第七十話 帰宅
「私は少しの間は、こっちで過ごすので何かあったら、家に来てくださいね。」
「うん、分かった。」
お互いに手を振り、クリスを見送った後私は自分の内へはいった。
「ただいま、お父さん。」
「リーズ!」
お父さんは私を見ると、とてつもない速さで抱き付いてきました。
「苦しいです。」
「母さんが居なくなっちゃったんだよおおお!」
いまさら何を言ってるんだろう。と激しく号泣している実の父親に、私は冷たい視線を向けた。
「お母さんは元の世界に帰りました。」
「分かってるよ!分かってるけれど……ううう。」
お父さんは私にしがみ付きながら、また泣き出してしまった。
「お母さんは向こうの世界で、帰る方法を探しているみたいですから、きっといつか会えますよ。」
それに、私もお母さんに会いたいんです。会いたくてしょうがないのに我慢してるんです。なのにお父さんが、会いたいと私に対して駄々を捏ねてどうするんですか。
思わず呆れて、ため息が出ます。
「夏休みに入ったから、しばらくは家で過ごしますから。それで少しは元気出してください。」
「うん。」
そう言うとお父さんは泣きながら笑った。
それにしても、私は自宅の中を軽く見渡してから思いました。
「お母さんが居なくなってから、生活面に支障が出て、もう少し荒れたり、部屋が汚くなっているかと思って来てみましたけど、私が居た頃と変わっていなくて少し安心しました。」
「あはは。幾ら鈴が居なくなったからと言って、鈴のお気に入りのものを、壊したり汚したりするようなことがあれば、俺は鈴が帰ってきたら殺されてしまうよ。」
お父さんは笑いながら、あっけらかんと言ってますけど、お母さんなら本当にやるでしょうから、気を付けてくださいね。とお父さんに対して、微笑みかけることしかできませんでした。
その日は久しぶりに、お父さんと色々話をしました。私が家を出ていった後の事とか、私がお母さんと一緒に別の世界に行ったこととか、学校の事とか、お母さんが居ないのは残念ですけど、たまにはこういう時間も良いのかもしれません。




