第六十五話 愛の力
「噂で、リーズ先輩とクリス先輩は、恋人同士だと聞きました。」
やけに真剣な表情で、私とクリスを睨み付けながら話している。
「私とエセルも恋人同士です。」
突然のカミングアウトに私たちは固まる。そんな私たちを無視するように語り続ける。
「どちらの愛が強いのか勝負です!」
そう言い目の前の少女だけ構える。
「先輩方も構えてください!」
驚きに固まる私たちを、真面目に受け取ってくれていないと、感じたのか怒りを感じる声で叫ぶ。すると少女の隣にいるエセルが、何やら少女に耳打ちをしている。
「私の名前はレアです。こっちはエセルです。よろしくお願いします。」
根は素直な子なのだろう。ちゃんと自己紹介と、挨拶をしてきた。取り敢えずクリスと目を合わせると、
構える。
「行きます!」
此方に突撃してくるレアを軽くかわす。
「クリス!」
丁度間に入られ、分断される。私の前にはエセルがいた。
「敵の力を奪え!吸収」
魔法を発動される寸前に、咄嗟に動いてかわしたから、直撃はしていないのに、ゴッソリと魔力を奪い取られて、思わず相手を睨みつける。
「貴方は強いから最初に倒す。」
エセルは小声でつぶやくと更に魔法を発動させる。
「闇よ敵を喰らいつくせ!闇狼」
私に向かってくる、守護精霊をかわしきれずに、傷を負う。
「痛っ!」
思ったより傷が深いのか右腕が下がったまま上がらなくなっている。
「きゃあ!」
クリスも敵の攻撃を受けたのか、此方に飛ばされてきた。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫って言いたいとこだけど、ちょっとピンチかも。」
私も人の心配をしている場合ではないですね。利き腕は負傷してるし、魔力は奪われてあまり残っていない。使えても巨大なのが一発が限界です。守護精霊はやたらと使えないし。如何しましょう。
「ねえ、あれやってみない?」
クリスは何か思いついたのか、小声で耳打ちしてくる。そのとんでもない無い様に
「本気ですか!?」
小声の作戦会議だというのに大きな声で驚いてしまいました。驚いている私に、クリスは嬉しそうに笑いかける。
これ以上、打つ手がないというわけでも無いですが、折角クリスが嬉しそうに、相談してくれているのだから、試してみるのもいいかもしれません。
バランスをとるためにお互い抱きつく形になる。
「ちょっと戦いの最中にいちゃつかないでください!ズルいです!」
レアは不満そうに怒っている。逆にエセルは、私たちが何をしようとしているのか、分かったようで此方に向かって魔法を放とうとしていた。
「闇よ敵に闇のさばきを暗闇」「光よ敵に光のさばきを聖光」
「嘘!?何あれ!?」
闇と光のユニゾン魔法。私も生まれて、初めて使いました。本来対極にある属性の、魔法を同時に発動することはできない。当然のことながら反発して、互いの力を相殺してしまうためだ。
まあ、たった今できてしまったけど、実を言うと、同時に魔法を発動したのは、これが初めてでは無かったりする。
あれは晴れて恋人になって数週間が経過したころ。
「ねえ、リーズ恋人になった記念にユニゾン魔法の練習しない?」
嬉しそうに、腕をからめながら言うクリスに私も笑顔で答える。
「それはいいですけど、どの魔法の練習するんですか?幾つかの魔法なら使ったことありますよ?」
「闇属性と光属性の魔法のユニゾン魔法を使いたいの!」
ニッコリと満面の笑みでとんでもないことを要求してきた。
「クリスちゃん。対極にある属性のユニゾン魔法を、成功させた人が一人もいないと知っていますか。」
そう対極にある属性しかも闇と光のユニゾン魔法は成功例が一つもない。
「リーズとならできる気がするの。」
でも、嬉しそうに笑いながら、強請ってくるクリスの要求を断ることはできず、結局魔法の練習を続け、あと一歩と居処まで進み、成功することは無く今に至るのである。
ユニゾン魔法は、成功しその現象に思わず目を見張った。魔力の勢いと範囲がとてつもなく強大なのだ。先生が張り直した結界は簡単に崩れている。
「負けない!」
エセルは魔法を発動して必死に食い止めているけど時間の問題だろう。この魔法を受けたのが魔法に長けたものでないなら、一瞬でこの世から消え去っているだろう。その点を考えると彼女達がとても強いことが分かる。
「きゃああ!」
「うあああ!」
魔法に力負けしてエセルとレアが吹き飛ばされる。流石にまずい状況なので、使い方としてはよくないけど、
「魔法空間」
魔法空間に魔法を吸い込ませる。スポリっとすべての魔法を吸収しきると私は、その場に寝っ転がった。疲労感から立っていられなくなったからです。
「リーズ!?」
それを倒れたと勘違いしたのか、クリスが近寄って私を抱き上げる。
「少し疲れただけです。大丈夫ですよ。あと、お二人ともとても強かったですから。また明日に会いましょう。」
私がそう言うと二人は嬉しそうに抱き合っていた。
「今日はもう帰りましょう。疲れちゃいました。」
「ほら全員こっち来なさい。回復するから。」
回復してもらうとレアとエセルがこちらに近寄ってくる。
「負けました。先輩たちの愛には敵いませんでした。」
残念そうに笑うレアに私は嬉しく思いこう答えた。
「私たちの愛の強さは世界も越えますから。」
ポカーンと呆けた表情をしているレアとエセルを見て私とクリスは笑った。




