現れた超越者
響が元気になり、人世のザワザワは世界中でお祭り騒ぎが続いているだけと判明したので、国名がカソーディアに決まった古の人神の地の復興も順調に進むようになった。
もちろん古の獣神の地であり、1国統一を果たしたアノーディアも国名が復活して復興は完了に近くなっていた。
神世も人世も元気溌剌な数日を経て、調査と発掘救出が終わりに近付いた この日のA班は響 ソラ 力丸 ショウだけ。
数箇所の保留場所の調査や発掘救出を前日に引き続いてで完了させたので、最後に残ったサミル地区(古サミル王国領土)の保留していた場所に集まった。
【お兄が掘ってて眠ったのは ここよね】
【だな。馬鹿者の気が残ってやがるぞ】
【兄様ってば居なくても馬鹿者なの?】
【結局アイツ戻らないじゃないか】
【そ~だけどね~】
【とにかく調べましょ♪】
【周囲から慎重にね】 【おう】【は~い♪】
ソラの提案通りに四方に離れると慎重に探り始めた。
【周りに異常はないみたいね】【そうだね】
【もう調べようぜ】【うんうん♪ 掘ろ~♪】
カケルが座り込んでいた場所を囲む。
さあ掘ろうと地に掌を当てた時――
【まだ掘っちゃダメなのっ!!】
――カケルを肩に担いでいる彩桜が現れた。
【え?】【彩桜どうしたの?】【サクラ~♪】
【馬鹿者なんか連れて来て何するんだよ?
しかもまだ寝てるし!】
【たぶん転送穴なってるの!
カケルさん繋がっちゃってるの!
神力吸われて起きられないのっ!】
【そうだったのね】【覚醒は?】
【する思うのぉ~。
でも、その神力爆発分ぜ~んぶ吸い取られてるのぉ。
起こしても ずっと吸い取られてるから演奏中もだったし、キツネの里でも時間差で昏睡しちゃったのぉ】
【そういうことだったのね】
【うん、分かったよ。
それで、どうしたらいいの?】
【たぶん転送穴の向こぉには、前の人世の崩壊 止めよぉとしたセキュア様いるの。
地星の芯トコ支えに行ったの。
セキュア様、此処から芯に繋いで入ったの。
でも人世崩壊で転送穴の もっと向こぉ開いて、芯じゃない異界に繋がった思うの。
だからセキュア様 助けないとだし、穴に神力吸われてるカケルさんも助けないとなのぉ】
セキュアはアミュラの妹、最初の大災厄から地星を救った女神ピュアリラの四女だ。ちなみにアミュラが長女だ。
【だから彩桜は お兄を連れて入るつもりなんだね?】
【かも~】←確定。
【響 ショウ 力丸、ボク達の命綱を持っていてもらえる?】
【私も行く!】
ソラがまだ心配してくれているのは分かっているが、こればかりはと身を乗り出した。
【危険過ぎるから駄目。
ボクの命綱すらも響には預けられないの?】
【でも――】
【ヒビキ~、僕達は修行不足なんだよ。
神力不足だからダメなんだと思う~】
【――そっか。だったら任せて。
こっちだって大変かもだし、頑張るわ】
【ありがと響】【だからアミュラ様 呼んだの~】
【【【『だから』?】】】
【たぶん~、超越者様 来ちゃうのぉ】
【うわ。マジ大変じゃないか!】
【でもガンバル~♪】【そうよね!♪】
【で、今度は何だい?】
アミュラが五女のカミュラも連れて来た。
【アミュラ様 カミュラ様ありがとなの~。
コッチお願いしま~す。
異界に行ってきま~す】
具現化した無限縄をカケルとソラと自分の腰に結び、端を響達に渡すと、カケルを担いだままの彩桜は説明もせずに転送口を成して飛び込んだ。
彩桜に続いてソラも。
【姉様、弱い共鳴が……】
カミュラがアミュラに確かめた。
【そうだね。どうやら今度はセキュアを助けてくれるようだねぇ】
【とても遠かったような気がしましたが?】
【さっきのは転送穴の口だろうよ。
小さな大神が戻るまでは確かめられないけどねぇ】
既に転送口は塞がっている。地面から縄が出ているだけの状態になっているので、もう共鳴すらも確かめられなかった。
それを見詰めていたアミュラが響達に目を向けた。
【で、何が起こるんだい?】
【超越者様が来るんだって~♪】
【つまり、妨害をしに、か、セキュアを拐いに、なんだろうねぇ。
カミュラも遠慮は要らないよ。
全神力で撃退してやろうじゃないか】
【ええ】
【その、超越者様って?
少しは聞いてましたけど、何者なんですか?】
【アタシらも よく知らないんだよ。
ただねぇ、これまでの災厄全ての裏には超越者様と闇禍が居たらしいのさ。
地星の本来の運命は滅びの短命な道らしい。
それをブルー様が生かし続けてるそうなんだ。
超越者様は悪意じゃなく本来の道に戻そうとしてるだけらしいんだよねぇ。
何もかもが『らしい』ばかりだけどねぇ、青生と彩桜は何やら掴んでいるようだねぇ】
【彩桜くんて……?】
【地星の青身神様かねぇ、あの兄弟は。
ま、オモテには出ない忍者なのさ】あっはは♪
【ソラも行っちゃいましたけど……】
【ソラだって人にしとくにゃあ惜しいくらいだからねぇ。
彩桜の相棒、忍者の仲間さね♪
さ、少し離れて囲んで待つとしようかね】
【【【はい!】】】
―◦―
ただ待つのも、とユーレイ探偵団は瞑想し、アミュラとカミュラが警戒を維持して待ち飽きた頃に微かな不穏を感じ取り、皆が目を開けた。
【誰か居る!】【向こうの空!】
ショウと力丸が向いて警戒全開に。
【神眼含め直視は禁物だよ!
