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第四十二話 不安

 その日、私は目を覚まして顔を洗おうとすると、一瞬自分の姿が透明になったような気がして思わずベッドまで戻るとクリスちゃんに抱き付きました。


「ん、リーズちゃんおはよう。」


 少し寝ぼけているのか私が抱き付いていても特に大きな反応は見れませんでした。昨日のお母さんの言葉が頭に焼き付いて怖くなりました。いつ帰るかわからない。それは逆に言えばいつでも帰れる可能性があるという事。


 自分の一番大好きな人と一緒に居たい、それは願ってはいけないことなんですか?自分の思考がドンドン暗く重いものになっていく、でも怖い。異世界だとかそんなのは自分に関係ない、クリスちゃんが隣にいてくれれば他に何も要らないんです。

 

 嫌な想像や憶測で頭がいっぱいになる。


「リーズちゃんそんなに抱き付いてたら動けないよ?」


クリスちゃんの声で正気に戻る。


「ごめんなさい。」


私は直ぐにクリスちゃんから離れました。


「突然ですが、リーズちゃんに質問です。最近私に変化がありました。それはとても大きな変化と言う名の成長をしました。答えは何だと思う?」


 クリスちゃんは私の言葉使いを真似してクイズを出しました。大きな変化?成長とは言っても特に見た目に変化はないようですから、内面的な成長?


「成長かどうかは分かりませんが最近DVクリスちゃんを見てません。」


 そう、クリスちゃんが家出から戻ってきたその日から、DVクリスちゃんに変化したところを一度も見てませんでした。クリスちゃんは


「大正解!」


笑顔で話し始める。


「今だから分かるけどもう一人の私もリーズちゃんの事が大好きで、ずっと一緒に居たいって思ってる。でも、もう一人の私はリーズちゃんに近づく敵を攻撃するしかリーズちゃんと一緒に居れないって思ってた。だからリーズちゃんにあんな酷いことしちゃった。周りに敵がいるなら、その敵を倒せば気が済むけど、リーズちゃんしかいない時に嫌なことしか考えられなくて、それでちょっとだけ考えちゃったの。リーズちゃんが私だけしか見れないような状況になったら、私とずっと一緒に居られるのかなって。」


 あの時の事を思い出したのかさっきの笑顔は曇り悲しそうに泣きながら話している。クリスちゃんの思いに私はただ黙って聞いていることしかできませんでした。


「バカだよね。そんなことしても悲しい事しか起こらないって分かってるのに。でもね、もう1人の私は出ないよ。だってあの子はリーズちゃんとずっと一緒に居たいって暴走してた私だから。今の私は大事なことに気付けたからだからもう大丈夫なの。」


 クリスちゃんは私を強く抱きしめる。


「それはそれで寂しくなりますね。」


 クリスちゃんの成長に喜ぶべきなのだろうけど今までの事を思い出すと少し寂しくも感じます。


「私達ちゃんと成長してるんだよ。だからリーズちゃんが別の世界に行っても絶対に探すよ。それに一緒に居るための方法は沢山あるはずなんだからもし探しても無いなら自分で作ればいいんだもん。」


 クリスちゃんは自信満々に微笑む。さっきまであんなに嫌なことで頭がいっぱいだったのに今はもう幸せになっています。


「私が好きになった人がクリスちゃんでよかったです。」


私はクリスちゃんを思い切り抱きしめます。


「私もリーズちゃんを好きになってて良かった。」


 お互い笑いあいながらも大好きな人と一緒なら私は大丈夫。心からそう思いました。

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