第二十六話 苦手なもの
ギルドに到着した私たちはどの討伐依頼を受けるか悩んでいた。
「これやろうぜ!」
クリスちゃんはラスボス級のとんでもないのを持ってくるしカモミールさんは移動するだけで一週間はかかりそうな場所の依頼書を持ってくるしエリザベスさんは弱そうなモンスターの依頼書を持ってくる。
このチームバランスが悪いです。取り敢えず近場の依頼書を片っ端から眺めてみた。
私たちの中で一番ランクが高いのはカモミールさんのSランクだそうです。そして私の目の前には近場のSランクの討伐と書かれた依頼書があります。場所は歩いて数十分の距離にある親縁の森に出現するメデューサの討伐。報酬300000Eと丁度良さそうな依頼書を発見したので早速依頼書を持っていち早くギルドマスターに報告しに行きました。
「この依頼受けます。」
と依頼書を渡すと
「ん。」
と相変わらず短い返答で手続きが終了した。渡されたのは地図だけでした。
「なんの依頼受けたんだ?」
討伐ができると言わんばかりに輝いた表情で此方を見つめるクリスちゃん。
「メデューサの討伐です。」
と答えるとクリスちゃんは輝いていた表情を一変させ、軽くひきつった表情に変わっていた。何ででしょうか?と考えると
「あ!」
そう言えばあの誘拐事件以来石化魔法を使うモンスターを毛嫌いしているんですよね。お守りを渡したから大丈夫だろうと安心しきっていたから依頼を受けてしまったけど、クリスちゃんの顔色を窺うとやっぱり状態はあまりよくはない。
「やっぱり依頼を変えてきます。」
クリスちゃんの身を案じて依頼を取り換えてこようとするとパシッと腕を強く捕まれて
「いいぜ、やってやるよ。」
どこか恐ろしい雰囲気で自暴自棄気味な返答をされてそのまま地図を奪い取られて目的地に向かってしまいました。隣には地図を睨み付けているクリスちゃんが、後ろではエリザベスさんは
「メデューサ……。」
顔を青くさせています。エリザベスさんの隣にはカモミールさんが
「懐かしいですわね。」
自分の思い出に浸っているようでした。そして今の私たちの現状はメデューサを討伐するためにみんなで仲良く歩いているところです。
まだ着かないんでしょうか?すると地図を睨み付けていたクリスちゃんがその場で動きを止めると私も足を止めました。それに気が付かなかったエリザベスさんが私の背中にゴンッと激突しました。
「痛いです。」
何で気が付かないうえに背骨にいい感じに直撃するんでしょうか?若干いらいらしながら文句を言うと、
「ご、ごめん。」
すぐに謝ってくれたのでそれ以上何も言いませんけど。
「「……。」」
私たちがコント紛いなことをしているとクリスちゃんとカモミールさんは
じっと何かを睨み付けたまま身動き一つとっていませんでした。
私もじっと見てみると視線の先には眠りについているメデューサの姿がありました。依頼書にも書いてあったように、緑色の蛇が髪の代わりに巻き付いていて、目は閉じているのでわかりませんが下半身は長い大きな蛇のようでした。
「あれだな。」
いつもなら敵を見つけたら喜んで殺戮しに行くクリスちゃんが躊躇っている。石化状態が余程嫌だったんだろうと思いました。あんなクリスちゃん初めて見ました。
「運よく眠っているのですから取り敢えず目が開かない様にしてしまいましょう。」
カモミールさんはどこか慣れた手つきで自分の手荷物から何やら玉のようなものをメデューサに向かって投げた。遠距離から投げたというのにそれは綺麗に弧を描いてメデューサの目の前に落ちた。グチャッという効果音とともにメデューサの顔に何やら大量のガムのようなものが張り付いていた。ガムはメデューサの顔すべてを覆い尽くしていた。思わず皆でカモミールさんを困ったように見ると、
「あれは私のお手製なんですの。」
何故か嬉しそうに頬に手を当て笑顔での返答が来た。
「・・・・・・!?」
少しするとメデューサは苦しそうに暴れ始めた。顔全体に張り付いている以上呼吸ができるはずもなく私たちはしばらくメデューサが苦しみ続ける様子を延々と眺めることになっていた。ビッタンビッタン跳ねたり苦しそうにもがき続ける姿を見続けると
「流石にかわいそうなので普通に戦ってあげませんか?」
と言いたくもなる。もはやピクピクと文字通り虫の息になっている状態のメデューサを眺めていると流石に同情した。クリスちゃんはハッとした様な表情になり
「そうだ。戦わなきゃ意味がねえんだ!」
と叫ぶもののメデューサはすでに力尽きていた。カモミールさんがそれに気づくと
「終わりましたわ。」
嬉しそうにメデューサを持ち上げていた。隣では
「討伐……。」
シュンとして普通の状態のクリスちゃんに戻っていました。エリザベスさんはどこかホッとした様な顔で安心している様子でした。何だか今日はメデューサが苦しむ姿を見ていただけで終わった気がします。メデューサを片手に引きずりながらカモミールさんが歩き出すので私は
「魔法空間に入れましょうか?」
と聞いてみると
「おねがいします。」
メデューサを渡されたので魔法空間にしまった。そのままギルドへ直行してメデューサを取り出して渡すと
「一体どんな方法で拷問したんだ?」
滅茶苦茶驚かれました。理由は顔が恐ろしいほどに歪んでいたこととどうやら前に戦闘をしていたみたいで生傷が幾つかあってそれで拷問したと勘違いされたみたいです。




