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不穏だらけの邦和



 カケルに奏法を教えていたソラだったが、時間だと響に呼ばれたので響とカケルを連れて人世へと術移を繰り返した。


【どこに向かってるんだよ?】


【東京】【東邦テレビのスタジオよ♪】


【スタジオ!?】


【そう。本番だから】


【待て待て待て待てっ!!】


【もう着いたんだけど?】みんな偽装、具現化。

【お姉ちゃんも来るけど外に放置しようか?】


【それを先に言えよな!

 行くに決まってるだろ!

 で、本番って?】


【演奏するんだよ。

 今、ユーレイ探偵団はバンドだから】

【お姉ちゃんがゲストボーカルなの♪】


【まさか……放送するのか?】


【当然だよね】【なんのためのテレビ局よ?】


【うわ、マジかよ……】


【音は全て筒抜けだから、お兄は声を出さないでね】

【出せなくしちゃえば?】

【そうだね、うん】



【ソラ兄~♪】「俺も来た~♪」【あれれ?】

準備を進めていると、彩桜がメーアと奏を連れて来た。

ソラが偽装を掛けていてもドラマーがカケル本人だと分かったらしい彩桜が心配そうにソラを見た。


【うん、今日からお兄がドラムだよ】


【ん♪】「じゃあ準備する~」【んるん♪】

ソラが自信たっぷりなので心配ヤメだ。


「今日も手紙があるの?」「ある~」

前日もマーズからの手紙を読んだ。

「だから見田井(みたい)さんも?」「そぉなの~」


 話題に出た司会者の見田井がスタジオに入り、メンバーを手招きして(カンペ)を見せた。

『邦和に残っている人達の殆どが昨日の演奏を聴いたようです。

 忍者の良さが分かったと、出演を望む声が多く届きました』

(めく)って、もう1枚。

『反マーズ派が脱走したようです』


寝てばかりで何も知らなかったカケルが心話で騒いでいるがスルーした。

視線を上げた見田井に頷いて、立ち位置に動いたユーレイ探偵団メンバーは楽器を構えた。


メーアには彩桜が伝え、準備を終えた奏がメーアに並ぶと放送が始まった。



 インストバンド・ユーレイ探偵団のメンバーは小学生ばかりという設定で、団長(リーダー)はギターのキョウ(ヒビキ)

喋り担当で基本はギターだけどブラス&パーカッションなラクサ(サクラ)、ブラス&パーカッションの相棒がチェリ(サクラ)

ベースがロンサ(ソラ)、キーボードがシード(ソラ)でドラムがカルケ(カケル)という構成だ。

ソラと彩桜は どちらかが分身なのは言うまでもないだろう。



 奏からのリクエストでSo-χ(ソーカイ)の『想い』と『ありがとう』を演奏し終えると、緊急ニュース特番になった。

内容は今なら当然な全国の警察施設から脱走した反マーズ派に関してのものだった。


【カケルさん、コレ見て状況把握してね。

 ソラ兄ちょっと行こ♪】【え? うん】

控室に入ると彩桜がソラを連れて瞬移した。



 残された4人はモニター前に腰掛けた。

【なぁ響。コイツら何を怒ってるんだ?】


【そこからなの?