違和感くらいだが気を探しな!】
【【【はい!】】】
目も神眼も閉じて集中した。
位置は明確ではないが地表近くまで降下したとだけは皆が感じていた。
【近づいてない?】【来てる~】【だな】
アミュラとカミュラは転送穴の場所を守る結界を成した。
【え? 増えた?】
【増えたね~】【もっと不穏だな】
【何やら話してるみたいだねぇ。
な~んにも聞こえやしないけどねぇ】
ビシバシピリピリな警戒を維持する。
持久戦。
緊張もシビレも切らせたら負けだと頑張る。
突き刺すような視線に探られていると感じて響がゾッとした時、超越者達が動いた。
一瞬だけ見失った。
【アミュラ様!】【カミュラ様!】
ショウと力丸が跳ぶと同時に矢を放った。
響も御札を放っていた。
女神達の間の背後に現れた淡い人型の者が逃げ消えた。
矢も御札も立ち消える。
【もう1人は!?】
【先に消えたと思う~】
【だな。より不穏な方が先に消えたぞ】
【アミュラ様とカミュラ様を狙った?】
力丸とショウは答えずにアミュラを見た。
【超越者様は地星最強の生物を女神だと思ってるのさ。
アタシらが離れるべきかもと考えたけどねぇ、嬢ちゃんもターゲットらしいからヤメたよ】
【私も? いやいやいや】あはは。
【向こうの地にも行ったんじゃないかねぇ。
無防備なのは劣化した人神のみ。
だから数が少なくて襲い易いコッチに来たんじゃないかねぇ。
見渡せど外に居るのはアタシらだけだ。
探って順を決めて、アタシらの後ろに現れたんだろうけど、アタシらは無防備じゃない。
それならと嬢ちゃんに向かって飛ぼうとしたら攻撃されたんだよ。
神力封じを矢に具現化できるなんてねぇ。
王子達もヤルじゃないか♪】
【じゃあアミュラ様とカミュラ様を襲って私?
オマケなら納得~】
【劣化した人神より遥かに上さ。強い女神だよ。
そう超越者様は思ったのさ。
ユーレイなんて知らないだろうからねぇ。
ぐるぐる探したら、また戻るだろうよ。
アタシらが追って捕まえるのは難しいからねぇ、来るのを待つのみさ。
気張りなよ】【【【はい!】】】
そうしてまた暫く。
待つばかりなのに飽き飽きした頃、
【戻ってきたわね】【1人だけ~】【だな】
微かな、しかし独特の不穏を感じた。
【今度は下りてこないわね】
【だな。アイツ、首トコ押さえてないか?】
【兄様ったら見てるの?】
【斜め見だったらいいんだろ?】
【知らな~い】
【攻撃されてないからいいんだよ。
アイツ……首グキされたのかな?】
【【誰に?】あ♪ きっとトシ兄~♪】【へ?】
【ただのカン~♪】【ショウあのねぇ】
【とかって言ってる場合じゃないぞ!】
【闇禍だよ! 憑かれるんじゃないよ!】
【浄破邪と神力封じの矢! 針になれ!】
即座にショウが放った。力丸が続く。
【【封乱悪牢!】】
アミュラとカミュラも連射する。
ショウと力丸の背中から黒い玉が飛び出た。
【サクラのあんこ玉だ~♪】【どーして背中!?】
【さっき隠してくれたのかな? 見て、楽し~♪】
具現化矢と光矢が針化して、闇禍を捕まえては闇呼玉へと突入していた。
【それなら私は超越者様ね!
御札で包んであげる!】大量に放った。
超越者ともなれば ただ包まれるなんて有り得ない。瞬移的な移動方法で逃れた。
響も一発で捕まえられるとも思っておらず、御札を連射し続けている。
【闇禍、打ち止めか?】【み~んな捕まえた~♪】
『クッ』か何か声が聞こえた。
次の手を考える為か、何か躊躇したのか、一瞬だけ姿が見える程に超越者が止まっていた。
空かさず御札と矢が集中する。
しかし御札と矢は宙で止まり、響達は動けなくなった。
各々に向けられた雷撃が迫る!
【ただいま!】
ソラの声が聞こえ、動けるようになった。
咄嗟に避けたが雷撃も消えていた。
【ソラどこ? 何したの?】【説明は後で!】
声はすれども姿が見えない。
【無の御札を放って!】【へ?】
続く言葉が無いので、響は仕方無く『無!』と込めて魂筆を薙ぐと、出来上がった御札を不穏が膨らんだ宙に放った。
今度は『何故!?』と明瞭に聞こえた。
その直後、より不穏な方の超越者が戻った。
上空には黒い塊も見える。
その大闇禍が小闇禍を大量に吐き出した。
【おっきな闇禍だ~】【ショウも早く射て!】
【いっくよ~浄破邪の極みの矢!】【俺も!】
再び光矢と具現化矢が飛び交う。
【ソラどこ? 早く逃げて!】
響も叫びながら御札を放っていた。
それらの動きがピタリと止まる。
『また!?』と叫びたかったが心話声すらも出せなかった。
しかし闇禍達の動きは止まっていなかった。
不調は続いていますが悪阻ならと元気を取り戻した響は、御札使いとしても飛躍的に成長しました。
それでも超越者には――というところで次話へ、です。




