手してる間に奪還? 指示したよね?
ジリジリ動いてるのも見えてるも~ん♪
ソレより先に死滅様の配下さん止めてよね。
じゃないと――んもぉ来ちゃったしぃ】
現れた不穏の塊としか言い様のない人型超越者が無言で黒点闇禍群を飛ばした。
その闇禍達は彩桜達ではなく時流の配下達に向かって飛んでいた。
【総解還!】
御札を全て消した彩桜が利幸を死滅の配下に向けて投げた。
同時にソラはカケルを投げていた。
他は防護の為にもと忍装束になっており、水銃で闇禍を撃ち落としている。
【昇華闇障暗黒、激天大闇呼吸着!】
闇禍は弱っているので光矢も闇華も不要で、すんなり回収できた。
【ね、さっきの時流様の指示じゃないでしょ?
アッシュイ様も死滅様の言いなりされるトコだったんだよ。
それでも死滅様と手を組むの?】
アッシュイは悔し気に視線を落として考え込んでいたが、サッと顔を上げると死滅の配下を睨み、瞬間移動して見下ろした。
そして話し始めたようだが何も聞こえなかった。
待つより他に無さそうなので彩桜とソラも忍装束になり、響と紗は くノ一装束を纏った。
ドラグーナとアーマルも人姿の神マーズになって並んだ。
【おい、忍者ばっかかよ】
【お兄は捕まえとくのに集中して!】
【へいへい】ったく~。
【地星の皆様、お願い致します!】
アッシュイが怒りを含む鋭い視線を巡らせた。
交渉決裂で間違いないと動き出す。
「生体魂縛! 儂の命に従え!」
死滅の配下も鋭い視線を巡らせて叫んだ。
一瞬、全てが静止し、闇禍が眼前に迫った。
「光神輝煌!」「総解還!!」
声が聞こえ、白輝一色に。
魂の縛りが解けた忍者達は動き始めた。
助けに来てくれたのは異界の龍神ブルーだろう。
ブルーと共に桜龍神達が去ったと感じた。
しかし彩桜には利幸が迫っていたので追えなかった。
響を庇うソラの前にはカケル。
【彩桜、これって……】
噛みつこうと大きく開けていた口に大きな肉まんを具現化していたが、向けた神眼で彩桜がしようとしている事を察して消した。
【接してたから込められちゃったみたい~。
でもね!】
利幸の口に浄化光で輝く闇呼玉を投げ込んだ。
続けて、雄叫びを上げているカケルにも。
【定着ムリだと思うから~♪】
喉に詰まらせているらしく苦しんでいるので背後に回って項に手刀。ソラも。
コロロンと闇呼玉が落ちて転がり、利幸とカケルもドサッという感じで落ちた。
音はしなかったのだが。
光が収束する。
超越者達が目を見開いて立ち尽くしていた。
【だいじょぶ?】
桜マーズがアッシュイに寄って行ってツンツン。
【私達は再び闇禍を憑けられそうになったのだな……】
【俺達もね~】
【あの物生体達は?】
アッシュイの視線の先では利幸とカケルが意識を取り戻したところだった。
利幸は瑠璃の、カケルは響の往復ビンタを喰らっての目覚めだ。
【死滅の配下様 捕まえてたから込められちゃった~。
でも定着ムリだから大丈夫で~す♪】
【何故? 闇禍が定着不可能な物生体が存在するのか?】
【するの~♪ だから触れるの~♪
だ~って物生体て超越者様のお友達なんだも~ん♪】
【は?】
【さっきピッカンしたヒノカミ様も物生体♪
隣の隣の隣の隣の宇宙様なブルー様のお友達なの♪ 宇宙王様なの~♪】
【王? それは生体達の国主ではないか】
【その王じゃないの。
主様と並ぶ者♪ 支えるお友達♪
主様には宇宙とか時流とか抱えてるモノあるけど、王にはナイから点ナイの♪
そゆ意味の王なの~♪
自由に動けるから主様の代理として動いたりもするの~♪】
【では、遥か彼方の宇宙の主様が私達を助けようと?】
【んとねぇ、死滅様て宇宙の境界なんて無視して動くから俺達トコも同じヒト達 来ちゃうんだって~♪
ブルー様トコも死滅様にメチャクチャされて闇禍キライて戦ってるから、追っかけてコッチまで来ちゃうんだって~♪】
またアッシュイが考え込んでしまった。
アッシュオが近寄り、下位としての礼をしてから話し始めた。
これまた何も聞こえないのだが。
おとなしく待つしかなかった。
前話で捕まったのはアッシュオ様とアッシュカ様でした。
時流様の拠点に行こうとしましたが、アッシュイ様が成した空間に閉じ込められて――という事で、今は地星ではなく宇宙の何処かに居ます。
死滅の配下ザヒディスとやらは何処へ?
ブルー様達が追ったようですが……?