 マーズは知ってるよね?】


【知ってるよ。渡音フェスにも出てた忍者だろ?】


【でも、ただの忍者でも音楽ユニットでもないのよ。

 ずっと『悪』とか『魔』とかと戦ってたの。

 災厄が来るのも予知してたのよ。

 って聞いて、災厄前の狐儀様と理俱様のお話、思い出した?】


【いや……なんとなく、くらいだな】


【ホンット――って言っても仕方ないか。

 マーズは災厄が地震だと想定して耐震装置を配ってたのよ。

 お兄が寝落ちまくってた あの部屋でも部品を作ってたの】


【あ~、起こしてくれた弟子?】


【そうよ。

 マーズは人気者だけど知らない人だって居るのよ。

 経緯は省くけど外国での方が知られてるくらいなの。

 だから邦和では耐震装置を配りきれなかったのよ。

 建物の真ん中の地下に埋めないといけないのに埋めさせてくれなかった人が けっこう居たのよ。

 で、世界大地震。

 耐震装置を埋めた家は無傷なのにマーズを追い返した人の家は崩壊。

 当然の結果なんだけど、そこで逆恨みが発生したのよ。

 倒壊した人みんながみんなじゃないトコも明暗を分けたのよね。

 マーズを知らなかっただけの人は親切で配ってたのにって謝って再建してもらえてるから。

 で、その逆恨み集団が『反マーズ派』なの。

 地震を起こしたのもマーズだとか言って、避難所を占拠したり暴動を起こしたりして捕まったのよ】


【ソイツらが脱走かぁ。

 マーズは? ナンで野放しなんだ?】


【今は忍ノ里を外国に移してるのよ。

 そうまでなったのには反マーズ派と建築業者との対立もあったからなの。

 建築業者はマーズファンなの。

 前からの音楽好きな社長さんも居たんだけど、マーズが地面を元通りにしたり、崩れた建物を資材に戻したりしてるのを見て感動してファンになった人も多いの。

 それに国からの補助が微々たるもので、そんなので建ててたら会社が潰れるのが分かりきってるものだったのよ。

 それでマーズが補助金を出したのもあって建築業者は全部マーズファンになったのよ。

 そんなだから反マーズ派の依頼を拒絶したの。

 それで どんどん対立が激しくなったから、原因なマーズは去るけど補助金は続けるから建ててやってくれって消えたのよ。

 だから私達が音楽を届けてるの】


【ふ~ん。そこで俺達に繋がるのか。

 へ? 全国、更地ばっか?】

モニターを指す。


【マーズは邦和ではライブしないし楽曲配信もしないけど、外国では これまで通りだって言ったのよ。

 そうなるとファンはマーズを追うよね。

 で、大勢が外国に運んでもらったのよ。

 お店とか公共施設もね。

 不便になっちゃったし、潜伏してる反マーズ派が居るかもで怖いし、って理由で避難する人も増えちゃったのよ。

 引っ越しは家ごとね。忍者移動だから。

 それで街が消えたのよ。


 あ、蝦夷と琉球のも言ってるね。

 蝦夷にはロシア、琉球にはアメリカが付いて反マーズ派を追い出したのよ。

 このままの邦和なら独立するって。

 独立すればマーズもライブしに来てくれるからって】


【ソイツらも護送車から脱走かぁ】


【そうみたいね。

 民家に集まっちゃう――って言うか、これじゃあ襲撃よね。だから残ってた人達も避難してるのね。

 反マーズ派だけになったら攻撃されるのね……】


【一網打尽ってヤツだな。

 なぁ、補助金のも騒ぎの原因なんだろ?

 今、政府は? こんなに外国 怒らせて何してるんだ?】


【そっちも問題なのよね。

 政府も反マーズ派が動かしてるのかもね。

 もちろんユーレイ探偵団なんだから調べるつもりよ】


【暫く人世か?】


【行ったり来たりよ。

 神世の復興も続けないといけないんだから。

 ユーレイなんだから休まなくても平気よ♪】



 ニュース番組が終わりに近付いた頃に戻ったソラと彩桜は、4人の後ろに座って二人だけで話していた。


【内緒話か?】


【報告し合ってるのかもね。

 必要なことなら話してくれるわよ】


【響はソレでいいのか?】


【話してくれないのはマーズ活動のでしょ。

 首つっこめないわよ】


【・・・ソラもマーズ!?】


【言うなら寄付活動を引き継ぐ覚悟でね♪】


【ゲ……】

【これからマーズが大きく動く。

 そう黒瑯が言ってきた。

 俺達はマーズに繋げるまで音楽を届けるぞ】


【メーアさん、和語? マスターしたとか?】


【まだカタコトだ♪

 心話なら何語でも伝えられるってのをキリュウに教えてもらったんだ♪

 放送でも和語で話すが、キリュウ マーズ誰かの指示か、和訳してもらった言葉だからな♪】


【そっか♪ わかったわ♪

 それで大きくって具体的には?】


【邦和を除いて復興は終わっている。

 避難する邦和人の受け入れで遅れたくらいだ。

 だから復興完了を祝っての音楽祭りも少し遅れたが計画してたからヤル。

 世界中で音楽祭りだ♪】


【ん♪ 了解よ♪】




 音楽番組に戻すと呼ばれてスタンバイ。

今度はメーアをゲストボーカルとしてフリューゲルの曲を演奏すると決めた。


 司会者の見田井が入って生放送開始。

順調に2曲続けてメーアのMCに移った。

『邦和も俺のルーツだが、だからって理由で来てるんじゃない。

 マーズと音楽したいから来てるんだ。

 だからマーズを追い出した邦和には来る理由が無い。来たくもない。

 今日は それを言いたくて来たんだ。

 それだけだから、これで終わりだ。

 邦和には二度と来ない。つまり秋のドームツアーも、フリューゲルだけってのもナシだ。

 邦和に残ってるヤツらには音楽なんか要らないんだろ?

 だから文句なんか無い筈だ。

 コイツら(ユーレイ探偵団)もマーズの弟子だしカワイイヤツラだから連れてくからな!

 撤収だ!』

怒りも露に退場した。


【メーアさん?】


【マジで怒ってなんかない。

 次の準備で離れただけだ。

 インストで1曲、その次をカナデが歌うから繋いでろ。

 マーズを求める波が大きくなるのを待つからな】


【わかったわ♪ ラクサくんお願いねっ♪】


【ふえっ!?】

『えっとぉ、時間が余っちゃいますので繋ぎま~す。

 曲はキリュウ兄弟の『虹の絆』です♪』



―◦―



 別のスタジオ室ではマーズ数人が一瞬でモニター画面ビッシリな『壁』を作り、その前に中央部を四角く抜いた板壁を置いて去った。


 そこにメーアが見田井を引っ張って来た。

「これから世界各国の復興完了を祝っての音楽祭りをやる。

 これは各会場からの中継を映すモニターだ。

 中央部のは各国マーズタウンからのだな。

 マーズコールが盛り上がったらマーズが現れるだろう。

 そう、会場にも伝えているそうだ。

 ユーレイ探偵団が時間稼ぎしている間にカメラとかを入れろ。

 俺もマーズを呼ぶからな」

板壁との隙間から後ろに隠しているモニターも見せた。


「メーアさん、和語ペラペラ?」


「ルーツだからなっ♪ ま、気にすんなって♪」


「さっきの宣言は?」


「ちょっとしたオドシだなっ♪

 けどマーズが戻らないのなら邦和に来る理由がナイってのは本音だ。

 マーズが戻らないならキリュウも戻らない。

 どっちもマブダチなんだからトーゼンだろ?」


「確かに。そうですよねぇ」



 そのスタジオの準備が終わる頃には、モニターからのマーズコールが響き渡っていた。


【お~い白久、もう聞こえてるだろ♪

 こんなに求められているんだから来いよな♪】


【メーア! ナニ仕掛けやがった!?

 来いって何処に!? コッチは忙しいんだぞ!】


【俺に瞬移でいいだろ♪

 とにかくマーズは求められてるんだ。来い】


【ったく~。兄貴と相談してからだ!】


【おう♪ 早く来いよなっ♪】







神世と人世を行ったり来たりするつもりのユーレイ探偵団。

『反マーズ派』と名付けられた暴徒が大脱走中の邦和で音楽を届け続けようとしています。


ロック界の王者フリューゲルのリーダー・メーアも動いていて、邦和を除いて復興は完了しているからと、その祝いの音楽祭りを始めるようです。


行ったり来たりではありますが、この章では人世を中心にしてお話を進めていきます。



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